僕らは何を持ち運んでいるのか。

新型VAIO TYPE-Uの事を以前書いたが、ふと僕らはモバイルコンピューティングと言う時にPCを持ち運ぶという意味合いとして、PCの要素の中の何を持ち運んでいるのかという事が気になった。

○5/17 Origami様フラッシュメモリPC

先ずは明らかにデータである。それは主に過去に作った様々なファイルである。バイアウト投資というのは、一件一件がプロプライエタリーでは有るが、それぞれ似たようなプロセスを辿る事も多く、過去この局面ではこういう資料を使ったとか、こういう分析からこういう解を導き出したとか、過去の案件のナレッジを活用する事は結構多い。僕はオフィスに居る時は、google desktop searchを共有ドライブも含んでindex化させており、他のメンバーが手がけた案件のファイルまで網羅的に検索出来る様にして、業務効率を高めている。モバイル環境では、さすがにネットワークドライブを全てローカルにシンクは出来ないので、自分が行ったプロジェクトのファイルはネットワークドライブとローカルをシンクさせていて、少なくとも自分が過去蓄積したナレッジはモバイル環境でも同様にアクセス出来るに担保している。

二つ目はコミュニケーションの連続性である。つまりはメールに帰結するのだと思うが、僕あたりの世代は会社に入った時には既にメールクライアントがデフォルトで有ったり、Lotus NOTESが入っていたりする方が多分多数派で、僕も例に漏れず、社会人人生を始める時にはコミュニケーションの一部としてメールを使っていた。
メールベースでのコミュニケーションは保存性、検索性に優れるので、言った言わないを避けて厳しめのプロジェクトコントロールをするには必須のツールである。現在行っているプロジェクトやモジュールの状況をフォローし、どこに居ても的確な反応や、過去を踏まえた対応をするには、メールを持ち運ばないと記憶に頼る事になる。

三つ目はコンピューティング環境である。これは、日本語変換の効率や、キーボードなどのインターフェース、インストールされているソフトウェアなど、あらゆる要素がある。僕がSXGAの液晶ディスプレイ、IBMタッチパッド付きキーボードと会社同様のギアを装備している家のPCで余り仕事をしないのは、コンピューティング環境が会社のThinkpadと余りに違ってそれがストレスだからである。大抵、家で仕事する時は、Thinkpadを持ち帰ることになる。

3つを並べてもう少し考えてみよう。

  1. データ
  2. コミュニケーションの連続性
  3. コンピューティング環境

これは結局はパーツベースで言えば、HDDを持ち運んでるのと同じ意味だ。別にThinkpadを持ち運ばなくても、そのHDDを持ち運んで、家なり投資先のPCにそのHDDをぶさっと刺す事が出来れば、それが一番シンプルかつ十分という事である。移動時のメールアクセスとか幾つか付帯する要素は有るが、必ずしも移動時にオフィスと同じコンピューティング環境が必要なわけでは無いので、それは都度携帯なりPDAなりで読めば事は足りる。

ちなみに、僕のThinkpadの40GのHDDは、一杯一杯の状況である。メールボックスのフォルダが6Gも有ったりするのが原因だが、これは捨てられないものなので致し方無い。これは特にgoogle desktop searchを入れてから顕著で、何か探しごとをする時に検索すると、見事にもう記憶から消え去ったメールで、bingoな内容を過去他の人とやりとりをしていたりするのが見つかったりする。かつて、自らの記憶能力が検索の限界を決めていた時代は、過去のメールは保存用ファイルに切り出して、別ドライブに保存し、必要な時だけアクセスするというのが可能だったが、記憶+google desktop searchが限界になると、googleが探しだせる様に全てのメールボックスファイルをスタンバイさせる様になった。その意味で、google desktop searchは人類史上幾つか存在する人間の記憶力をストレッチするツールの一つに成り得たと思う。数十年後の教科書に、そもそも記憶を記録する手段を作ったオリエントでの文字の発明、文字を平易に複製し遍く世に行き渡らすきっかけとなったグーテンベルク活版印刷術、その文字を電子媒体に入れたコンピュータの発明の次に、その電子情報を人間の記憶に頼らずに検索できる様にしたgoogleが併記されていても僕は驚かない。この次は、そもそも検索せずとも適切な場所に保管したり、分類したりするニューロ理論を応用した真の人工頭脳辺りがアポイントされているのだろうか。

さて、google前提で考えていくと、新型VAIO-Uの30GのHDDや16Gのフラッシュメモリドライブはイマイチな分量である。30Gでは40Gでも一杯一杯の僕には必要要件を満たさないので、今の所購入対象外になってはしまうが、これがもし最低でも60G位有ると話は別である。60GのHDDを装備したVAIO-Uは、僕にとってのモバイルコンピューティングの本質であるHDDの持ち運びに最も近い形態で、かつ十分なパフォーマンスを持つPCとしてクオリファイする。意味合いとしては、PCというよりはミニマムのインプット・アウトプット系デバイスの付いたHDDである。

オフィス、家、投資先など、働く拠点に夫々ポートリプリケータを設置し、その場所に行く度にVAIOをそこに差し込んで、どこでも同じ環境で仕事をする。移動中はミニマム付いたディスプレイとスタイラス、キーボードでコミュニケーションツールとして使う。そして軽くて持ち運びが全く苦にならない。これは結構新しいPCの有り方の様に思う。フルパッケージのPCからインプット・アウトプット系デバイスの付いたHDDへの発想の転換である。

という訳で早期のHDD増量モデルの展開を望む次第である。過去、SONYはマイチェンの時にHDDは増量する事が多いので、ちょっと期待。