村上ファンドに思う。

村上ファンドで今日は大騒ぎである。
疑われている取引を分析すると、今日の日経夕刊が詳しいのだが、大体こんなイメージである。

  1. 村上ファンドは2003年ごろからニッポン放送株の本格取得を始め、2005年初めには筆頭株主になった
  2. ライブドアは、2005年1月からニッポン放送株の買い集めを行い、2月4日には発行済株式数の5%超を取得した
  3. ニッポン放送に対して、フジテレビジョンが2005年1月17日、グループ再編のため、過半数取得を目標とするTOB(株式公開買い付け)実施を公表し、翌日から実行
  4. (村上氏が堀江氏と会談し、ライブドアニッポン放送株を大量取得する意向である事を確認)
  5. 2月8日、ライブドアは立会外取引でニッポン放送株を大量取得して持株比率約35%の筆頭株主となった。村上ファンドはこの立会外取引で5%程度の株式をライブドアに売却
  6. 村上ファンドは、株価の高騰中に残りの保有株の大半を市場で売却した

何がどう違反かと言うと、証取法167条と同法施行令は、公開株の発行済株式数の5%以上を買い集める行為を「TOBに準ずる行為」と規定しており、買い集め情報を買い集め主体から直接入手したうえで、情報が公表される前に株取引することは、インサイダー取引規制に引っ掛かる。要は、④がこの規制に該当するという事である。()を付けたのは、ここを検察が現在証明中で真偽の程はまだ不明だからである。

例えば、

村上氏:「ホリエモンニッポン放送株結構買っちゃうわけ?」
堀江氏:「その積もりだよんwwwww」

とか言う会話が有ったとしたら、これが「TOBに準ずる行為を買い集め主体から直接聴いた上で売買した」という事に該当すると地検を考えている事になる。

たぶん、この会話が有ったことを、拘留中の堀江氏か他のライブドア関係者から聞いて、調査に至ったのだろう。

真偽の程は僕には分からないが、一つだけ言えるのは、村上氏は元MITI官僚で、規制側の人だった事である。当局の発想はよく分かるだろうし、自分が睨まれているのも自覚していただろうから、普通に考えれば、絶対に刺されない様に慎重を期して行動している筈だ。それがこんなにシンプルなトラップに引っ掛かる程、無邪気なインサイダー取引をやるのかなという疑問になる。

また、村上氏は慎重な人間で、証拠を残さない為に、余りメールを使わず、face to face でのコミュニケーションを重んじる人だと聞いた事が有り、この会話も記録に残っておらず、ライブドア関係者の供述のみが証拠だとすると、村上氏が自白しない限り、相当厳しい裁判になるのは目に見えている。

検察の力量が見ものではあるが、村上氏が自白しないんだったら、事情聴取だけで終わる可能性も大かなと思う。それで終わっても、なんとなくダーティイメージが更に増して、これからのファンドレイズは苦戦するかも知れないし、ヘッジファンドには解約という概念が有るから、解約が続出して資金量が落ちる可能性も有るから、今ほどのパワーを村上ファンドが持ち続けるかどうかは微妙である。

R30さんのblogに紹介されているように、村上氏は利益を追求するしたたかなファンドマネジャーとガバナンスの伝道者という悪と正義の双面性を持っていると称されるが、

R30 マーケティング社会時評

僕は彼の投資スタイルは、不動産のバリューに着目した短期的なアービトラージをアクティビストの皮をかぶって行っているだけと考えている。要は正義を実現する為に株主という立場を利用しているのでは無く、行動する株主という「正義の姿」を方便としてリターンを最大化しているという事である。別段長期投資家が短期投資家より偉いとは全然思わないが、長期投資家のアクティビストとは、資産売却では無く、経営改善という時間の掛かるバリュークリエイションを株主からのアクションによって実現するというのが正しい姿だ。という訳で、リスペクタブルなリターンを村上氏が出している事は大いに認める一方、必然的に長期投資志向になるバイアウトファンドに居る僕は彼の投資スタイルには全然共感はしていないのだが、個人的に日本の長期的な発展を考えると、こういう出る杭は打たれるという風潮は余り助長して欲しくない。脱法行為は罰せられるべきだが、今回ばかりは日本のアントレプレナーシップの為にも簡単にゲロるな!と思っている。

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