AF-S VR Nikkor 24-120mm f/4G 実写比較サンプル

 昨日発売日のニコンの新レンズ、24-120mm f/4GをD700以来の発売日ゲットで買ってしまった。よく考えると、FXの標準レンズは4本目である。馬鹿高い24-70mm f/2.8G、リーズナブルな24-85mm f/2.8-4D、そして中古を格安で保護した28-70mm f3.5-4.5Dが我が家に砲列を成している。そこになぜキャラの被る4本目に手を出したかと言うと、お手軽手振れ補正レンズが欲しかったというのもあるが、もし24-70mm f/2.8G並みの画質だったら24-70mmを売却してしまって、同じく値の張る中望遠ズームである70-200mm f/2.8Gに入れ替えることを目論んでいたからである。

  • 24-120mmはメタボレンズ。弩級レンズと思われる24-70mmと比べても実に太い。それも一つの個性だ。

 デジタルガジェットというのは一般に値落ちが激しいものだが、アナログな光学製品であるレンズは、値段の変動が余り無い。24-70mm f/2.8Gの新品を僕は17万円ちょっとで手に入れた記憶があるが、美品のヤフオク売却価格はここんとこ14万円位である。この素晴らしい性能のレンズを1-2年使って3万円ならレンタル料と考えても格安である。カメラメーカーの純正レンズは、このリセールの高さがあるので、それなりに値が張るレンズでも安心して購入できるのである。

  • 恒例のピントチェック。広角でもチェックしたが、さすが純正、バチピンである。

 値段の話はさておいて、夜なので外では撮影できないが、室内でテストしてみたくなった。果たして24-70mm f/2.8Gとの実力さ如何に、ということである。比較対象には、更に24-85mm f/2.8-4Dも加えてみた。こちらのレンズは古いレンズなのだが、簡易マクロ機能が実に便利だし、広角より標準〜中望遠が好きな僕にとっては、DXで使うと36-127mmと極めて使いやすいレンジなので、飛びっきりの描写をするレンズで無い事はわかっているが、手放せないレンズである。一方の高価な24-70mm f/2.8Gは、例えば結婚式の様に、暗いシーンで動きモノという、カメラマン泣かせのシビアな撮影環境では、AFの食い付きも良く、絞り開放から切れ味のある描写で重宝するのだが、そこまで厳しい撮影というのは余り無いので、普段は留守居役を仰せつかりがちである。24-120mm f/4Gでその辺り代替できるなら、70-200mmとトレードというのはリーズナブルな選択肢であると考えている。
24-120mm f/4G 50mm test

  • これは50mmのサンプルだが、右上と中心の四画でくくった部分を各焦点距離で抽出している。フルサイズのイメージは、これをクリックしてflickrに飛ぶと、そこに置いてある。

 まずは、一番厳しい広角28mm・周辺・絞り開放という条件での比較である。おそらくこのエントリは、いつも読んで頂いている方より、検索エンジンからこのレンズの名前で飛んでこられる方が多くなると思うので、多少細かく書くと、もっとハイスピードのレンズもあるが、24-120mmと合わせて、f/4.0に揃えた。なお、VRは切り、シャッタースピードを確保する為に、ISO1600に固定している。被写体である新聞との距離は約75cmである。よって遠景では変わる可能性があることをご了承頂きたい。また、比較的近い被写体なので、正対できているかが問題だが、被写界深度計算をすると開放でも19cm位あるので、さすがに大丈夫と思われる。なぜ24mmじゃなくて、28mmなのかは、これ以上寄りたく無かったのと、もともと28-75mmもテストする積もりで途中で面倒くさくなったのと、おそらく大差ないからである。

  • 28mm・周辺部・f/4.0


 うむ、普通にひどい。だが、やはり高価なだけあって真ん中の24-70mm f/2.8Gが驚異的に良く、次いで判る程度の差で左の24-120mm f/4。そして見てはいけない程の大きな差が付いて24-85mm f/2.8-4Dだ。前世紀発売のレンズはさすがに最新のフルサイズデジタル一眼レフはちょっと辛い。

  • 28mm・周辺部・f/8.0


 絞ると24-70mmと24-120mmの差は大分縮まったが、まだ差は認識できる。24-85mm f/2.8-4Dは改善したがまだ及第点とは言えない。やっぱりFXはきついな。

  • 28mm・中心部・f/4.0


 さすがに中央部分だと、どれもきちんとした像を結んでくる。それでもやっぱり、24-70mm f/2.8G > 24-120mm f/4G > 24-85mm f/2.8-4Dという差は認識できる。ただ、この程度の差なら、どれもf4なら使えるという評価であろう。

  • 28mm・中心部・f/8.0


 f8まで絞ると、24-70mm f/2.8Gと24-120mm f/4Gは同等レベルになる。24-85mm f/2.8-4Dも他の2つと殆ど肩を並べるが僅かな差は存在する。24-85mmは中心の像はなかなかなので、やはりDXで使うのが宜しかろう。次はちょいとズームして70mmでの比較である。

  • 70mm・周辺部・f/4.0


 予想していたよりも、24-70mm f/2.8Gと24-120mm f/4Gの差は小差である。ほぼ同等と言っても差し支えない。24-85mmはやはり質に差が有るが、広角ほど目も当てられない位では無い。やはり広角端の周辺はレンズにとって一番厳しい所だから差が結構付くが、望遠に行くにつれて差は縮小するのは、これらのレンズも同じの様だ。

  • 70mm・周辺部・f/8.0


 差はより縮まる。だが、引き続き24-85mmはびしっとした像にはならない。望遠でこれだとFXでこのレンズは限界があると言える。あと、24-70mmはこれがテレ端になるが、広角ほど良くないのが気になる。望遠より広角サイドの方が得意なレンズなのかもしれない。

  • 70mm・中心部・f/4.0


 やや24-70mmの線の太さが気になるが、概ね左2つは同じ位、僅差で24-85mmという感じだろうか。この焦点距離だと、24-85mmは開放になるが、気にせずに開放から使えそうだ。

  • 70mm・中心部・f/8.0


 これはどれも文句無い。24-120mmがf/4.0の時よりも像が悪いが、おそらく手振れである。三脚は使っていたが、ミラーアップまではしていなかったので、シャッターショックが影響したのかもしれない。さて、最後におまけでテレ端である。撮影距離を1.5m位まで延ばして、70-300mm f/4.5-5.6Gと、あと単焦点だがトキナーAT-X M100 proDと比較してみた。

  • 120mm・周辺部・f/4.0


 随分レンズによって写る大きさが違うので、間違えたか不安になるが、概ねの傾向はこれでわかるだろう。70-300mmは、120mmぴったりに合わせられなかったので、近似で122mmとし、その開放f値である4.8を絞りとしている。写りに定評のある70-300mmや単焦点トキナーと比べても、24-120mmのテレ端は健闘しているのでは無いだろうか。
 シャープネスはこんな所で、歪曲だが広角は樽が結構有って、18-200mmに似ている。ファインダー覗くだけでもはっきり判る程度である。直線が多い被写体は修正必至である。5倍というズームレンジで24mm始まりなら止むを得ない所ではあるが。

  • 24mm・f/4.5

9231933_1-80 秒 (ƒ - 4.5)

  • 50mm・f/4.5

9231934_1-80 秒 (ƒ - 4.5)

  • 85mm・f/4.5

9231934_1-80 秒 (ƒ - 4.5)-2

  • 120mm・f/4.5

9231935_1-80 秒 (ƒ - 4.5)
 開放で撮ったつもりが、1/3段絞っていて、中途半端な絞りになっているが、おおまかに傾向は判るだろう。広角の見事な樽が標準域から急速に糸巻になる。ビネッティングは開放近辺でこの程度なら僕は余り気にならない。
 さて、まとめめいたものを書くなら、「大三元」と言われるプライムレンズのNikkor 24-70mm f/2.8Gと比べると、今回手に入れた24-120mm f/4Gは、さすがに差があるというのが正直な所だ。24-70mmをこれで手放せるかと言うと、ちょっとそれは無理かもというのが現状である。昨日撮った限りではAF速度は24-120mmも速く、そこに不満は無いが、防滴防塵機能は24-70mmだけだし、シビアな環境を考えると少しでもハイスピードで、かつ開放から描写の良いレンズは手放せない。
 ただ、この二者が圧倒的に違うかと言えば、値段が3分の2位にしては健闘していると思われる。特に中望遠域からテレ端にかけてはなかなかの描写だ。もし、24-70mmを持っていなければ、おそらく24-120mmでも十分満足していたと思われる。28-300mmという11倍の高倍率ズームも同時に発表されていたが、DXではなく、デカくて重いFXを選ぶのは、描写を求めてのことだから、画質が基本期待できない高倍率を買うのはナンセンスだと僕は思う。それならDX使えって話である。この24-120mm f/4Gは、FXを選ぶに足る描写だと感じる。実は、FXとDXの比較ということで、D90+18-200mmとD700+24-120mmで換算50mm域を撮ってみており、これで18-200mmの方が良かったらFXを投げ捨てていたのだが、これは流石に24-120mmの圧勝であった。ISO1600という事もあり、DXのD90はノイズリダクションの影響で細かい所がとろけてしまって、レンズだけの比較にならなかったので絵は掲載はしない。ただ、脳内ノイズリダクション補正をしてフェアに見ても、24-120mmの方がDX+手振れ補正付き高倍率のお手軽セットとは明らかに質の違う絵を吐き出していた。簡単に判る程違わないと、デカ重のFXを持ち歩く気にはならない。24-120mmは、24-70mm f/2.8Gには及ばないが、高倍率の絵とも違うのも間違いない。今度出る28-300mmは予想より良いという話だが、18-200mmと構造的にもコスト的にも劇的に絵は変わらない筈なので、絶対値としては24-120mmの方が良い筈だ。ただ、24-120mmも上位レンズとは差があるから、総体としてズームレンジの割にとか、ちょっと高い割に今一つ、という評価は十分考えられるけど。
New 24-120mm + D700
 そんなこんなで、24-120mm f/4Gの第一印象としては、上位レンズを食うという期待(希望?)は叶えられなかったが、標準レンズとしては概ね安心感のある玉であると思い、今日は実際に外で撮るぞーと思っていたのだが、ざーざーの土砂降りである。防滴防塵が無いレンズを持ち出すのは躊躇されたために、夜に小降りになってから、ご飯食べついでに、ちょっとだけ街を歩いてみた。白金から大手町、浅草である。下記に載せているのは、JPEG撮って出し、ノーレタッチのものだ。感想をつらつらと書くと、AFの食い付きはやはり速くて安心感がある。VRは良く効いていて、1/15秒から1/25秒あたりをスムーズに写せた。あと、重さは明らかに24-70mmとは違い、それ程疲れる感じがしなかったのは特筆すべきだろう。ただ、描写は24-70mmの様な澄んだ感じは今のところ出ていない。どちらかと言うと、こってりした感じに見えるが、まだ太陽光で撮っていないので何とも言えない。週末は晴れて欲しいものである。
9231810_1-80 秒 (ƒ - 4.0)
[Nikon D700 + AF-S VR Nikkor 24-120mm f/4G @85mm f/4.0]
9231929_1-40 秒 (ƒ - 4.5)
[Nikon D700 + AF-S VR Nikkor 24-120mm f/4G @38mm f/4.5]
9231754_1-20 秒 (ƒ - 4.0)
[Nikon D700 + AF-S VR Nikkor 24-120mm f/4G @78mm f/4.0]
9232027_1-25 秒 (ƒ - 5.6)
[Nikon D700 + AF-S VR Nikkor 24-120mm f/4G @95mm f/5.6]
9232014_1-30 秒 (ƒ - 5.6)
[Nikon D700 + AF-S VR Nikkor 24-120mm f/4G @100mm f/5.6]

  • Further study of 24-120mm f/4g

○2010-09-25 高倍率ズーム VS 標準ズーム(18-200mm High power zoom VS 24-120mm Standard zoom)
○2010-09-26 Hinokicho Park by 24-120mm f/4G