大量出血。 日本 2-4 ウルグアイ

攻撃陣は揃ってきた。柿谷が前田であっても、前の4人だけで攻撃が出来る代表は史上初めてだ。守備がダメダメなのはコンフェデから変わってないけど、ある程度は仕方ない。なぜなら、ザックジャパンのサッカーは、ライン高めにしてリスク覚悟で攻めるサッカーだからだ。相手に合わせた弱者のサッカーで無く、列強と互角に戦える前提を置いて、自分のサッカーをしにいくチームがザックジャパンだ。これも代表史上初めてかと思ったが、そういえば、ろくに守備的MFも置かずにポゼッションを標榜する超強気のジーコジャパンというのが有ったのでした。だからある程度点を取られるのは仕方ない。そして、そもそもスアレス相手に個で止めれるDFは、プレミアでもヴァンサン・コンパニダビド・ルイス位では無いかな。30-50億円くらいの値札のプレイヤーだ。

戦術より選手が攻撃的

問題なのはある程度を超えて点を取られている事であって、吉田のポカが多いという以前に、7年前から言い続けてるけど、日本は守備的な選手を配さなすぎる。コンフェデを制したブラジル代表ですら、ダビド・ルイスにチアゴ・シルバの鉄壁のセンターバックの前のセントラルMF(ボランチ)には、守備的なルイス・グスタボにバランス型のパウリーニョをもってきた。パウリーニョはクリエイティブなロングパスを出せるタイプじゃないけど、守備もドリブルでの攻め上がりも得意。日本代表で一番近いのは歴史的には稲本、今なら長谷部かな。ブラジル代表のセントラルMFを日本代表で表現するなら、長谷部−細貝の様な感じ。これと比べると遠藤−長谷部という日本のセントラルMFが如何に攻撃的か分ると思う。戦術が攻撃的な以上に、選手選定が攻撃的すぎるのだ。遠藤みたいなロングパスを遠くから刺せるタイプをセントラルMFに配するのは、正直このポジションのパイオニアであるピルロを生んだイタリア人のロマンが過ぎる様に感じる。ピルロは機能したけど、ピルロの後ろが鉄壁のネスタとスタムだったから実現した訳で、吉田と今野というセンターバックで行う選択ではないと僕は思う。

優先順位

フィジカルがさほど強くなく、スピードが必ずしも速い訳ではない日本代表の選手を前提とすれば、リアクションサッカー目指すより、ポゼッションを保ち、ラインを上げて密度を高くすることと、ショートパスを多用することでフィジカルコンタクトの不利を補う今のサッカーは間違ってはいないと思う。ただ、それがセンターバックセントラルMFの人選ミスで、点取られ過ぎたり、ライン下がり気味になると完全にスポイルされる。これは優先順位の問題で、遠藤のパスの魅力を取るか、目指すサッカーの戦術を取るか、という話で、これまでずっと両立を目指してきたけど、列強相手には両立しえない事が何度も再現された訳で、ここは遠藤を守備的な選手に入れ替えて、目指すサッカー実現を優先すべきだろう。この個人と戦術の相克に加え、もう一つ要因として考えるべきは、遠藤残した時に、本田が浮くこと。遠藤残した上で守備を強化するなら、岡田システムで4-3-3にして、バックラインは深く、闘莉王にフィード出来る森重、その前にやっぱりアンカーで阿部を置いて、前目のインサイドハーフに遠藤・長谷部。ボール取った後、遠藤か阿部のパス、あるいはサイドが長い距離を攻めあがって、前の3人にボールを渡してゴールを目指す。そんなカウンター気味のサッカーが一番実績もあり自然だと思うが、その時の3トップに本田の居場所が無い。フィジカル強くてボールを失わず、ショートパスで決定機が作れる一方で、右サイドから斜めに入ってきて左足でシュート、みたいなロッベン的プレーは出来ない本田は、典型的なトップ下の選手。3トップは1トップ2ウィングになるから、岡田ジャパンの様に本職でない1トップをやって窮屈そうにプレーさせるか、或いは香川−[柿谷/前田]−本田と並んでウィングをやるかだけど、スピードがそんなに無い本田はウィング向きの選手ではない。これは、ザックジャパンが3-4-3を採用した時に、本田がサイド行って上手くボール回った試しが無いので、実証済でもある。では一個ポジション下げてインサイドハーフか。そうしたら遠藤が要らなくなる。つまり、遠藤をチーム作りの中核に据えたシステムで守備強化しようとすると、本田がスポイルされるし、本田をチーム作りの中核に据えたシステムで守備強化しようとすると、遠藤が使えなくなるのである。
 遠藤か本田か。これはさすがに本田を選ぶべきなのは自明だろう。そして、本田が最も生きるトップ下のポジションを作るには、優秀なセンターフォワードに乏しい日本は4-2-3-1以外の選択肢が無い訳で、それなら「2」の部分は守備的MFを配して、アクシスをがっちり固めておく、ってのが戦術的にも人的にも優先順位に適っている。ジダンが居た時分のフランス代表は、トップ下中のトップ下であるジダンの為に4-2-3-1で戦った訳だが(ジダンが欠場した時は、トップ下が無い4-2-2-2だった)、ジダンの後ろのセントラルMFビエラマケレレという、世界屈指の守備的MFだったのである。

最小限の修正

上記を踏まえると、基本戦術はいじらず、遠藤out・細貝in、吉田out・森重in位で、失点はそこそこ、おそらく3割位は減る様に思われる。或いは、センターバックに森重と栗原を並べ、今野−長谷部みたいなセントラルMFにするか。吉田は、、吉田以上のDFが日本に居ないというのがサカオタの絶望なのだが、ここまでポカが多いと交代しないと示しが付かない。そこんとこ、今野と森重のセンターバックなら、FC東京で組んでたのでコンビネーション上の問題も無いだろう。遠藤抜けるとフリーキックやPKのオプションは減るし、香川との連携が悪くなるが、これは優先順位の問題で已むを得まい。以上、新幹線で移動中につき、twitterのTLでしか試合の動きが分らなかった人のエアレビューでした。

追記

後日、ネットでこんなスタッツを拾った。各選手の平均的なポジションだけど、なかなか興味深い。柿谷と本田のポジションがほぼかぶっているのと、日本の前の4人は密集しているのがよく判る。柿谷はウルグアイの9番スアレスみたいにでんと前に構えるんじゃなくて、少し低めのポジションで流動的にプレーするのを好むのだろう。密集度が高いから中盤の推進力として遠藤のパスに頼らざるを得ない構造な気がする。そしてディフェンスラインが浅い。2006年W杯のドイツ代表の様だ。浅いラインそのものが問題ってより、ライン浅くて更に後ろの選手の守備力が高くない、って事が問題なんだよな。そして一人やたらポジションが深いのは伊野波。一人でライン下げる悪癖がよく出ている。伊野波は足はそこそこ速いので、裏取られがちな攻撃的サッカーに一見向いてそうなんだけど、こういう悪癖が出がちなので、ザックジャパンの目指すサッカーへのフィットはイマイチ。深いラインなら闘莉王の方が良いだろう。