GM追加リストラ発表

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米GMが配当半減・追加リストラで13年ぶり、報酬カットも

 【ニューヨーク=田中昭彦】米ゼネラル・モーターズ(GM)は7日、減配や経営陣の報酬削減などを盛り込んだ追加リストラ策を発表した。配当金を半減して年間5億6500万ドル(約660億円)の経費削減につなげるほか、ホワイトカラーの退職者向け医療費に必要な現金支出を今後5年間で2億ドル削減する。経営陣や社外取締役の報酬も最大50%減らす。工場閉鎖や組合員の時間給削減に加え、投資家や経営陣にも負担を強いることで、会社を挙げてリストラを加速する。

 GMは昨年11月、完成車工場など12拠点の閉鎖や時間給労働者の3万人の削減で2006年末までに70億ドルの現金支出の削減を見込むリストラ策を打ち出した。追加リストラ策による現金支出の削減効果は明らかではないが、配当削減などにより経費削減の大幅な積み増しを狙う。

 減配は1992年以来、約13年ぶり。3月10日支払い分の四半期配当から、これまでの1株0.50ドルを0.25ドルに半減する。 (01:07)

米GMが配当半減・追加リストラで13年ぶり、報酬カットも

アメリカの巨人が苦しんでいる。なにやら詩的なコメントで始めてしまったが、これはサンフランシスコ・ジャイアンツの記事では無いことを最初に断っておく。
話はGMのリストラ策である。減配がリストラ施策に入る事が初耳なので、思わず突っ込んでみる次第である。減配以外の施策は、要は手を付けられるレガシーコストとマネジメントコンペンセーションを削ったという事だが、総額7.65億ドルのコストカットというのは、いかにも小さい。昨年11月に発表した9工場の閉鎖、3万人の労働者の削減、購買先の変更を主な柱とする総額70億ドルのコストカットの効果と足し算するにしても、GMは1,920億ドル(22.8兆円)ものターンオーバーの企業なのである。GMの自動車事業は、FY05では76.5億ドルの赤字らしいが、それを70+7.65億ドルと丁度埋める様に辻褄を合わせたという印象だ。

詳しくプレスリリースを読んだ訳では無いが、

  • 工場閉鎖
  • 労働者の削減
  • 購買コストカット
  • 一部退職者の医療費カット
  • 経営者報酬のカット
  • 減配

という施策は、現状のトップラインを前提に削れるコストを削ったという印象である。Shrink to grow の Shrink だけという感じだが、ワゴナー会長の「これで現金収支が改善する」というコメントをそれを裏付けている。
もちろん、コストを削って悪いことは無いのだが、そもそも赤字という結果の前に、シェアがどんどん低下しているというのが根本的な課題である。コスト削れば赤字幅は減るだろうが、原因を解決しない限り、また早晩リストラを迫られるであろう。

また、更にニュースを調べると、こんなのもあった。

GM、新車の9割を平均15万円値下げ

 【デトロイト=田中昭彦】ゼネラル・モーターズ(GM)は10日、開幕中の北米国際自動車ショーで新車のメーカー希望小売価格を11日から平均1300ドル(約15万円)引き下げると発表した。昨夏に続く値下げで、北米で販売する新車の約9割に対象を広げる。不定期に実施し透明度が低いと指摘されていた価格戦略を見直し、顧客の購買意欲を刺激する。

GM、新車の9割を平均15万円値下げ

この記事だけだと全容は不明だが、値引額が全て持ち出しだとすると、自動車価格が平均して一台あたり30,000ドルとして、価格の4-5%相当である。自動車産業の営業利益はグローバルに大体5-10%の間なので、トップラインを4-5%落とすという施策の損益分岐点はベラボウに高い事が直感的に判る。これは是非勝算の根拠を聞きたいものである。
売上が1,920億ドルの会社が5%還元したら、96億ドル、1兆円以上でっせ。96億ドル値引きして、77.65億ドルコストカットする。差引約20億ドルの赤字は、値引きによる需要増によって賄う。営業利益率が5-10%だとすると、値引き分20億ドルを賄える売上増分は200-400億ドル。つまり10-20%は販売が値引きによって増えないとペイしないと言う事だ。それでようやく施策分の増減がチャラになった所で、まだ本体のそもそもの赤字76.5億ドルは手が付いていない。

もちろん、需要増が10-20%に止まらない可能性もあるし、販売が増えれば、その分限界利益は増えるので、固定費原単位は下がるのだが、その効果だけで、売上の4%にも上る赤字をカバーできるかと言われるとハードルは高そうである。

この施策を見ると、シェアが低下している原因は、価格が高いからであり、値引きによってそれが解決できるというのが、シェア低下に対するGMからの正式回答の様だ。もちろん、アメリカ人が世界で最も価格選好が強い人々なのは否定しないし、この決断の前には、コンサルティングファームがひたすら感度分析を行っただろうし、このカテゴリーで何ドル下げれば競合を検討しているグループの何%がGMにスイッチするかとか、コンスーマーサーベイも山ほどやったのはアメリカ人の信頼すべき合理主義から想像に難くないのだが、どうも釈然としないのは、知る限り値引きで蘇った自動車メーカーは無いという過去のケースが語る真実が有るからだろう。

アメリカの資本市場は厳しいし、株主の短期志向からすると、こういう即効性のある施策に傾くのは理解はできる。ただ、マツダを見ても、かつてのルノーを見ても、傾いた企業は魅力ある新車をもってしか復活しないのだ。両極端を比較すると、5%の値引きで20%売上増やします、と言われるより、今後の5年間で20種類新車出します、と言われた方が遥かにベットする気を起こさせる。1兆円の値引き原資と比較するとトヨタのR&D投資の7,700億なんて「屁」みたいなものだし、値引きと新車開発という中短期の施策のベストミクスみたいなものをきちんと投資というリソースの配分で提示されれば、なるほどねと納得できるストーリーになると思われる。

さて、キャディラック・セヴィルは好きな車の一つだが、この調子では暫くはGM地盤沈下と、日本勢・韓国勢の躍進が続きそうな雰囲気である。僕が偉くなって、キャディラックが似合う様になるまで、企業体として存続してと思わず願う次第である。(大きなお世話だが)