Risky-transaction fees

 今日の昼くらいに、アメリカにおいて、金融機関が高リスク取引を今後手がける際にセーフティネットの為の保険料徴収を考えているとバラク=オバマが考えているという報道が割と唐突に日経で流れた。先週くらいに流れていた規制案の中で、デリバティブ関連の規制はちょっと待って、となっていた部分の話だと思って調べたが、そこにぴったり合致するかは不明ではあるが、オバマが昨日の記者会見で、金融規制改革の一環として、このアイディアを表明したらしい。
 Google Newsで検索する限りは日本語ソースは日経だけの模様で、日本語メディアだけでは埒が明かないので、Wall Street Journalのサイトを見たら、割とまとまった記事があったのでこれを紹介する。要は、解釈は混じるが、こういうことの様だ。

  • オバマは大手金融機関の行動が金融危機後も変わっていない事に苛立っており、このまま規制しないと、また同じ金融危機が起きると考えている。むしろ、大手金融機関はToo big to failであることが明らかになり、モラルハザードが起きる分、今回より次の危機は更に悪くなる可能性すらある
  • であるなら、将来的に同じ事が起きた場合、その費用はタックスペイヤーのポケットからで無く、金融業界の中で賄われるべきである
  • それを実現するアイディアの一つが、例えばクレジットデリバティブの様な高リスク取引を金融機関が行う際に預保がフィーを徴収するというものである。こういったフィーを徴収することそのものが、高リスク取引の抑制策にも繋がる
  • また、このアイディアの本質的なコンセプトは、金融機関が大きく複雑になりすぎるのをペナライズすることである
  • オバマは、巨大金融機関は、小さな銀行より分厚い自己資本を要求される様な案や、またホワイトハウスに巨大複合金融機関を買収・解体する権限を与えることを提案している(これは6月頃出ていた規制案の話か?)

 高リスク取引へのペナルティというのは、対象取引を正しく特定できるかという点と、金融の革新のフォローアップが出来るかという点において、技術的には簡単では無いと思うが、金融機関を小さくすることで、政府が管理可能なインパクトにリスク量を止める、というのは原理原則に基づいた正しいアプローチの様に思われる。ほぼ1年前、リーマンショック直後の頃、僕もこんなエントリを書いて、締めの所に個々の金融機関の規模の規制の可能性に触れたが、

○Too big to bail out /2008-09-30

論理的に詰めて本当にリスクをコントロールしようとすれば、これにやっぱり行き着くのかもしれない。また、そこまで行かなくても、システミックリスクを作り出す様な巨大金融機関はより高い資本比率を求められる、というのはスマートな解決策であると感じられる。いずれせにせよ、寡占利益が崩れたり、資本が余ってROEが落ちたりで、金融株にはネガティブなインパクトだろう。

 あと、上記のWSJの記事中には、オバマは公開企業の高額なトップ報酬に手が着いていないことにもイライラしており、「もし恥が機能しないなら」株主サイドがトップ報酬を減額する様にプッシュしたいとのこと。短期的業績とそれに基づいた報酬というインセンティブ体系が問題の根源の一つ、というアプローチはこれまた正しそうだが、クリントンからブッシュ時代を通じて主流だった価値観とは全く逆の発想である。こういった時に、それ程劇的に規制が進んでいる訳でも無い他国動向を睨みながら、下手な規制はグローバル競争力を削ぐとかって話が主流にならないのは面白い。アメリカのモンロー主義って、たまには良いことをもたらすんですな。