旅レンズ寸評:TAMRON B008 18-270mm f/3.5-6.3 VC PZD

 年末は久しぶりに近場で無い海外に行こうと決めていて、決まるとレンズが欲しくなる。恐るべき旅レンズ病である。D700は重いので、D90を持ち出す事になるだろうが、ずっとD90にベストマッチだと思って使っていた純正NIKON 18-200mm f/3.5-5.6Gは、前に24-120mm f/4Gとの比較テストをした時に、標準域での盛大な像面湾曲を見つけて、前から感じていた標準域の画質の悪さが証明されてしまい、ちょっと満足度が下がっている。また、イスラム圏に行こうと思うのだが、経験上イスラム教徒やアフリカ人は近くで写真を撮られるのを好まないので、遠くから被写体を狙う事になる。そうすると、望遠が換算300mmでは足りないかもしれない。そんなこんなで、重いNIKKOR VR 70-300mmを持ち出さざるを得ないかな、と暗い気分になっていたのだが、ふとしたきっかけで、サードパーティTAMRONが、18-270mm f/3.5-6.3という超高倍率ズームをリニューアルする事を知った。これなら望遠が換算で405mmとかなり長い。しかも、やたら軽いレンズである。450g。純正18-200mmより100g以上軽く、70-300mmと比べたら300g軽い。しかもTAMRONの泣き所のオートフォーカスの遅さが、超音波モーター導入によって改善されていると言う。TAMRONはもともと手ぶれ補正は驚異的に効くから、その他が良くなってるなら魅力的なスペックだ。
 とか何とかと思っている内に発売日が来て、虫が光に吸い寄せられるが如くお店に行き、レンズをいじっていたら購入せざるを得ない状況に追い込まれた。自分のD90に付けて、バチピンのレンズを引いたからである。TAMRONNIKONは前々から相性が悪く、昔っから良い思い出は無くて、前ピン・露出ズレの確率が相当高いのだが、何と広角端、中間、望遠端と試してピントが来る当たりレンズをいきなり引いた。これは買うしか無いではないか。

  • 単焦点レンズ、という所にピンを合わせたが、ほぼジャスピン。ボケ方はイマイチ汚いが・・。

 あと、タムロンレンズは片ボケ(左右どちらかの解像度が低い不良)が出る可能性が結構高いのだが、右端がちょっと怪しいものの許容範囲である。歪曲は勿論あるが、18-200mmと比べるとどっこいどっこいか、多少良い位かもしれない。ただ、歪曲の傾向は樽というより陣笠に見えて、必ずしも素直な傾向では無い。また、小型化によって周辺光量落ちが気になったが、これは思った程出なかった。勿論、画質が良いかと言われると24-70mm f/2.8Gみたいな10万オーバーのレンズや単焦点レンズとは比べるべくも無いし、その辺で撮ってみた限りはカリカリした解像感は余り無いレンズだ。ただ、この軽さで15倍ズームが実現できて、テレ端で僅かに像面湾曲が有りそうな事以外は、さほど絵に破綻を感じなかったから、問題なしと考えるべきだろう。純正NIKKOR 18-200mmもそんなに切れ味のあるレンズでは無いから、高倍率はこんなもんだと割り切るべきものだ。良い画質を求めてというより、致命的な破綻が無ければそれで良い。
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  • TAMRON B008 18-270mm @18mm

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  • TAMRON B008 18-270mm @270mm

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  • NIKKOR VR 18-200mm @200mm。やはり270mmと比べると小さく写る。

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  • 広角端・絞り開放。光量落ちは余り無い。

 AFは純正18-200mmと比べるとやや遅いが、従来型DCモーターのタムロンレンズと比べればこいつは超音波モーターが入って相当改善している。純正でも、55-300mmの様な小型超音波モーターでAFが遅いレンズと比べると、むしろ速い位だと思う。ただ、低コントラストの被写体を苦手とするのはタムロンレンズの伝統芸で、低コントラストの環境下ではD90だと真ん中のAFポイントで無いとうまく合わなかった。周辺のAFポイントと真ん中だと随分合従速度や精度に差が出る印象だ。ま、余り旅行中に低コントラストのものは撮らないだろうから、気にしては居ない。買った直後にお店の周りでパチパチと数枚撮ってみたが、特にストレスは感じなかった。バスクに行った時に、サッカーのナイ-トゲームをNikkor VR 70-300mmで撮ったが、そういう暗くて動きものの被写体とかで無ければ必要十分だろう。
 今んとこの結論としては、旅レンズとしては軽くて便利で画質も破綻無く、また製造不良も特に見つからず、全くもって問題無さそうである。これに寄れる純正35mm f/2Dとの組み合わせで旅に出ることになるだろう。前にベトナムに行ったときに、トキナー35mm f/2.8マクロを持っていったが、換算50mmは標準レンズと呼ばれるだけあって、これ一本で殆ど何でも撮れた。高倍率ズームと標準レンズ、どっちも“何でも撮れる”レンズであるが、スペックは全く正反対というのが写真の面白さである。
○取り敢えず帰り際に撮ってみたもの
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  • 隅のAFポイント使ったら、子供にピンが来なかった。これは110mmだが、開放絞りはf/6.0と暗い。望遠域はクロスセンサーのAFポイント使うのが必須と思われる。

うーん、晴天下できっちり撮らんと細かい善し悪しは分からんな。それはまた今度。