ご清栄

 仕事をしていて、倒産会社への手紙の書き出しはどうすれば良いかと聞かれた。僕が銀行出身なので、倒産会社への通知は山ほど出している筈と思われたらしい。宛先を聞くと、明らかにご清栄していない感じである。Yahoo!知恵袋には、かえって表現を変えるのが失礼なので、普通の書き出しで強行すべしと有ったが、倒産会社に貴社ますますご清栄とかご隆昌とか言うのはやはり憚られ、かと言って、貴社ますますご清算でお慶びしたら、ビジネス社会で抹殺されてしまうだろう。普段、いかに意味不明瞭な「ご清栄」「ご健勝」に頼った文面を書いていたかを改めて知った。
 結局、宛先への言及は避けて、秋冷の頃、日頃よりご高配賜り・・・なんて差出人のみを表現するフレーズに落ち着いた様だ。ご高配というのも決まり文句の一つだが、決まりがかっちりある世界で、想定外のことが起きると、手紙一つ書くのもややこしくなるもんですな。自然人であれば、不幸な人に書くフレーズも確立しているのに、法人には無いというのも、やや不謹慎ながら興味深い。自然人と法人が一致していた屋号の世界から、法人が幅を効かす世界に入ってまだ日が浅いということだろうか。