とある資金調達

 そのとある地方を発って、今度は別の地方に行って、投資先企業の借入調達に奔走する。3つの地銀を回って、交渉を行う事となった。
 東京ベースのメガバンクとビジネスライクな付き合いをするのも、勝手知った仲で悪くないのだが、現在担当している再生中の地場の企業の様に、そもそも銀行の支援を必要としているケースでは、そのビジネスライクさが企業の息の根を止める一打に成り得る。
 一方、地銀は、一般に取引のスピード感は全然無く、信用を得られないと取引が出来ない点で、コミュニケーションコストが非常に高いのだが、もともと銀行員の僕の感覚では、一度取引が開始されれば、都銀よりもずっと長期的な観点に立っての付き合いが前提であり、信頼に足る相手と思える。また、地域においては、地銀というのは大きな存在で、地元で一番の地銀との付き合いが信用を生む。これが疎かに出来ない価値である。
 このプロジェクトでは、旧債権団への挨拶・交渉で、大はメガバンクから小は信連、信金まで行脚し、特に小の方は初めてコンタクトする業態も多く、その特有の考え方、行動様式は非常に勉強になった。日本はオーバーバンクと言われるが、こういった多様な金融機関が存在する事自体が、日本の企業活動の多様性を支えるインフラの様に思える。メガバンクが集約され、金融庁の指導の下、行動様式が一様になりつつある今、こういった異質な金融機関が存在する事の意義は非常に大きい。