ピアット スズキ

一時期は外苑西通りからプラチナストリートまでがイタリアン激戦地で有ったが、最近はなかなかどうして麻布十番もホットである。昔は天現寺橋の近くに有ったアロマフレスカが家の向かいに引っ越して来ているし、家の裏手にはキオラが有る。ピッコログランデは相変わらず美味しいし、ヴィーノ・ヒラタも繊細で素晴らしい料理を出す。

今日、訪れたピアット・スズキは、昔はそのヴィーノ・ヒラタにいらっしゃった鈴木シェフのお店である。ずっと行きたかったのだが、時間が無かったり、行ったけど一杯だったりで、なかなか機会が無く、ようやく今日予約して訪れる事が出来た。

特にコースというのは無く、メニューはアペタイザー・野菜料理・パスタ/ピザ類・魚・肉で構成されていて、ア・ラ・カルトで頼む形だ。なんと言っても、野菜料理が独立しているのがいい。ベジーの外国人が多い麻布十番という土地柄かも知れないが、最近は野菜の旨味というのが個人的な食におけるテーマで、こうして独立したカテゴリーとして、野菜をうまく食わせる事を追求してますよ、と提示されると、ついワクワクしてしまう。

今日のチョイスは、

で、2人でシェアする形である。突き出しは、ほうれん草のムースだった。

僕のイカ・タコ好きは、正直病の粋に達している。世界で最も好きな食べ物は?と聞かれると、「ホタルイカの沖漬け!」と即答する位である。15年ほど前のバブル末期に、エンドレス・ナタデココという、ひたすらナタデココをくにゅくにゅと家で食べ続けてしまう病がOLの間で流行し、恐れられたが、僕はエンドレス・ホタルイカの沖漬けが出来てしまう。くにゅくにゅ。僕の死因はきっとナトリウム過多であろう。

それはともかく、イカフリットだが、これまで食べたイカで一番かと言われるとそうでは無いが、美味しい部類に入るのは間違いない。白アスパラガスは甘くなく、渋味が有って、面白い味だった。

ガルガネッリは、卵を多めに使った、詰め物がしてあるニョッキみたいなものである。僕は個人的にイタリアの小籠包と呼んでいる。噛むとじゅわっと肉汁が染み出すのがとにかく美味い。ジェノベーゼとはベストマッチ。ジェノベーゼは自分で作ると判るが、フードプロセッサーがアブラでベトベトになるので、洗い物という後工程を勘案した、total cost of cooking analysis(なんだそりゃ)だと、極めてスコアが悪くなる料理なので、他人がサーブしてくれるのは幸せである。

リゾットも美味い。芯の残り具合がアルデンテで、コメにもアルデンテという概念が適用できる事が理解できる。最後のイベリコ豚のローストは生々しいプレゼンスと洗練された味が新しい体験。チキンの様に、骨付き足付きスタイルで出てきたのだが、皮がカリカリで、中はジューシー。イベリコ豚は、スペインのイベリア種の豚のことだが、最初はgrain-fedで、成長するとgrass-fedという面白い育てられ方をされており、味は極めて複雑である。生ハムによく使われるが、イベリコ豚の生ハムの美味しさには、この伝統的な育成方法も一役買っているのだろう。

満足である。店員さんも若くて元気がいい。料理は工夫と驚きがあり、一皿一皿に気合を感じる。こういうお店は食べる人にパワーをくれる。

2人で25,000円弱。