纏鮨にて

以前うちのファンドに居て、僕の前職でも微妙に重なり、今は某巨大投資銀行に居る同期と数ヶ月ぶりに飲みに行った。接待費が出るのか、寿司をおごってくれるとの事で、ほいほいとついて行ったら六本木の名店、纏鮨であった。
自腹で行ける様な店では無い。同期曰く、僕を待っている間に「サイバー藤田さん6月×日」という予約入ったとの事。そんな客筋の店である。奥菜恵の元旦那のご尊顔を拝見したければ、6月入って数日連荘でここで飯を食うといいかも知れない。その前に普通の人が自腹なら身代を持ち崩すのでは思うが。
それにしても旨い寿司である。生とり貝、人生最高を記録したコハダ、芽ネギなどで腹ごしらえをしつつ、握りはトロに炙りトロに赤貝、車海老、アオリイカにフワフワの穴子と来た。
これまで「食」のタグを付ける時はなるべく写真を撮って、シズル感出そうとしていたのだが、恐れ多すぎて全く撮る気が起きなかった。こんな料理は一期一会、写真で残すなんて邪道と思わせる一品一品である。
トロは本当に、今までトロという既成概念を破壊する一品。これまでもトロける様なトロを食べてきた積もりでは有るが、これは段違い。生で善し、炙って善しである。
車海老はピチピチ動いて、甘い。シャリも心なしか車海老の時は酢控えめで甘さを引き出していた様に感じる。
アオリイカも見たことの無い大振りの奴で、コブシメの様だった。奄美大島で潜った時に、ガイドの漁師の人が、ガイドしつつコブシメを捕獲して、その晩出してくれたのだが、イカタコ類としたらそれ以来の感動。うーん、あのコブシメの卵巣に匹敵する味が東京で食べれるとは思わなかった。
締めの紫蘇を挟んだ水茄子もさっぱりと新鮮で、ああ、生きているモノを食べたなと思わせる逸品。
いつも寿司と言えば、白金の正寿司、築地のいざん、神楽坂の吟遊てな所で、全て大体1万円くらいで相当満足度が高く、世の中に高い寿司屋は数有れど、この3つからの限界効用は余り高く無いと思っていたのだが、ここ纏鮨は高いなりの価値は十二分に有る。
どんなに美味い料理屋でも全ての皿が感動的なんて事は基本無いわけで、サラサラと食べる中で割合にして3割位のものが心にささる味で有れば、これ即ち名店と僕は思っている。どこの店でもビンボ臭く一皿一皿なめる様に味わっていたら、結局コース料理を出す所は軒並みdullに感じてしまうだろう。そういう人は得てして、究極のハヤシライスとかの類で一品しか出ないB級グルメの評価が高い気がする。感じ方は人それぞれだから、それはそれで非難する様な事では無いのだが、僕は沢山出てきた中の一皿でも切れ味が鋭ければ、それに割と感じちゃうタイプで、いわばその食事の中の最大値でお店を評価する人だと言える。
こんな人からすると、ここ纏鮨は極上の切れ味の品が幾つも有って、寿司ってのはここまでレベルの高い料理なのね、と再確認した位なので、素晴らしい名店だと思われた。
仕事の情報交換の話をずっとしていたので殆ど飲まなかったが、御代は2人で6万円也。投資銀行様万歳です。ごちになりました。