Day-1 失われたスーダンビザを求めて

 今年の年末は強行休暇をする事にした。仕事は忙しく、オン・ザ・ビーチ的にゆっくり休める状況では無いのだが、この夏も、昨年の年末もその前の夏もそんな感じで休まなかった。なので、このままでは偶然にもプロジェクトの間とかで暇にならないと、一生休めないと言う事になる。それは困る。よって、多少忙しくても休むという狼藉を働く事にした。それを何と呼ぶのか。休暇を強行しているのは間違いないが、字面的には如何にも座りが悪い。日本語には休みは無理して迄取ってはいけないという呪いが掛かっているのであろう。
 目的地は主にはエジプト、そして隣国スーダンである。僕のスーダンへのこれまでの慕情を書き出すと長くなるので、今回は割愛する。正直、観光地すぎるエジプトには余り興味は無いのだが、スーダンだけ行くというのがビザの関係で大変難しいし、ここ2年位モンスーン・アジアを出ていないので、エジプト辺りで勘所を取り戻してからスーダンに向かうという段階的順応作戦も悪くない。さて、ビザの話を書いたが、スーダンを旅行するなら一般的に日本人はカイロかアジスアベバで取るのが普通である。ビザ発給ポリシーはその国に近付く程緩くなるグローバル・スタンダードの通り、在エジプト or エチオピア日本大使館の推薦レターが有れば、即日か翌日の発給と言う。僕もこれで良いかとは思っていたが、年末年始を挟むので、日本大使館がやっていない可能性あり、可能であれば日本でスーダンビザを取りたかった。それで、悲惨な位ハッスルしてみたのだが、結局スーダンビザは日本では取れなかった。在日本スーダン大使館のウェブサイトに拠れば、まず英文による会社からの在籍証明にリコメンデーションを寄越せというハードルの高さである。前職は銀行だったが、当時だったらこの段階でギブアップだったと思う。ただ、そこは日頃の行いの良さで何とかクリアをした。加えて、この人の旅費は私が責任を持ちますという保証書を誰かに一筆入れて貰わないといけないので、これもアタマを抱えた。しかし、何とかそれも捻り出すと、やっと往復の交通手段の予約確認に至る。会社組織に推薦される様な人物であり、かつ旅費は誰かに責任を持たせ、そしてきちんと帰るか予約を確認する。どんだけ旅行しに来て欲しく無いのかと。小一時間問い詰めたい
 やっとの事で書類を集めて、学芸大学という実に中途半端な所にあるスーダン大使館に意気揚々と向かったが、なんとビザ発給ポリシーが変わって、追加でスーダン国内の法人か個人からのインビテーションレターが必要だと言う。これがあれば2-3日で発給できるが、無いと本国照会となり、数週間コースとのことだ。インビテーションレターそのものはビザ発給時の必要書類として珍しいものでは無いが、そもそも必要ならウェブサイトの必要書類に載せておいてくれと愚痴りたくなる。97年にシベリア鉄道に乗って世界一周を試みた時は、まだソ連崩壊から10年経っておらず、ロシアは外国人の自由旅行をまだ認めていなかった。なので、ロシアビザ発給には、インビテーションレターか、全行程の予約バウチャーが必要だったのだが、サンクトペテルスブルクのユースホステルが、幾ばくかのお金でインビテーションレターをFAXしてくれていた。この経験が有ったので、スーダンの旅行会社を当たってみたが、果たして一社発行可能と言った会社を見つけた。しかし、高い。提示は180ドル。しかし、レスポンスがスローだったので、高いカネ払ったけどビザ発給に間に合わず、という悲惨な事態をありありとジーン・ディクソンばりに霊視できた僕は、諦めてカイロで取ることにした。取る筈だったビザをギブアップというのは、殆ど無い体験であった。
 そして旅行当日。エアラインはエティハド航空である。アラブ首長国連邦のドバイを拠点とする航空会社はエミレーツ航空だが、こちらは同じくアラブ首長国連邦アブダビを拠点とする。アラブ首長国連邦というのは北海道位しか面積が無い小国の筈だが、国際線キャリアを二つ持つとはいい根性である。日本なんて経済は世界第二位だか第三位、人口でも十位前後の国なのに、エアラインを2つ保持できないという体たらくなのに。成田のターミナルは1、スターアライアンスなのか、ANAマイレージクラブでマイルが溜められた。エミレーツは過去3回乗ったが、確かコンチネンタルのOne-passにはマイルが溜まったが、残念ながら使った記憶が無い。ANAだと国内線にも使えるから気楽に消費できて便利である。
 さて、羽田の国際線が騒がれている昨今だが、成田も徐々に良くなっていると思う。中身もそうだが、京成のエアポート新線が出来て、アクセスも改善した。麻布十番を17:00過ぎに出たが、成田には18:24の到着であった。浜松町から正味1時間、日暮里からは39分である。麻布十番からだと、羽田はタクシーという大技なら15分で着いてしまうが、電車で普通の都心から行く前提なら、40分位は掛かる。だから、成田も遠い遠いと言われてきたが、京成新線のお陰で、羽田と余り大差の無い世界に入りつつある。唯一、ここ20年全く改善されていないのが、電車で着いたときの、閑散かつ殺伐としたエスカレータをぐるぐる上がらされて、人を不安にさせるアプローチであるが、一旦出国を済ました後は、それなりにウキウキ感のあるエリアに仕上がったのでは無かろうか。バックパック背負う様な旅行なので、何にも買えないのが残念だ。
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[NIKON D90 + TAMRON B008 18-270mm f/3.5-6.3 VC PZD]

  • 何人か判らない人のアルカイック・スマイル。