尾崎豊という亡霊が、日本を歩き回っている。

懐かしいタイプの事件である。

○歌詞に触発され校舎の窓ガラス53枚割る 少年2人逮捕、神奈川・小田原

 中学校に侵入して窓ガラス53枚を割ったとして、神奈川県警少年捜査課などは13日、器物損壊と建造物侵入の容疑で大工の少年と県立高校1年の少年=いずれも(15)、同県小田原市=を逮捕した。 逮捕容疑は3月8日午後5時半から翌9日午前2時25分ごろまでのいずれかの時間に、同市東町の市立白鴎中に侵入し、窓ガラス53枚(約112万円相当)を割ったとしている。

(中略)

 小田原市内の小中学校では同様の事件が相次いでおり、大工の少年は「他の学校の事件に感化された。当時聴いていた歌の歌詞に同様の内容があり、触発された」と供述している。
■出典:MSN産経ニュース

間違いなく尾崎豊に触発されたんだろうが、リリースから四半世紀を超えても、少年に(悪)影響を与え続ける尾崎さん、凄すぎである。一方で、こちとらと言えば、尾崎豊もそうだし、その頃徐々に市民権を得つつあったヒップホップとかに、若い頃から全然共感できていない。何故か。話は長くなる。
 若い頃、そう、中学とかの時代は、まだゲームの初期ステージである。この段階では、「みりょく」「すばやさ」「かしこさ」みたいな、補助パラメータが余り意味を持たず、「他人の個性を認める」「仕事を教える」「夜景の見えるディナー」とかの有用な魔法も覚えていないので、基本パワータイプが男子を支配し、女子にも人気。なぜ女子にも人気かと言えば、そもそもやんちゃが格好良く見えるのに加え、女子は敵が同じ女子の場合に限って、特殊能力として、彼氏を召喚獣として呼び出して戦わせる力を持っているからである。せっかく召喚するなら、中学くらいでは、男子間で優位にある「ちから」パラメータ一辺倒に仕上げたパワータイプが重宝される。
 という訳で、校舎の窓ガラス割れるパワータイプは強者なのである。それも、圧倒的な。だから僕には、尾崎豊アウトロー気取りつつも、実際は強者を代弁する歌に感じられた。自分とは違う強者が気取った歌を好きになれる筈が無い。少なくとも、周りや世間が良いというから、この歌は良い、という風には思えないタイプの人間にとっては。
 もし、当時に、「上辺はパワータイプに媚びてしまう自分を嫌いつつ、自分を確立しようとする歌」「大人しいマジョリティより、声のでかいパワータイプを気にする先生にこっち向いて欲しいけど、先生の苦労もその後判った歌」とかを切々と語る曲が有ったら、多分僕は共感していただろう。しかし、この手の歌を世に余り見ない所からして、商業的には成立しないのかしらん。あれ、実はこちらがマイノリティ・・・?