SONY 一眼レフ α

26日からあちこちの掲示板でSONYの新しい一眼レフαのスペックが投稿されている。
知っての通り、コニカミノルタはカメラ事業から撤退し、その一部資産と技術者をSONYが買い取ってデジタル一眼レフに参入することになっている。SONYのウェブサイトには新ブランドはαを引き継ぎ、6月発表ですと麗々しく記されている。
僕は、デジタル一眼レフこそNIKONを買ったが、銀塩時代はミノルタだった。カメラに興味が無い頃からミノルタの世界初のAF一眼レフであるα-7000の事は知っていたし、α-7000の発売から15年の余を経て初めて買ったカメラは初代α-sweetだった。
ミノルタの絵作りは、NIKONの様にカリっとシャープでは無いが、非常に深い色合いが出て、解像度より深みを求める僕は結構好きだった。特にフジのフィルムと相性が良い気がしていて、コーカサス三国を旅した時にミノルタ+フジで撮った写真は、彼の地の水と緑を生き生きと描写してくれていて、特に気に入っている。
なので、NIKONに変わった今もついついミノルタを引き継いだSONYの動向は気になっている次第である。

さて、投稿されているスペックはこんなものである。

モデル名  :DSLR A-100
使用レンズ :ミノルタ時代の非Gレンズ相当、Gレンズ、ツァイスレンズの三種類
撮像素子  :CCD(APS-C 23.6" x 15.8")
有効画素数 :1,020万
撮像感度  :最大ISO1600
AF検出素子 :CCDラインセンサー(中央クロス9エリア8ライン)
AE測光方式 :TTL40分割測光(αSweetと7Dでは14分割)
シャッター :最速1/4000秒
ファインダー:ペンタプリズム ルーフミラー式 視野率95% 倍率0.83倍
連続撮影  :秒3コマ、RAW最大6コマ、RAW+JPEG最大3コマ
手ぶれ補正 :Super Steady Shot シャッタースピードで2〜3.5段の効果(従来は2〜3段)
画像処理  :Bionz
電源    :バッテリー名称 NP-fm55h
サイズ   :5.2" x 3.7" x 2.8"(インチ)αSweetとほぼ同じサイズ
ダストリダクション機能搭載
ダイナミックレンジ最適化機能搭載
ライブビューはない
メーカー希望小売価格:1,200カナダドル(約12万円)

これがいやにリアルだ。
(何だよバッテリ名称って。これリークして萌えるバッテリマニアが結構居たりするのだろうか)
nikkei.netのインタビューでも最初に出るのは普及機だとSONYの人が語っていたので、妥当な線だろう。手ぶれ補正とダストリダクションが両方載っているのは便利だ。この辺は極めて家電的な「全部入り」発想を感じる。オーディオにしても、カメラにしても、クラシックでメカニカルなプロダクツは厳密なヒエラルキーの基に商品ラインアップを構築し、高価になればなるほど重く高機能になっていくが、家電の発想なら明確に差別化できるキーとなる機能は全てのラインに搭載して、そこを武器にマーケティングを行っていくのは極めて一般的だ。カメラだからといって、画質をアピールしても、買う前に画質なんぞは判らないし、SONYだからといってCanonNIKONより画質が良いと思う人も少ないだろう。であれば、PanasonicLUMIXで行った手ブレ補正・広角みたいな判り易い価値を前面に打ち出すのがマーケティング的には正解の様に思う。Panasonicの近年のコンデジでの成功は、判り易くかつ明確に差別化された消費者価値をAyuというこれまた明確なアイコンでメッセージングしたという、マーケティング的には極めてオーソドックスな手法を愚直に行ったからである。その意味では、新画像処理エンジンDIGIC搭載、とか塩化リゾチウム配合並に判り難い広告を打っているCanonも、NIKONと比べるとマーケティングオリエンティッドと言われながらも、宣伝の洗練度は家電メーカーには全然及んでいないと言える。

古くからのカメラファンには「SONY, who?」「マビカ?」みたいな事を言う人が多いが、このスペックが事実として、ここから透けて見える宣伝戦略を考えると、きちんと価値を消費者に伝えられれば、僕は結構売れるんじゃないかなと思う。興味としては誰をアイコンに使うかというのもある。その選択に、狙っている消費者層が見えるからである。この価格帯の銀塩一眼レフは軒並みママカメとしての位置づけで、松嶋菜々子とか、女性受けするタレントを使っていたが、これは銀塩一眼レフ市場が成熟化していて陳腐化するプロダクトでは無いため買い替え需要も少なく、ニューエントラントとして新しくママになった層を狙っていたからであろう。今のデジタル一眼レフ市場はまだサチュっていない筈だし、銀塩と比べると陳腐化が速いので、新規のパイを取るか、一世代前のデジカメを買った層からのリプレースを狙うか、二つ戦略が有り得る。Canonのkissデジタルは、前者の仮説で引き続きママ層を狙っている様な宣伝戦略だが、SONYはどうだろうか。ダストリダクションと手ぶれ補正がキーとなる差別化ポイントなら、後者により刺さりやすい感じもする。そうすると、割と新しもの好きで知識が有り、感度が高い人に受けるという観点では、アイコンは女優でなくて、Outstandingなスポーツ選手とかアーティストとか、そういうチョイスもあるだろう。

さて、カメラ本体の話に戻るが、このスペックを一瞥して、僕が買いたいかと言われると、ちょっと中途半端な感じだ。ファインダーやシャッターといったメカがイマイチである。手ぶれ補正もダストリダクションも要らないから、istDの様な明るく大きなファインダーとD70sのシャッターが有れば、多分買うだろう。こういう所に眼をつけてしまう時点で、自分がちょっと一般人から「あちら側の人間」の感覚になってしまいつつある感じがする。「あちら側の人」の感覚でモノを売り出すと大抵失敗するので、そこは仕事上も常に自戒しているのだが、商品開発というのは常にあちら側で作っている訳で、なかなかセルフコントロールが難しい仕事だなと思う。
さて、D50を買って、そろそろ1ヶ月が過ぎた。既に1000枚を超えるシャッターを切って、かつ写真学校にも真面目に通っているが、この間劇的に僕の写真リテラシーは向上し、既にD50では不満が出つつある。かと言ってD200は重過ぎて選択外なのだが、D70sというのも今更な感が有るので、願わくばNIKOND70sの後継をさっさと出して欲しい。NIKONの今期の一眼レフカメラのセールスプロジェクションを見ると、台数ベースで上期より下期の方が多くなっているので、きっとこれはD70sの後継機種が夏くらいに発表になるからと信じている次第である。
その頃にはSONYのα初代も出ているだろうから、実際のスペックを見て、いろいろと見比べる事も可能だろう。まだミノルタαマウントのレンズは持っているから、SONYのが本当に良かったら出戻りも十分可能だ。
ま、唯一の心配は、SONYギリシャ文字製品の歴史である。いや、βってのが有ったなと。