ボロブドゥールへ。4日目:アマンジオ | Amanjiwo


 さて、アマンジオである。ボロブドゥールを見終えた僕は、アマンジオに電話した。空港への送迎サービスが付いているのがアマンリゾートだが、僕は空港で無くてボロブドゥール遺跡に既に居るので、ここに迎えに来いという要望である。そしたら、遺跡近くのマノハラ・ホテルで待てと言う。おお、遺跡好きの真野原さんが経営しているのか、本当に確認出来ると勇躍マノハラ・ホテルに向かったが、結論的には普通の単なるホテルだった。遺跡の敷地内にある唯一のホテルだと言う。クオリティは、前泊のABADI HOTELよりも良く、高級ホテルと言っても問題無い感じだった。
Borobudur over Amanjiwo
[Nikon D90 / AF-S VR Nikkor 18-200mm F3.5-5.6G]

  • アマンジオのメイン回廊の先にボロブドゥールが森に浮かんで見える設計になっている。

 アマンリゾートだけあって、ジャガーのリムジンでも来るかと思ったが、迎えは日産パトロールだった。日産パトロールは、カタールの白い砂漠ツアーで乗って以来だが、後はギアナの密林とか、世界の辺境でしか出会って無いので、何か僕の中の日産パトロールのイメージとアマンリゾートのイメージは、大変そぐわなかった。それで、この思い自体が誰とも共有できない事が次第におかしくなって、クルマの中で、一人で笑いを堪えるのに必死だった。今思うと、腹痛でだいぶ頭もやられてたのかもしれない。
 アマンリゾートは、単なるホテルでは無くて、ホテルが用意する色んなイベントやショートツアーと併せたパッケージングになっている。僕は、もともとアマンジオに泊まらずとも、トレッキングがしたくてトレッキングシューズを持ってきていた。出迎えてくれた、ホテルの支配人と、滞在中のアクティビティを話し合った際に、トレッキングがしたいんだけど、と伝えると、Selogriyoという所を推薦してくれた。密林とライステラスの中に、仏教遺跡が点在すると言う。トレッキングなら、中部ジャワでベスト、との太鼓判付きである。男子なのに、CREA Travellerの「アマンリゾートのすべて」とかを買って、ニタニタ読んでいた経緯から、このアクティビティプランニングは大変楽しみにしていたので、大満足である。後は、ボロブドゥールの頂上で夜明けを迎えるツアーとかが有った。早朝にボロブドゥールに入れるのは、アマンジオとマノハラ・ホテルの滞在客だけの様である。神聖なる遺跡の頂きでご来光を迎えるのは、貴方の人生に沢山のインスピレーションを与えるであろう、とか何とか、という英語の説明を読んで、思わずバーニーズの一階で売ってそうな高尚な感じの自然派化粧品の説明書きみたいだなと思った。化粧品で人生変わりますかいな。それはともかく、普通のホテルというのは、物理的なベッドとご飯を提供する場所で、高いホテルというのは、その質が究極に良いというだけなのだが、アマンリゾートは、それに加えて滞在中の楽しみを計画・提供する、というのがコンセプトであって、その看板に偽りなし、と実感した。
Reception
[Nikon D90 / AF-S VR Nikkor 18-200mm F3.5-5.6G]

  • お部屋の演出。ウェルカムカード付き。

 その辺りで気力が尽きて、部屋に辿り着いたあたりから、急速に元気を失い、夜ご飯も部屋へのデリバリーで済ませ、倒れる様に眠りに付いた。死んだ様に寝たのだが、明けた4日目も体は重かった。朝からライステラスをトレッキングする予定だったが、この体で行っても、コメに施肥してまわるのが関の山である。ゆえ、泣く泣くキャンセルをして、部屋で体力の回復を待つことにした。寝てただけなので、書くことも無い。なので、薬の話をすることにする。
 途上国を旅行するという事は、下痢と付き合うという事を意味する。学生時代は、病気したら、2-3日その都市に滞在して、体力の回復を待てたが、リーマン・バックパッカーは時間に限りがあるので、病気すると見れる所が減るし、そもそも予定した休みの間に日本に帰れず、社会的に抹殺される可能性すらある。なので、僕は病気になっても、すぐ回復できる様に、或いは最悪這ってでも帰るべく、おそらく普通の旅行者よりは多めの薬を携行して旅行をしており、下痢についても最低限の対策はしている。このマル秘テクニック(昭和ですな)を公開するので、この手の話に疎ければ、旅人注目!
Amanjiwo room
[Nikon D90 / AF-S VR Nikkor 18-200mm F3.5-5.6G]

  • 差額ベット代x00$の病室。

 下痢というのは、ウィルス性だと手の打ち様が無いが、旅行で多い細菌性であれば、抗菌薬で何とかなる。中でも、広域スペクトラムというのだが、色んな菌に効く抗菌薬というのが有るので、それを持っていくと良い。抗菌薬の中で、まず選ぶべきはニューキノロン系の合成抗菌剤である。僕はタリビットを使っているが、大腸菌赤痢菌、サルモネラ属、チフス菌、カンピロバクター属、腸炎ビブリオと殆どの原因菌に効く。もう一つ、テトラサイクリン系でドキシサイクリンも持っていて、こちらはコレラアメーバ赤痢に効く。また、マラリアの予防薬にもなる。この2つで殆どの旅行者が心配すべき下痢の原因菌は退治できる(静菌的なので、必ずしも正しい表現では無いが)という算段である。タリビットやドキシサイクリン(ビブラマイシン)は、日本でも良く処方されるので、在庫がある人は持っていくと良いだろう。在庫が無い場合は、日本は症状が出てから薬を処方する前提があり、予防的処方として薬を出すのは難しいので、個人輸入をすることになる。後は、殆ど全ての嫌気性菌、グラム陽性球菌、グラム陰性桿菌に効くという、超広域スペクトラムを持つカルバペネム系抗菌薬あたりを持てば、不安症な人も安心出来るだろう。僕は、そこまででは無いので、ニキビの薬として処方されることもあって、扱いの容易なドキシサイクリンとタリビットが旅の友である。あくまで、セルフメディケーションなので、副作用の少ない、こなれた薬がベターだと思われる。また、こういう安心できる薬は、外人は全て医者だと思っているアフリカの本当の辺境に行くと、物々交換の原資として使うことも出来る。抗生物質一錠と、一宿一飯。まぁ、悪くない。後は、這ってでも帰る必要がある時、最後の手段として、日本の下痢止めはなまっちょろいので、イモジウムという海外ではメジャーな強力下痢止めを持っている。これは、使った後が大変なのだが、とりあえず腸が完全ストップするので下痢は止まる。
Sofa
[Nikon D90 / AF-S VR Nikkor 18-200mm F3.5-5.6G]

  • 部屋は一つ一つ建物が独立していて、これは部屋のベランダの専用ソファ。デリバリーを頼むと、ここで食べることになる。

 また、日本では予防的処方はしてくれないと書いたが、もし旅行に備えて海外の薬が必要であれば、東京の人は飯倉片町のインターナショナルクリニックの門を叩くと良いだろう。ここは、白系ロシア人の子として満州に生まれ、満州が消滅したことによって無国籍となったエキサイティングな経歴の医師が、保険外診療だけをするという、日本で最もユニークな診療所の一つである。現在最強のマラリア予防薬はマラローンだろうが、これは日本国内では普通手に入らないので、これまで、個人輸入したり、旅行初めのトランジットでシンガポールに立ち寄り、そこでトラベルクリニックに処方箋書いて貰って買うみたいな、苦労多き裏技を使っていた。しかし、この診療所は、わざわざ7時間かけてシンガポールまで行かずとも、シンガポール大使館から徒歩5分の地で、値段は多少高いが、さっくり売ってくれるという素晴らしい診療所である。もちろん、ドキシサイクリンも売ってくれる。

○International Clinic Website
○空飛ぶナース/山本ルミ著(同病院勤務。僕はこの人のファンで、サイン貰いました。)

 薬の話はこの位にして、夕方暮れなずむ頃、ようやくタリビットが効いて、トイレの間隔が開いてきた。さすがに寝てアマンリゾートの日々を終わるのは勿体なかったので、フロントに申し出て、ロードバイクを借りた。日没までの短い間、近くの村を回ろうという試みである。時間にしては、20分くらいのショートトリップだったが、タバコの収穫と天日乾燥作業が見れたり、ジャワの田舎の風景が楽しめた。ジャワの人々はフレンドリーなので、ロードバイクで走っていると、しきりに声をかけてくれる。アフリカでも声はかけてくれるが、奴らは写真を撮られるのを好まないので、いま一つ記憶を越えて記録に残らないのだが、アジアの人々は写真を嫌いじゃないから更に良い。
Tabacco Field
[Panasonic LUMIX LX3/ 24mm F2.0]

  • タバコの葉の乾燥風景。国内消費用だそうだ。

 今回は自転車を借りることが出来たが、自転車はどこでも50$位で買えるので、公共の交通機関が乏しい地方を旅行する時は、自転車を買ってしまうのも一つのアイディアである。ホルムズ海峡に突き出たオマーンの秘境、ムサンダムは、公共交通機関のアクセスの無い空港があるという凄まじい地方で、僕はそもそもヒッチハイクでホテルに辿り着くことになった。しかも、空港にバスもタクシーも無い以上、ホテルにもある筈が無く、ホテルから町らしき場所まで1時間の歩きである。クソ暑い中東の土漠の中1時間歩くには、2リッターの水を用意せねばならず、荷物の重さにも閉口した。僕はここに、砂漠のフィヨルド少数民族の集落、及び対岸のイランとの密輸の風景を見に来たのだが、徒歩ではどこにも動けず、しょうが無いので自転車を買った。人生で最も自転車の発明者に感謝した時間だったかもしれない。それでも、砂漠のフィヨルドまでは自転車で1時間とかの行程とかで、あれは痩せに痩せた旅行になってしまった。
Airwalk to Borobudur
[Panasonic LUMIX LX3/ 60mm F5.0]

  • 遠く先の森に浮かぶのがボロブドゥール。しかし、こう一眼レフの写真と並べると、LX3と言えども、光量が無いところだと、色の面ではちょっと濁りますな。

 僕は身長が178cmで、栄養状態のよろしく無かった学生時代は50kgを多少切るというガリガリっぷりだったが、社会人になったら、55-57kg位で安定していた。それが、タンザニアからオマーンを3週間ほど回っただけで、49kg台復帰したのである。熱帯の、飯が不味い地域を、重い荷物背負って、歩く旅行をすると、激痩せをする。ガーナを旅行した時も49kg台を見た。こういった旅行後は、ほんとにボクサーみたいに絞れた体になっていて、社会復帰後の通勤で、飛ぶ様に駅の階段を駆け上がれるのである。僕は、これを密かにバックパッカー・ダイエットと呼んでいた。今回の旅行は、最後はアマンリゾートまで行き着いて、全然バックパッカー旅行じゃないし、あんまし胃腸の吸収効率がよろしく無かった、という以外には痩せる要素は無く、56kg台キープで終わったが。
Mixed
[Panasonic LUMIX LX3/ 24mm F4.0]

  • フラッシュ焚くと無味乾燥になってしまうが、真の闇の中のご飯だったので已む無し。

 自転車でのショートトリップは迫る夜闇に追われる様に終わり、宿に戻って1日半ぶりに普通のものを食べた。毎日変わるローカルフードスペシャリテは、なんとナシ・チャンプルーだった。柊屋旅館に泊まったら、カツ丼が出てくる様なもんである。ナシ・チャンプルーだが、チャンプルーという言葉は沖縄弁と意味が同じで、「混ぜる」ということである。ナシはご飯だから、要は混ぜご飯だ。韓国語で言えば、ビビンパプである。マレー・インドネシア圏における屋台料理の代表格であるが、マレー・インドネシア圏最高級のナシ・チャンプルーも一興と、面白がって食べてみたが、大変上品なお味で非常に美味しかった。混ぜた具は、しっかりと手を掛けて味を付けてあって、やや固めに炊いたご飯と、汁気たっぷりの具がマッチして、大満足であった。ベトナムを除く東南アジア圏で高級ホテルに泊まると、シャングリ・ラにしても、リッツ・カールトンにしても、飯はあんまり旨くなかったりするのだが、このナシ・チャンプルーは、なかなかイケてると思われた。
Rice
[Panasonic LUMIX LX3/ 24mm F2.8]

  • 小じゃれてるが、考えるだけで洗うのが大変そうなお櫃である。