すき家のカレー
すき家って美味しくないと思ってた。牛丼なら吉野家やなか卯の方が好きだ。すき家の牛丼は、僕には味付けが濃すぎる。タクシーに乗った時に必ず流れる、b→dashの動画広告並みの濃さである。そもそも、b→dashとはどういう意味を込めた名前なのか。スーパーマリオのBダッシュ並みのスピードで、タクシー乗ったら0.3秒で動画を消す僕には、良く分からないが、とにかく味付けが濃ければ濃いほど良いというものでは牛丼は無いと、僕は信じている。
この前、会議にデスクワークが続いて、23時までご飯が食べられなかった時、僕はカレーを華麗に食べたかった。だが、夜遅くまでやっている本格的なカレー屋というのは実は余り多くない。夜遅い店には、「飲み要素」か「シメ要素」が必要なのだが、ナンを肴にチビチビと吟醸酒を飲むとか、大分他で出来上がった後にバナナの葉にタミルナードゥ・ミールスでシメる、みたいなダイバーシティに、まだ日本の飲食文化は至っていない。なお、酒に合わない外食カテゴリーは基本個食要素が強くなるが、考えてみると、みんなでワイワイとカレーを食べるという事は、確かにランチ以外には想像しにくいものである。
そんな訳で、23時からカレーを食べられる所が、西麻布のオーセンティックなバー、ウォッカトニック以外には思いつかなかったし、西麻布でオーセンティックな気分にならない日でもあったので、僕は目の前にあったすき家に余り期待しないで入ったのだが、これが、なんと、カレー美味しかったのである。食べた牛あいがけカレーは、スパイスが効いた中辛のサラサラ系で、本格派だった。欧風カレーは辛口サラサラ系が好きな僕にはストライク。そして並盛690円。なんだかんだと1,200円位になってしまうCoCo壱のバリューとは何か、はたと考え込んでしまった。
すき家が690円でこのレベルを全国1,900店でデリバリーしてくれるなら、それより高い専業カレー屋のバリューは何なのか。僕たちはカレーでなく、専業カレー屋という記号を食べているのか。ところで、記号性に乏しい日乃屋カレーは全面的に負けていないか。そんな思いでカレーを不味くしながら、僕は薄くて味のしないすき家のお茶を喉に流し込んだ。