PEN E-P1の誘惑
僅かな不満は残るが、頑張って小さなボディに機能を詰め込んで、ついにオリンパスのマイクロフォーサーズ機第一号が発表された。名前は、OLYMPUS PEN E-P1と言う。
- ご近影。
何が特徴かって言うと、コンパクトデジカメの極小センサーと比べると遙かにでかい一眼レフサイズのセンサーをコンパクトデジカメの筐体に積んでしまったことである。技術的な話は置いておくが、これによって得られるメリットは、
- 背景までくっきり写るコンパクトデジカメでは表現できない、ふわっとしたボケ味と浮き立つ被写体
- センサーサイズに余裕がある為、高感度に強く、暗いところでもノイジーにならない
- 同じくセンサーサイズの余裕から来る、色の階調の豊富さと細かい所の解像度
- レンズが交換できる
といったとこだろうか。1)-3)は、この前紹介したSIGMA DP2という同じく「小さなボディ+大きなセンサー」的機種でも実現できるが、DP2はレンズがビルトインされているので、E-P1とはレンズ交換式な所が最大の差異になる。僕の愛用するPanasonic LX3という画質的にはトップエンドのコンパクトデジカメと、一眼レフとしては標準的な大きさのNIKON D90と比較すると、
- 筐体サイズ
こんな感じで、E-P1はLX3比較で幅・高・奥行ともに1cm前後大きく、重量は130g重いだけである。一眼レフであるD90は、最軽量の50mm/F1.8というレンズを装着した時でも高さ・奥行・重さにおいて、二者と著しい差があることが判る。一方で、センサーサイズと画素数を比較すると、
- センサーサイズ
となり、コンパクトデジカメであるLX3がD90の9分の1以下という極端に小さいセンサーを積み、D90とE-P1は似た水準であることが判る。有効画素数に大差は無いが、コンパクトデジカメはセンサーが小さい為、1画素あたりの面積は一眼レフと比べると極めて小さく、これが画素毎の絵のクオリティの差に繋がっている。上の2)とか3)とかは、この差が有む画質の差である。ちなみに、LX3はコンパクトデジカメの中では、最大のセンサーを積んでいる機種の一つであり、他の普通の機種はもっと小さいセンサーを積んでいるのである。
こういう比較をしてみると、E-P1は筐体の小ささではコンパクトデジカメに近く、センサーサイズでは一眼レフに近い、いいとこ取りの機種であることが判る。若干マンセー基調でこれまで語ってみたが、ただ一つ、初値が10万ってのは、技術的に難しいことを実現したとはいえ、いただけない。これはコンパクトデジカメに近い「いいとこ取り」をして欲しいもんである。
ただ、この値段が高いという難点はあるものの、自分的には購買意欲をかなーりそそられている。GWにタイのホアヒンという所で屋台料理とマッサージとゴルフ三昧の日々を送ったが、こういうまったりとした旅には一眼レフはそぐわない。そん時はLX3を持っていって、概ね問題は無かったけど、やっぱりコンパクトデジカメは超広角やテレマクロが出来ないという、表現の限界がある。ゆるい非日常のお伴にはE-P1みたいな、小さいけれどセンサーがでかくて写りが良いカメラが最適だと思う。
- こう比較すると、コンパクトデジカメ並みのパンケーキレンズの薄さ(右)が目立つが、一眼ズームレンズとしては左の14-42mmも十分薄い。
あと、カメラにはレンズが必須だが、E-P1的にはパンケーキレンズと呼ばれる、2.2cmとやったら薄い17mm/F2.8が注目を集めている。でも僕は、標準レンズである14-42mmも4cm強と十分薄いし、さらに寄れるので、むしろこちらが第一選択だと感じている。ついで、このE-P1が属するマイクロフォーサーズ規格は、Panasonicとオリンパスが主要供給者で、双方互換性があるため、Panasonicの超広角の7-14mm/F4と今後出るハイスピードレンズである20mm/F1.7あたりを揃えたい。これ全部持っても1kg弱だから、後は好みで望遠系か。いまんとこマイクロフォーサーズの望遠レンズは、パナの45-200mm/F4-5.6だけだが、これは手ブレ補正が付いているせいで380gもあり、小さく軽いカメラが作れるというこの規格をスポイルしている。マイクロフォーサーズ機は、アダプタかませて、一つ大きなフォーサーズ規格のレンズも装着できるが、そうすると220gのオリンパス40-150mm/F4-5.6が視野に入るものの、アダプタ重量込みだと結局325gと、いい数字になってしまう。テレマクロは一眼レフの魅力の一つだから、ここは早急にダブルレンズキットの望遠側みたいなレンズをオリンパスに軽く仕上げて欲しいものだ。
[NIKON D700 /AF-S VR Nikkor 70-300mm F4.5-5.6G]
- もう少し寄らないとテレマクロとは呼べないが、一眼の望遠レンズは、こんな感じで近付かなくても後ろがふわっとボケる。何の変哲も無い庶民望遠レンズで撮っているが、コンパクトデジカメでは残念ながら後ろまではっきりくっきりで、こういう写真は無理である。
ただ、逆に望遠をギブアップするならシンプルに見えてくるものがあって、20mm/F1.7が寄れるレンズで登場したら、装備を軽くしたい時には、これと超広角だけで標準無しってのも面白いかもしれない。
テレマクロもそうだが、F値が小さいハイスピードレンズのボケ味は一眼レフの最大の魅力の一つだし、下記の7-14mm/F4のレビューも旅写真だったが、超広角レンズは持つだけで旅心をそそる危険な代物である。こういったレンズを通して見る世界は、コンパクトデジカメでは撮れない世界である。また、オリンパスとPanasonic以外の一眼レフメーカーにも超広角レンズはあるが、これが軒並み重量級だったりする。オリンパスとPanasonicの2社によるマイクロフォーサーズ規格は、超広角を最も軽く小さなシステムで実現する規格でもある。
そんなこんなで、E-P1は、D700以来久方ぶりに萌えたカメラである。独特の解像度と発色のDP2とも迷うけれど、スチルの魅力以外に、EP-1は720pにステレオリニアPCMと、動画が意外に良いので、旅をオールラウンドにと考えると、買うならE-P1にやや傾いていた今日であった。