TAMRON B008 18-270mm f/3.5-6.3 VC PZD 屋内画質レビュー

 前回に続いてB008こと、新型TAMRON 18-270mmのレビューである。室内でいつもの様にさくっとテストしてみたが、第一印象程は良くない事が判ってきた。結論的には真ん中はどの焦点距離でもまずまず使えるが、周辺は絞っても良くならない。特に望遠域の周辺は厳しい画質だ。口径を小さくして軽量化を図ったデメリットは、周辺の光量じゃなくて画質に出ている様だ。
 以下、全て旧型AF-S VR Nikkor 18-200mm f/3.5-5.6Gとの比較である。ISO200固定・室内・スピードライト使用・三脚使用・手ぶれ補正OFFで撮っている。

  • 18mm・35mm/Center

  • 200mm・270mm/Center


 中心はテレ端までそれなりに使えそうだ。18mmの開放はTAMRONの方が僅かに緩いが大差は無い。ただ、絶対値としては、3-5倍のズームレンズと比べると特に広角の解像度は落ちると思われる。

  • 18mm/Corner


 上下左右の軸が他と違っていて判りにくいが、上の行がTAMRON、下の行がNIKONである。開放絞り値では、僅かにTAMRONが良いが、絞っても良くならない。NIKONは、開放は甘いが絞るとまずまず良くなる。それでもビシっとはしないが、高倍率なら已むを得ない水準だと思う。

  • 35mm/Corner


 下の行のf値が開放になっているが、これはf/8まで絞って撮っている。TAMRONの絵はまぁまぁ開放から見れるが、絞って良くなるデルタは限られる。一方、前も指摘したが標準域のNIKONの周辺は良くない。開放は見られたものでなく、絞ってもTAMRONの開放程度の解像度しか無い。

  • 70mm/Corner


 一転してTAMRONの絵は悪い。絞っても良くならず、NIKONの開放にも及ばない。逆にNIKONは35mmと比べるとぐっと良くなっている。とは言ってもf/8の中望遠域ならもう少ししゃんとしても良いとは思うのだが。

  • 200mm・270mm/Corner


 テレ端である。ここに一番特徴が出ている。開放絞り値がf/8と一段しか変わらないので、全てf/8で撮ったものを掲載するが、NIKONが比較的すっきりとした絵を吐き出す一方、同じ200mmでもTAMRONの絵は甘い。270mmだと更にひどくなる。テレ端でも中心の解像度はまずまずだったから、周辺はある程度犠牲にしている事が伺える。経験上、周辺の悪いレンズは2パターン有って、画面の殆どで良像を結ぶが周辺で急激に悪くなるレンズと、中心から周辺にかけてじわじわと漸進的に悪くなるレンズである。TAMRON B008は後者の様で、望遠域では使える絵が出る範囲は限られる。ばくっとした話だが、TAMRONは200mmだと周辺は甘いが画面全体の3/4位は使える絵である一方、270mmだと全体の1/2位しか使えないという感じであろう。このレンズは当初テレ端300mmを展望して設計していたらしいが、この絵の傾向だと望遠は画面全体にびしっとした絵が必要と言うより、中心に近い所に被写体が有って、周りはボケている構図が多くなるから、実用上は中心の解像度があればOKというメーカーの判断なのかもしれない。
 簡易的テストではあるが、条件を揃えて比べる事で、大まかな傾向は概ね判ってきた。NIKONは、中望遠域以遠のレンジで画面の隅々まで安定した絵を出す一方、標準域では周辺がダメダメ、広角では絞る必要がある。一方のTAMRONは、広角から標準域は周辺まで開放絞りでまずまずの絵を出すが、望遠は中心解像を重視して周辺を捨てており、かつやや軽く、望遠に強い。どちらか一本なら、ズーム全域で安定度が比較的高く、甘い焦点域も絞れば改善するNIKONの方が良いと思うが、望遠域で周辺解像度が必要な絵を撮らないなら、軽くて望遠域がより長いTAMRONも有りといった所か。TAMRON60周年記念モデルとあって力が入っているという前評判に、多少期待しすぎていたかもしれないが、NIKONの旧モデルに対して、新しいから全面的に良いという事は全く無く、軽くて望遠レンジが長い分のトレードオフは当然ある様だ。
 さて、こうテストしてみると、折角の旅行にこのレンズというのを躊躇するのは事実である。エジプトからスーダンだと、砂塵が多そうだし、なるべくならレンズ交換したくは無いから、こういう高倍率が良いのだが、もうちょっと画質が良くないと、一眼レフ持ってく意味合いが減ってしまう。SIGMA OS 17-70mmとNIKON VR 55-300mmのセットで行った方が重いけど満足度は高いかなぁ・・。そんな重箱の隅的悩みを抱えつつ、皆様メリークリスマス。