NIKON P7000 & D7000

 ニコンの新商品の噂について、近年独占的な地位を占めつつあるサイトがnikon rumorsだが、それによれば、今日コンデジのハイエンド機種であるCoolpix P7000が発表される様だ。画質重視で画素数を減らした1010万画素センサーを積む一方、28-200mmの7.1xと画質軽視で高倍率化したズームレンズと一見チグハグなスペックだが、コンデジは一眼レフとの対比では便利カメラだから、ワイドレンジが撮れて、そこそこの画質というのは、落としどころのコンセプトとしてはアリだろう。
 手持ちの高級コンデジは、Lumix LX3を極めて長年使ってきて、不満は面倒くさいレンズキャップとかレンズキャップとかレンズキャップとか、本当に付け外しが面倒で写真を撮る気が失せるレンズキャップがメインである。その他には、ちょっと派手派手しい発色と、24-60mmと望遠が全く撮れないさすがに狭いズームレンジ位で、概ね満足している。だから、まだ買い換えるには至らないだろうが、LX3の後継機種でLX5が遂に出てズームレンジは改善し、CanonもS95を出して暗いテレ端は変わらないものの、やっとHD動画に対応するなど、順調に改善しているのが伺えるので、ニコンの新機種にも興味はある。そこそこの画質(特に高感度)で、200mmの望遠が撮れるなら、LX3とは違う用途に使えそうだ。そもそも、コンデジで高倍率の望遠が強いデジカメは、軒並み小型化の為に極小センサーを使っていて、画質がメタメタだったから、こういうコンデジにしては大型センサーを使い、かつ望遠が強いというのは希少価値かもしれない。(ちょっとでかいのが難点だが・・)S95は、レンズの広角端はF2.0とギミック的に明るいF値を達成しているが、望遠端が換算105mmなのにF4.9と急速に暗くなり、LX5が90mmでもF3.3をキープしているのと比べると、数字としてはいかにも凡庸である。P7000は、広角端こそF2.8と「やや良い」位だが、換算200mmの望遠端がF5.6と焦点距離の割には落ち込み幅が小さく、頑張っているので、望遠レンジでは確かに特徴が出そうだ。LX3の買い換えなら、LX5はまたしてもレンズキャップだから、そこはバランスが良く、レンズキャップでないS95、買い足しなら妙に望遠が強いP7000という感じだろうか。

  • P7000ご近影(予想図)

 また、nikon rumorsによれば、14日に一眼レフも新機種が発表されそうだ。PじゃなくてD7000という機種で、僕が持っているD90の後継機種とされる。こちらのスペックは凄まじくて、39点AF・100%ビュウファインダー・秒速6コマ・1620万画素・1080/24p動画・防滴防塵とのことで、上位機種のD300sを完全に食っている。というか、僕の持っているもう一台のD700の優位性もフルサイズという以外は危うい位の下克上機種である(さすがにあの極上のシャッターフィーリングとか、スペックに出ない感性に訴える部分は随分差があるだろうけど)。D7000は、なんか「僕が考えた理想の新機種」みたいな妄想スペックそのままで出てきて、いつもののんびりしたニコンでは無いみたいだ。ライバルと比較しても、先んじて発表されたキャノンの60Dが、9点AF・96%ビュウファインダー・秒速5.3コマ・1800万画素・1080/30p動画で、キャッチアップした上に若干上回った感がある。もともとキャノン60Dのラインは、前機種の50Dや40Dも含めて、ニコンD90のラインと比べると、少し重くて性能の良い機種というイメージが有ったけど、それを打ち崩してしまった。
 実は、一眼レフ二大メーカーであるニコンとキャノンは、面白いことにDXという普及機のラインナップのヒエラルキーが、微妙にかぶらない様にうまく出来ていた。スペック順に並べると、キャノン7D>ニコンD300s>キャノン50D>ニコンD90>キャノンKiss>ニコンD5000・・・みたいな感じである。これは、価格競争に陥りやすい真っ向からぶつかる機種を出さず、相手のラインアップの隙間に入る機種をお互い出し合って、棲み分けを行っているのだと理解していたのだが、このD7000のスペックが本当であれば、作られた平和にニコンが喧嘩を売って、60Dと真っ向勝負か、或いは少し上位に位置しようとしている事になる。

  • ニコン一眼レフのスペック比較。D90後継なのに、いかにD7000が突然変異か判る。連射は秒間3より5の方が高スペックだと断言できるが、高画素化はトレードオフとして失われる性能もあるので、必ずしも高スペックとは言えない。

 D90はバランスの良い機種だったけど、D7000がこのスペックで、かつD90と同じ様に600g前後で出てきたら、これは買い換え必至である。高画素化されると、高感度性能や、色そのもののヌケの良さを犠牲にするから、1620万画素そのものを手放しには喜べないが、時代の趨勢上已むを得まい。また、こういう高画素機は古いDレンズというタイプのレンズだと、解像度が付いて来れそうに無い。ニコンもそこんとこは理解していて、ここ1-2年位、怒濤のレンズリニューアルを行っていた。僕のレンズ資産には、Dタイプのレンズが35mm・50mm・85mmと結構な割合をまだ占めているから、カメラに合ったレンズをと思うと、また小判がパタパタ飛んでいくなぁ・・。ま、このデジタル化ではどうしようも無い、ごくアナログ的なレンズの光学性能というのは、その存在故にデジカメを日本とドイツメーカーの金城湯池たらしめる、極めて画質には重要なファクターだから、画質を求めるなら、レンズに投資は惜しむべきでは無いけれども。とりあえずは、24-120mm f/4は予約しているが、D7000と一緒に発表予定の、35mm f/1.4あたりは、手持ちのレンズと完かぶりはしないので、食指が動く。急激な円高局面だと海外サイトから輸入した方が安かったりするので、日米のサイトにらめっこの日々が続きそうである。

○ついしん

 P7000、既に海外では予想通りのスペックで発表された様だ。サンプルイメージを見た感じ、四隅までかなりの解像感で良いと思う。1000万画素という敢えて高画素に振っていないソニー製CCDの素性の良さは明らかだから、後はレンズの性能とローパスフィルタの質と画像処理のソフトウェア次第だったが、米国ニコンのサイトに載っている二枚のサンプルは、なかなか良い画質だと思う。ライバルと比べると、キャノンG11のオフィシャルサンプルは、一眼レフに迫る恐るべき解像感だが、dpreviewという海外のカメラ比較サイトの実験によれば、G11と僕も持っているパナソニックLX3の解像度はほぼ同じで、生データではむしろLX3の方が良く、G11はJPEGに出力する時のシャープネスをきつくすることで解像感を出しているという結果であった。これが事実であれば、LX3の画質とP7000の画質はどっこいか、多少P7000が甘い位に見えるから、概ねP7000はG11とも同じ位かちょい劣る程度の画質と言えそうだ。高倍率という不利なレンズの割には健闘している。キャノンS95については、前機種のS90はG11と僅かな差は有ったので、その差がバージョンアップで埋めれたかどうかだが、サンプル見た感じでは引き続き上位機種との差はありそうな感じであった。よって、キャノンG11、ニコンP7000、パナソニックLX3、キャノンS95の4機種は、さほど差は無いが、敢えて順番を付けるなら、G11とLX3が良く、同じかちょっと甘い位にP7000、次いで僅かな差でS95という感じだろう。G11やP7000は結構本体サイズは大きいので、もし本体サイズ VS 画質レシオを考えるなら、LX3が優位だ。ただ、一つ留意点としては、キャノンのサンプルイメージは、ばっちり光を当ててベストコンディションの絵を載せているので画質が判りやすいが、ニコンのサンプルイメージは暗いポートレートが多く、イマイチ実力が測りにくいので、そこはちょっと判断が変わりうる余地を留保したい。
 ちなみに、P7000発表と同時に、あともう一機種、裏面照射CMOSフルHD機であるS8100というのも出た。こちらは、スペック上はなかなか面白いと感じたが、サンプル見る限りは、顔の輪郭の線が溶けていたり、描写はイマイチだと感じた。ライバルのソニーHX5Vと似ていて、結構塗りつぶし感のある、水彩画的描写である。裏面照射機であれば、カシオのFH100かキャノンのIXY 50Sの方が、レンズが良いのか、画像処理が上手いのかは判らないが、好ましい絵だ。S8100のサンプルイメージもちょっと暗めのポートレートなので、何とも言えないが、ノイズの出方からして、光をきっちり当てても余り期待できないと思われる。カシオは、手ぶれ補正が弱く、動画がフルHDでは無いので、裏面照射CMOS+10倍ズーム機+フルHD機を買うなら、best buyは静止画重視ならIXYかしらん。動画だと、ソニーHX5Vは1920*1080/60fpsと、フルスペックっぷりがずば抜けている。他機種は、IXYが1920*1080/24fps、S8100も1920*1080/30fpsで、フレームレートが低い。ただ、HX5Vはワイドマクロが寄れない(5cmまで)のが致命的なので、テーブルフォトを撮る人にはお勧め出来ないのが残念だ。あと、静止画の画質に優れるキャノンIXY 50Sだが、液晶が23万ドットとイマイチなので、余りPCにこまめに移さず、カメラの液晶で自分や友達に写真に見せるのが主流の人だと、せっかくの高画質を出力デバイスがスポイルしてしまう。背面液晶重視なら、92万ドットのS8100は良いかもしれない。ワイドマクロも寄れる(1cmまで)し、動画のスペックもまぁまぁとバランスは良い。P7000もズーム高倍率な割りに画質はそこそこという感じだったが、この秋の新商品は、ニコンのコンセプトは、中庸ということなのだろうか。