キャロウェイ様

 少々驚いた事があったので少しだけゴルフネタ。僕のアイアンは、いわゆるメーカー製の吊しで無いのを使っている。スーツと同じで普通は吊しを買うのがゴルフクラブだが、カスタムメイドのを使ってるっちゅう事だ。スーツもゴルフクラブも男ならオーダーが好きな筈で、僕はその欲望に忠実なだけである。実は、アメリカにおいては、日本では吊しのメーカーと知られる会社でも、フィッティングを受けてカスタムするのが一般的だったりして、さすが資本主義の本場は欲望に忠実!と思ったりしたものだが、実際には日本においてはオンコースプロショップと呼ばれるコース付属のショップが余り無く、かつコースが都市から遠い事もあり、普通は吊しを買う様になったのでは無かろうか、というのが僕の仮説である。
 それで、具体的にはアイアンヘッド(打つ部分ね)は、遠藤製作所というボイラーでも作ってそうな名前のメーカーのものである。ここは一般的にはOEMを受けるB to Bのメーカーなのだが、ちんまりと自社ブランドも出していて、このEPON AF-302というモデルだ。シャフトには米国のアルディラというメーカーの、NV Pro 105というのを個人輸入して挿している。個人輸入してると言ってみたかっただけである。カーボンシャフトだが硬さを示す振動数は、二回測って貰った事があって、5鉄で324と330だった。メーカー製吊しのクラブでは、概ね最も硬くて重いダイナミックゴールドというスチールシャフトのS200という型番が、大体振動数320位、暫く使うとスチールシャフトはヘタれて柔らかくなる事もあるから、ヘタれないカーボンで324とか330ってのは、もの凄く硬いシャフトなのだ。一般的には硬いほどヘッドスピードを要するのだが、筋力がからっきし無い割にヘッドスピードがそこそこある自分には、軽くて硬いシャフトが合っているのだろうと思ってこれを使っていた。軽くて硬いシャフトというのは、世の中には殆ど出現しないレアカードであり、僕はアメリゴ・ヴェスプッチの勇気を持って、新天地にそれを求めたのである。あと、並みの女性よりか細い手首の持ち主でもあり、スチールは手首痛めそうだな、というのもあった。ヘッドのAF-302は、やや難しめなのは判っていたが、正しいスイングを身につけるには許容度が狭い難しいクラブの方が身につきやすいかなと思ったのと、このレベルのクラブの中では明らかに打感が良く、うまく打てた時の快感から離れられずに、これを使っていた。ある意味、自分の実力とかけ離れたクラブになっているのは、承知の上だった。
 それで、日曜大変凹むラウンドがあり、帰り際にアコーディアガーデン千葉北でペッチンペッチンとラウンド後の練習に励んでいた。アコーディアのゴルフ場運営には少々思う所もあるものの、この練習場はなかなか素晴らしい。手前が全面芝であり、標的の模擬グリーンも凄く止まりやすい素材で出来ていて、アプローチからアイアンの練習には持ってこいの上、一球11円。都内に戻ってGCイースタンなら18.9円、ロッテ葛西なら22円、スイング碑文谷に至っては39円と入場料入れたら50円玉を打ってる様な「勿体ないお化け」が出没しかねない状況なので、ラウンド後のショットの練習なら絶対千葉である。

  • ポケットキャビティのアイアンの中では、なかなかそそるデザイン。

 当日、隣でキャロウェイの営業の人が試打会みたいなのをやっていた。カスタムメイドを使いたいだけの僕からすると、メーカーの吊しのクラブなんぞ若かりし頃の思い出みたいなもんだと、ほんと意味の無いウエメセ状態だったが、休憩がてら試しに冷やかしてみた。打ってみたのはレガシー・ブラック。上田桃子のスイング連続写真を穴の開く程見て、実際愛せる位にその女子プロの中で群を抜くファッションセンスと、同じく群を抜いて短いおみ足の虜になりながら、当初スイングを作ってきた僕は、やはり今期上田桃子が使うクラブをまず試すべきであろう。最初は、M10という自分のクラブの重量が近いシャフトが挿さった、真ん中位の重さのクラブを振ってみたが、シャフトがぐっと柔らかい以外は、さほど自分のクラブと変わらんなーという感想だった。そこにキャロウェイの営業の人がじっと僕のスイングを見て、これ打って下さいと別のクラブを出してきた。RAZR X FORGEDのダイナミックゴールドS300。キャロウェイジャパンが現在売ってるアイアンの中で一番重く、かつ難しいクラブである。ダイナミックゴールドは何度も打った事があるが、重いという印象しかない。なので、これはオーバースペックだろ?と思って打ってみたが、これが目から鱗、耳から鰓、口から魚ッである。ここの練習場は145ヤードと175ヤードに模擬グリーンがあるのだが、175ヤードの模擬グリーンにこのクラブの7鉄だと届く。しかも弾道が明らかに高い。というかローンチアングルは変わらないが、途中からスピンで上がる弾道になる。自分のアイアンではせいぜい145ヤードのグリーンをオーバーするかしないか位で、かつ弾道は低い。しかも、XXIOみたいなシニア向けの高反発な飛ぶモデルでの出来事ではない。アイアンで飛距離を誇ること程、ゴルフで意味の無い自慢は無いが、ドライバーと比べてアイアンの飛距離が出ない事を少し気に留めていた僕には福音であった。
 原因はよー判らんが、アイアンヘッドは同じロフトの同じ軟鉄鍛造製法なので、差は少なかろうから、シャフトの問題であろう。今のアルディラシャフトを使っていて、先端が全くしならない事から、このチップ剛性は15kgを超えかねない超絶な硬さかもしれず、そうであればボールを上げるとかスピンを掛けるとかいうシャフトの機能に乏しいのでは無いかと薄々感じてはいた。だとすれば、アルディラさんは単なる炭素の棒な一方、ダイナミックゴールドは単なる鉄の棒では無い様である。ただ、アルディラの名誉の為に言えば、ある打ち方をすると惚れ惚れする様な高弾道高スピンが出るのだが、持ち主がヘタれで、スイング改造を繰り返した結果、その"ある打ち方"を思い出せないのである。全般にダメなので無く、許容度が狭いのであろう。
 しかし、人の体型以上に個性に溢れたゴルフのスイングにおいて、吊しのメーカー製なんて、と思っていたが、軽くフィッティング的なものは、今のクラブに特に不満が無くても、常に受けてみるのが得策な様だ。キャロウェイの営業の人に、何故この重いのが合うと思ったのかと聞いた所、ヘッドスピードが落ちないなら、硬さより重さの方がスイングの安定に寄与するし、実際ダイナミックゴールドはきちんと振れるなら、スピンも掛かって簡単なシャフトとの事だった。とあるシングルのアドバイスと、簡単なロジックツリーでの推論が一致した為に、重さより硬さを取った僕のこの1年はどうやら失敗だったのかもしれない。キャロウェイの業績は前期大変悪くて純損失を計上しているが、クラブは手抜きのコストダウンに走らず、こういう地道な営業活動にもコストをかけて、頑張って欲しいものである。
○キャロウェイゴルフ、2011年度業績発表 - GEW -
 そんな訳で、果たしてゴルフクラブの変更によってスコアは変わるのか、というよくある命題について考える帰路となった。こういう時に即買いしなくなったのは、なんて大人になったのだろう!