大塚 三浦屋

急に濃い魚が食べたくなった。
鮟鱇の季節は、終わっている。河豚も終わったと言えるだろう。黒ムツも、ちょいと遅い。困ってしまってワンワンワンと鳴いてみてもお腹は減る一方なので、調べてみると、既にこの季節の濃い魚は鰻やら鱧やらすっぽんなのである。
ううむ。こちらも何やら季節外れの感は否めないが、致し方ない。食らうとするか。

パラパラとlivedoorグルメで、日曜深夜まで開いている濃い魚を出せる店を調べると、有った。大塚の三浦屋なる所である。得点は4.5点。期待がもてるでは無いか。

濃い魚が食いたいというだけで、麻布から大塚まで深夜に遠征する。食い意地とは恐ろしい。

ここは、ひつまぶしが名物なのだそうだ。日本の中で浜松人だけがひつまぶしは浜松が元祖と信じているが、僕は浜松北高を出たというのに、浜松の八百徳より名古屋のいば昇の方が旨いと思っている非国民である。

しかし、店に入っていきなり目に入ったのが、もしもツアーズが来たという貼り紙。思わず帰ろうとしてしまったが、ここまで来たからには是非もなし。

店内は品がある新しめの内装である。好感が持てる。河豚の湯引きサラダ、スッポンの土瓶蒸しなぞをつつきつつ、腹を騙しながら待つこと20分。ついにお出ましのご本尊である。


・ばばーん

旨い。鰻はどうやってか、表面がかりっと成るまで焼いてあり、そのかりかり度合いと中身のジューシーな肉身、甘めのタレ、立ったご飯の組み合わせが絶妙だ。ここから薬味を入れてみる。味がぐっと変わるのが判る。新鮮なネギとおろしワサビの一つまみでこってりとした味は清冽な味に変わる。
その次は勿論お出汁を掛けて食べる番である。旨い。体に沁み込んでいるのが判る位だ。お出汁を掛けると、前の薬味を混ぜたのとは打って変わって、濃厚な味になる。この変化に思わず震える。
最後は、なんと山かけである。これで濃厚なひつまぶしは、つるりと食べれる〆の一品に早変わりする。
3つの小道具で一つの料理に見事な起承転結が付く。素晴らしい演出だ。あちこちでひつまぶしは食べたが、段違いの一品。

大塚は初めて来たが、侮れない。

あとは僕の悪癖の一つ、肝吸いである。

ただ苦いだけでは無い、深い味だ。
肝の苦味の味に子供の頃から耽溺してきた僕は、今でもこれを食べている時は、コカの葉を噛む時のボリビア人の様な表情をしているに違いない。

あと一つ余談ながら、店員さんが素晴らしかった。もしかしたら10代?と思わせる若い女性の店員さんで、割烹着脱いだら外見は渋谷にいるギャルと区別が付かないだろうけど、言葉遣い・物腰・立居振舞・サービス全て完璧だった。女将さんの教育がきっといいのだろう。本当に気分が良い接客だった。真面目そうなコが真面目にやってるというのでは無く、今風の、普通の若いコが、パーフェクトに振舞えるというのがいい。自分らしさやら優しさやらで、厳しい躾というのは流行らないが、これは理屈抜きで後世に伝えていくべきものの一つである。きっと、この躾は、彼女たちの将来の大きな財産になると思う。

総括。大阪のカウンター割烹で食べた四万十川の天然鰻も旨かったが、ひつまぶしという観点でいけば、ここのが今まで一番だと断言できる。

以上。

ちなみに、この大塚行きをもって、カーシェアしているオペルが終に10万km行った。今年の車検で買い替えかな、やっぱ。


・ちなみに、220km/h出したら、分解します。