旅レンズこと高倍率ズーム比較

 旅行が決まるとレンズを買いたくなる。悪癖である。来週からどうやらお休みが貰えそうであり、そうなると、旅程よりもどのカメラとレンズを、どのバッグに入れて持っていくかの方が先に気になりだす。悪癖である。
 昨年冬はスーダンでスタックしていたが、昨年夏には優雅にイタリアとクロアチアなんぞに行きまして、その際はD7000とTAMRONの18-270mmを持って行った。この組み合わせが最悪だった。D7000はミラーショックと呼ばれる、写真撮る際のカメラボディの揺れが大きいのが弱点のモデルであり、TAMRONのこの高倍率レンズは、シャッターを半押しした瞬間から手ぶれ補正が作動して細かい補正を行い、ファインダー像が揺れなくなるタイプだ。そこにミラーショックの一撃が急に来るから、大きな手ぶれに対する補正再始動が間に合わず、超ブレ写真量産なのである。テレ端270mmで4段分補正の手ぶれ補正なら、30分の1秒のシャッターでも、何割かは使える写真が撮れる筈だが、全くと言っていいほど良像を結ばず、結局500分の1とかの手ぶれが関係ない世界の高速シャッターでのみ使えるという悲惨な状況であった。スーダンには、D90とこの18-270mmで行って、然程のストレスは感じなかったから、D7000がクソなのか、レンズが壊れたのかと思ったが、どうやら組み合わせの問題の様であった。

[SONY RX100 28mm f/1.8]
 なので、今回は手ぶれ補正方式の差で、D7000との組み合わせでも余り問題を聞かない手持ちのニコン純正の18-200mmでも持っていくかと思っていたが、純正品を実際D7000に付けてみると、やはり重い。TAMRONが良かったのは、テレ端が70mm更に望遠に伸びているのに、純正品より100g以上軽い所である。それで何とかならんかのうとウジウジしていたら、TAMRONと同じサードパーティSIGMAから18-250mmという似たようなスペックのレンズがリニューアルされてるのに気が付いた。SIGMAのレンズは余り軽いイメージは無かったが、こいつは先行したTAMRONのを研究したのか、ほぼ同じ重量である。しかも正式名称は、「18-250mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM」という一眼レフに慣れない人から見たら冗談みたいな名前だが、"MACRO"が入っている事からして、被写体に寄れるレンズの様だ。面白い。即決だ。実に悪癖である。

室内解像度テスト

 そんな訳で手元に決してセクシーとは言えない高倍率ズームが3本もあるという悪夢の様な状況となり、少なくとも1本、出来れば2本を売却すべきであろうと、色々とテストを試みた。まずは、いつもの室内新聞紙撮りによる、解像度テストである。開放とf/8.0でそれぞれ左上隅の200px四方を切りだした。ISO100固定、三脚・スピードライト・コントラストAF使用である。左からSIGMA-TAMRON-NIKONとなっている。

○広角18mm(換算27mm)

ドンジリを引いているのが真ん中のTAMRONなのは明らかだ。開放ではややNIKON有利、絞ったらややSIGMA有利だろうか。

○望遠50mm(換算75mm)

開放でも絞っても左のSIGMA圧勝である。僕は35mm換算で50-100mm辺りが好きな焦点距離なので、ニコンの高倍率はここの四隅が弱いのがいつも気になった。TAMRONのは全く像を結んでいない。

○望遠100mm(換算150mm)

18mmと同じく、ドンジリは決まりで、開放はNIKON、絞ったらSIGMAだろう。

○テレ端(換算300-405mm)

こちらは開いてもNIKON、絞ってもNIKONだ。僅差でSIGMA、矢張りラストはTAMRONだ。
 驚いた事に、TAMRONが全敗である。ブレてるのではない。手ぶれ補正はONにしているが、ミラーショックを避ける為に静音シャッターのQモードにして撮影しており、中心部はそれなりの像を結んでいる。どうやら四隅が根本的に弱いレンズの様だ。これは投げ捨てるべきだ。NIKONSIGMAは甲乙付け難い。SIGMAのレンズは開放は緩いが、絞ったらしっかりとした像を結ぶ。後は中望遠重視かテレ端重視か。旅レンズと考えると、風景写真が増えるから、比較的絞って撮る事が多い一方で、中望遠かテレ端かと言われると、テレ端が割に多い気もする。なかなかこれは迷い所である。

望遠テスト

 このテレ端がNIKONは200mm、SIGMAは250mm、TAMRONは270mmと、差が有るのだが、これが実際どれ位かと言うと、こんな感じである。

 NIKONの写真に対して、他のレンズのテレ端で取れた範囲を赤線でプロットした。無限遠だとまた結果は違うかもしれないが、SIGMATAMRONのレンズには、そこそこ望遠が長いメリットがありそうだ。

最短撮影距離テスト

 最後に、SIGMAのレンズはMACROが銘打たれてるけど、実際どれ位寄れるのかのテストである。

SIGMA 18-250mm


TAMRON 18-270mm


○NIKON 18-200mm

 全て位相差AFで撮っているが、どのレンズも一発でジャスピンなのは寿ぐべきことである。そして、やはりSIGMAは結構寄れる。一方、NIKONはかなり寄れないレンズである。TAMRONSIGMAの差は、誤差という人も居れば、寄りで14cmも最短撮影距離が違うのはボケ量の点で貴重と思う人も居るだろう。

雑感

 軽いというキャラがかぶって、しかも画質が全般に悪いTAMRONは流石に即売りかなと。NIKON純正の方は迷う所だが、SIGMAのがサードパーティ製にしてはピンがしっかりしているし、純正と比べると、軽くて寄れて、多少望遠に強いという特徴は大きいので売却に傾いている。純正の利点は、開放が割に使えるという事と、カメラ内歪み補正に対応している事位か。ただ、絞り開放で撮りたい時は、暗い時か、ボカしたい時で、どちらにせよ、余り四隅の画質に神経質になる局面では無い気がする。また、カメラ内歪み補正は、旅先でLightroom走らす気力は余り無いので、便利は便利だが、直線が気になる様な被写体はどうせ広角で撮るので、多分持っていくNIKON AF-S 10-24mm f/3.5-4.5Gで間に合う気がしなくも無い。そんな訳で、2本ドナドナというのが現在の雰囲気だ。うまく売れればSIGMAの購入代金位は回収できてしまうのが、一眼レフのレンズの流動性と、それに甘えたレンズ即買い無間地獄の恐ろしさである。
 あと一つ、このSIGMAのレンズ、実は一回交換している。一発目は明らかに左が片ボケしていて我慢の限界を超えており、買ったビックカメラでも、こりゃひどいとなって、交換してもらった。交換前のも片ボケ見つけた以上、当然テストしているが、ピントはこちらもジャスピンだった。ただ、左側でライブビュウでコントラストAF合わせてるのに、合焦点の像すら流れまくりであった。価格.com最安店と比べると、1割位ビックカメラの方が高かったが、サードパーティ製は不具合が出る確率が高いので、そういう時に気持ち良く交換してもらえる安心料含めて、レンズは量販店で買っている。価格.comの最安店は、片ボケやピンズレ程度では、メーカー調整でよろしく、と言われる時が多いし、交換を受けて貰っても時間がかかる。心と時間の余裕と、交渉の武闘力を有するものだけが臨める博打の舞台である。

作例めいたもの

Mailed
[NIKON D7000 + SIGMA 18-250mm MACRO OS]
Early Autumn
[NIKON D7000 + SIGMA 18-250mm MACRO OS]
Wall
[NIKON D7000 + SIGMA 18-250mm MACRO OS]
Menu
[NIKON D7000 + SIGMA 18-250mm MACRO OS]
FENCE
[NIKON D7000 + SIGMA 18-250mm MACRO OS]
Triangle
[NIKON D7000 + SIGMA 18-250mm MACRO OS]
Tokaido Historic Road
[NIKON D7000 + SIGMA 18-250mm MACRO OS]