iPhone5s カメラの画質チェック

予約して1か月でやっとiPhone5sのゴールド64GBが来て、1週間くらい使ってみたけど、とにかくカメラが進歩し過ぎてて腰抜かしてる。指紋センサーも確かにいいんだけどさ、一見変化がなさそうなカメラにもっとみんな括目すべきだ。僕はぱっと撮ってみて、そのしっとりした諧調に驚き、コンデジに並んだかと思った。正直コンデジでも20倍とか30倍とかの高倍率モデルは画質イマイチだから、もしかしたら上回ってるかもしれない。
ハイファイのアンプが基本重ければ重いほど音が良くなるように、画質は基本大きなイメージセンサーを積めば積むほど良くなるものだ。普及モデルのコンデジのセンサーサイズは概ね1/2.3型だが、iPhone5sのセンサーサイズは1/3型で、コンデジの方が面積約1.5倍と、まだ大きい。だが、iPhone5sは、その分800万画素と画素数が抑えられている。一方のコンデジは、今や1600万画素の攻防だから、一画素辺りのセンサーサイズで比較すると、コンデジiPhone5sの1.5倍のセンサーサイズに2倍の画素数を詰め込んでいるので、実はiPhone5sの方が有利だ。コンデジは画素を詰め込み過ぎて、スマホに比べると大きなセンサーサイズを活かせていないんだよね。また、iPhone5sはレンズがズームの無い単焦点であり、この点も複雑な光学的機構が無い分、画質には有利だ。基本的な条件だけ見ると、かなりiPhone5sに有利そうだ。これは比較してどっちがイイのか、iPhone5と比べてほんとに良くなったか、検証してみようじゃないか。
 画質は主観的なものだけど、その中で比較的客観的な指標をどれか取り上げるなら、解像度とノイズ処理、並びにダイナミックレンジだろう。その3つの中で、解像度とノイズ処理の上手さを、一番わかりやすく比較するには、新聞紙を撮るのがいい。これなら誰だって出来るし、一目見れば違いも分かる。そう、紙の新聞取っていればね。下記の絵、上段の左右がiPhone5SiPhone5だが、ぱっと見て違いが判らないだろうか?

iPhone5s VS XPERIA VS P&S Camera

  • 横に貼った新聞紙が丁度ファインダに収まる位で撮った画像を等倍切り出し。

左上のiPhone5sがその右隣のiPhone5と比べて、段違いに細かい文字が解像しているのが分るだろうか。左下のXPERIA SXよりもかなりいい。そして、右下の1/2.3型の小型センサー搭載の高倍率コンデジ代表のCanon SX280HSと比べても遜色ない。SX280HSの方が線はくっきり出ているが、絵中で一番細かい文字である、右上の「nikkei4946」の文字を見ると、解像感は互角である。線のくっきりさは画像処理のポリシーの違いだろう。Canonは昔から輪郭強調を強めにかけるので、線は太くなる傾向にある。そして、携帯のカメラの画質は、ここ10年くらい改善した改善したと謳いながらも、なかなかコンデジには敵ってなかったが、ついにマニアックな画質追求モデルじゃなく、iPhoneみたいな量販モデルでもコンデジの域に達したようだ。

iPhone5s VS DSLR camera


では、一眼レフや大型センサー機と比べてどうだろうかと思って、フルサイズのD800、APS-CのD7000、大型の1インチセンサー積んだRX100、1/2.3型の小型センサーながら低倍率で画質は良いとされたP300も同じシチュエーションで撮ってみた。これは綺麗にセンサーサイズの順に並んでいて、3600万画素のドット バイ ドットという不利な条件でもD800が一番解像している。以下D7000→RX100→P300である。D7000とRX100は、右上の購買の「購」の字の潰れ具合からして大きな差は無い。僕は余り広角撮らないので、D7000に付ける換算24-28m辺りの純正レンズはこの10-24mmなんていう、画質テストには一般的では無いレンズだったので、レンズの差かもしれない。プライムズーム付けたら少し結果は変わるかな。P300はちょっと厳しい画質だ。2-3年前の機種とはいえ、カスタム露出可能な高級機である。それが比較すると、iPhone5sよりも解像感が低いのだ。P300はスローモーション動画が撮れるので、普段撮りをしつつ、ゴルフの練習にも使っていた。その前に同じ用途で使ってたのが、カシオのEX-FC100なのだが、こいつは余りに静止画の画質が悪くて我慢がならずにP300に買い換えたのだった。そう考えると、EX-FC100辺りは画質面でiPhone5XPERIA SXの時点で既に追いつかれていたかもしれない。

resolution! ノートに書き留めた言葉。

これは解像度とノイズ処理だけのテストだが、iPhone5はまだ「ケータイカメラ」の領域だったのに対し、5Sは明らかに「カメラ」の領域に入っている。この解像感があれば、風景を撮れば細かい木々の葉っぱがざわつく感じがそこそこ出るだろうし、ポートレートを撮れば髪やニットの縫い目が潰れきらず、立体感やぬくもりを描写できるだろう。iPhone5では、例えばゴルフ場の風景を撮ると、細かい芝が解像しないので、すごく平板なプラスチックの板みたいな緑の風景になりがちだったが、5Sなら相当立体感のある生き物らしい感じが撮れるんじゃなかろうか。楽しみだ。しかし本来、画質には有利な単焦点なんだからこれ位やって貰わないと困るのだ。よく考えれば、いま人類は何十年かぶりに、写真を撮るという行為をズームレンズじゃなくて、スマホの形で単焦点レンズに回帰して行っている。それが画質という形でメリットになる最初のカメラが5Sである気がする。
そして追いつかれた方のコンデジの立場はきつい。解像度と並んで画質を構成する重要な要素であるダイナミックレンジは今回テストしていないが、iPhone5sには優秀なHDRがあるので、もうここも余り問題にならないかもしれない。そうなるとコンデジのアドバンテージはズームと、AFの速さ、接写マクロ、大型センサー機では画質、あと機能作りこめば防水やカスタム露出。1/2.3型の小型センサー機は、ズームとAFと接写と防水位しかアピールポイントが無いので、機能分化が進みマスからニッチ商品と化していく流れは止まらないだろう。一方の1/1.7型位のセンサーを積んだ機種は、もともと拘り派向けのニッチ商品だから、1/2.3型機程の影響は無いだろうし、iPhone5sと比べて2.5倍位のセンサーサイズなので、さすがに画質面では優位は失われないだろう。が、それを逐一新聞紙撮って理解する消費者は少数派だろうから、レトロな一眼レフ風の外見によって、画質を消費者の理解しやすい形でマーケティングする機種で埋め尽くされるんじゃないかな。この、カメラを画質面で消費者にアピールしたい時のアイコンが、依然として何十年も前からある一眼レフだったりするのが、機能面では整理できない一眼レフの強さだと僕は思う。なんで、あんな重いものを使うのか。みながいいと思っているから、みたいな。

5Sの作例、的な。

ice
Okura meat
first oyster

  • ドット バイ ドットだと裏面照射センサーっぽい感じは否めないのだが、それでも解像しているから、この大きさで牡蠣の殻のゴツゴツした感じがよく出ている。

River to the West