ボルベール

bohemian_style2006-03-03


ここんとこ転職を検討している友人が多い。今日も相談したいとのことで、麻布十番ボルベールにてお食事しつつ、話を聞く。

要は、人間関係重視か仕事内容重視かという永遠の職業選択軸の中のバリエーションで悩んでいて、ハイプレッシャーで無い職場だけど、仕事内容は面白いというのを求めているが、今舞い込んできた転職話は、とある大手外資系証券の中でエマージングマーケットのプロダクトのトレーディング部門のアソシエイトで、単なるトレードに加えて、リパッケージして売りさばいたりとか、ポジション取るだけでなくて、ストラクチャリングの要素も入るので、魅力的だが明らかにハイプレッシャーでどうか、という事だった。

僕は、とうに自分の中で、面白い仕事は皆希望しているから、自分の感覚が一般的である限り、この希望者達を蹴落としながらでないと仕事は続けられなくて、従って面白い仕事がハイプレッシャーなのは仕方が無いと結論を出しているので、魅力的ならチャレンジしたらという所に話が帰結してしまう。そこでハイパフォームしたら、良い時は年収は1億近く行くだろうし、短期間にV.P.に昇格したら、後は金融業界ならどこでも食っていけるステータスが得られるだろうとか、但し30代でアソシエイトってのも長くないから、長くても2年で上に行かないと、up or outだねと、そういう話についつい収斂して、いやいやこういうのを相手は求めてるんじゃ無かったと話を戻す事を繰り返してしまった。

ハイプレッシャーで無いけど、仕事内容はそこそこ良くて、人生グッドバランスというのは、一回ジョブホップして、日本企業のジェネラリストというチョイスが消えると、結論的には外資のメーカーしか無いんだよね。GEの様なブルーチップ、JJ・コカコーラ・PGの様なマーケティングドリブンの会社、後はファーマスーティカルの会社とか、その辺で経営企画とかマーケティングとかをしている分には、ミドルリスク・ミドルリターンという感じがする。

どこに価値を置くかというのは人それぞれだが、extremeな世界を覗いてみたいとなると、勢いハイプレッシャーな仕事になってしまうのが今の世の理だ。近年IT革命によって劇的に情報のトランスペアレンシーが上がり、ホワイトカラーが取替え可能になってしまった事から、ホワイトカラー間の競争が激化して、忙しいが稼ぐ人と暇で稼げない人が分かれ、「そこそこ」グッドバランスで働いている中間層が解体されたという事を指摘したのは、ロバート=ライシュだが、まさにそういう状況が日本でも現出している。いずれ上記のような最後に残ったミドルリスク・ミドルリターンな職場も何れ生産性が高い人と低い人の仕事に分かれていくのだろう。

さて、食事の方だが、ここはプリフィックスで2,800円と極めてリーズナブルなビストロで、落とした照明もなかなか品がいい。ビストロのピザは結構手抜きなケースが多いが、ここのは及第点。有機とか産直とかをアピールしている温野菜とかバーニャカウダとかは、期待ほど味が乗っていなかったが、メインのスズキのローストはなかなか。

グラン・メゾンと味を比べるのは間違いだが、良い雰囲気・良い味・静かな空間をこの値段で求められるのは貴重である。気張る必要の無い友人と行くにはいい店だ。しかし、内装のモダンさと、写真にある表の看板の昭和を感じさせるフォントのギャップは何だろうか。古くからある街のビストロが代替わりで大幅改装したからこうなった、という風情である。