イル・ムリーノ・ニューヨーク

 けやき坂のイル・ムリーノに行った。ザガット・サーべイのニューヨーク版で19年間連続してイタリアン部門第1位を取った店の東京ブランチである。07年東京版ザガットでは21点。あんまり期待せずに行った。
 ヒルズのイタリアンでは、夏にサドレルに行って、完璧外している。サドレルは、ミシュラン2つ星のミラノのリストランテの東京出店だが、味は印象を与える程のものではなく、サービスも遅くてイマイチで、内装は坪200万位掛かっていそうだったが、正直それだけの店だった。基本的に夏は食材が揃わないので、そこは割り引かないといけないが、外したサドレルがザガット東京では23点なのである。別にザガットを盲信する訳ではないが、イル・ムリーノで着席する時には、あのサドレルより点が低い店だと、かなりのバイアスが掛かっていた。

[PENTAX OPTIO W20 36mm/F3.3]

  • 邸宅風の入り口。

 イル・ムリーノは、着くなり突き出しが出てくるコリアン・スタイル(?)である。トマトとオリーブオイルのシンプルな和え物は、ピネガーが強烈で、なかなか目の覚める味だった。普通の体調だったら、ちょっときついなと思ったかもしれないが、おやつの時間にとんかつなんぞを食べていた僕の胃には刺激が丁度いい塩梅だった。
 スタッフが長々と今日のお勧めを述べてくれたので、その中で唯一記憶できた手長海老を食べることにした。手長海老のフェトチーネにメインは、生ハムとチーズを詰めた骨付き子牛のソテーである。手長海老は素材を見せに来てくれたが、信じられないほど大きく、驚いた。果たして、味も濃厚でプリプリしており、しかも身の付き方がとてもリッチである。フェトチーネを食べているのか、それは海老メインの付け合せなのかよく判らなくなる程であった。
 来る前に、ここはニューヨークポーションだよ、と聞かされていて、最近小食の僕は、メインには戦々恐々としていた。気分は在りし日のカプリチョーザで食事を待っている時と同じである。そんな僕の前に出てきたのは、コミックで原始人が持つ肉みたいな代物であった。うむ、でかい。少なくとも、これが胃に収まるとは思えない。

[PENTAX OPTIO W20 36mm/F3.3]

  • 店内は洞窟の様に暗い。左側の山がメインディッシュ。

 しかし、何とか食べきれるもので、周りが途中で続々とギブアップするのを見て、意地汚く少し貰ったりしてみたが、同行人が食べていた子牛肉の赤ワイン煮込みは、旨いのだが、あまりの味のヘビーさに僕も一発ノックアウトされてしまった。
 デザートは、もはや油脂成分を摂取できず、さらりとフルーツ系で済ます。
 うむ。総じてここは旨い。サドレルよりは百倍旨い。ただ、重い。僕はニューヨーカーとは大分味の指向性が違いそうだ。フレンチのグランメゾンで、ミクニクラスの重さを厭わない人にはいい店だと思う。スタッフの演出もケレンみがあって、派手である。ヘビーな味に派手な演出。ギラついたオトコで無いと、ちょいと似合わないかもしれない。仕事ぶりもライフスタイルもレストランの味もPushyなのがニューヨークかと、何となく納得してしまった。

[PENTAX OPTIO W20 36mm/F3.3]

  • ヒルズはすっかりクリスマスモード。表参道のライトアップ亡き後は、ここのが東京で一番かな。