pointage

bohemian_style2006-02-05



麻布十番のパン屋さんと言えば、ポワンタージュである。家の裏だったりするのだが、チェコとかフランスとか、パンの旨い国で出しても恥ずかしくない、とても美味しいパンである。広尾や西梅田ブーランジェリー=ブルディガラ、丸の内や六本木一丁目のポール、白金のメゾンカイザー、等などここ数年で素晴らしいブーランジェリーが東京にも増えたが、ここもまたそれらに勝るとも劣らない。


実家が旅館の僕は、とにかくご飯派で、パンは大嫌いだった。特に給食のパンは殆ど拷問に等しく、毎日絶命寸前まで痛めつけられていたのだが、小学2年生から、減反してるのに一方で子供にパン食わすとは何事と、政策が180度変わってご飯の給食が増えたので、ようやく一命をとりとめたのである。危ないところだった。その後もずっとパン嫌いは続き、社会人になってようやくサンドイッチは食べれる様になったのだが、中にジューシーな具を挟まないパンはずっと大人になっても苦手であり続けた。


それを克服したのは、28歳、タンザニアからの帰りに立ち寄ったUAEでの出来事であった。ラス・アル・ハイマなるオマーン国境に近い辺境で、宿の前で食べたホブスと言われるアラビアのパンの焼きたてを食べた瞬間の事である。その時、初めて6倍体小麦、いわゆるパン小麦の甘さ、旨さを僕の体は理解したのだ。美味しいお米の思わず頬が緩む様な甘さは、日本人なら誰しもが感じられる幸せの一つだが、美味しい小麦も同じく甘かったのである。それ以降は、普通にパンを食べても、その美味しさを感じられる様になっている。ラス・アル・ハイマはうっかりするとトイレに便座が無かったりする油断のならぬ埃っぽい街だが、僕の人生の豊かさには相当の貢献をした。


話が経度にして100度位ずれたが、西半球まで行かなくて幸いだった。西半球まで話が飛んだら、ギニアのフランスパンの話をせねばなるまいが、それはとても長い話なので、今度に譲ることにする。とにかく、ポワンタージュは美味しいパンを提供する、普段使いの素敵なお店である。この店がある事が、その街に住む魅力度をすごく高めてくれる、そんな店だ。前々から麻布十番に定住するかもなと思い出しているが、それにはこのお店の存在も一役買っている気がする。今日のリュスティック マロングラッセも幸せになれる一品だった。