Day 1 /名古屋からドバイへ。

 いざ出発する段になると、中部国際空港から出るというのは、自分でもワケワカメである。遠い。関空なら、羽田−関空を飛べば、かえって成田よりラクという感じだが、中部国際空港には東京から飛行機は飛んでないのである。新幹線に飛び乗って名古屋を目指し、そこから名鉄だ。いやしくもバックパッカーを名乗るのであれば、青春18切符で、しかも臨時の方の対面式シートで名古屋まで行くべきかも知れないが、残念ながら、その労苦はお金で解決してしまう年に僕もなりつつある。最近は、プライベートで関西に行くのに、ついつい疲労度が全然違うからとグリーンに乗ったりしていたが、ここはちょっとだけ気合いを見せて普通車である。
 別に自慢するような気合いのレベルでは無いが、子供が泣き叫び、おやじはくちゃくちゃとつまみを食べ、ビールを飲み干しては酒臭い息をあたりに放つという阿鼻叫喚の新幹線普通車に座ると、この様な事は殆ど無いグリーンか飛行機が恋しくなる。特にハブ空港セントレアだのと蛇と合体マシーンアニメが混ざり合った名称を誇示するなら、羽田便はあるべきである。まぁ名古屋に行くのに東京から飛行機で行く人は少なかろうから、羽田−名古屋というフライトが無くても文句は言えないのだが、ここは一つ心意気を見せて、常滑市民を喜ばせる為だけでもいいから就航してほしいものである。大体、メジャー空港の間は、ジャンボとか737を飛ばすもんだという固定観念があるから良くない。調布からボンパルディア機とかで十分だ。
 到着してみると、中部国際空港はガラガラである。ハブ空港なのにガラガラ蛇とはこれいかに。23時なぞという遅い時間に出るフライトは、このエミレーツJALコードシェア便だけなのであった。待たないチェックイン、待たない出国審査というのがこんなにバリューがあるものだと思わなかった。しかし、中部国際空港は初めて行ったが、なんちゅうかつまらんデザインの空港である。関空はこれから旅行に行く高揚感を更にプッシュしてくれる素晴らしいデザインだと思うのだが、中部国際空港はどうにも事務的でいただけない。出国審査を終えて、免税エリアに入るとそれなりに明るくはなるが、ブランド品店がすらりと立ち並び、なにやらデパートの様である。免税のブランド品は、買うに当たって何かずるしちゃった、へへへ、という若干の罪悪感と国税を出し抜いた達成感が欠かせないスパイスだから、この様に堂々と買え、この野郎とばかりに立ち並ぶとやる気が萎える。
 無事通路側を確保すると、機内では殆ど寝ていた。窓側の景色が捨てがたいのは勿論だが、僕のように股下が80cmを大きく超える人間は通路側でないと足が収まらないのである。足が長くていいね等と絡まれる事もあるが、それが原因でモテた経験は無いので、はっきり言ってもう少し背が低いか足が短い方が生きるには便利である。エミレーツは機体はいいし、普通のエコノミーと比べてもニークリアランスに微妙に優れているので快適なフライトなのだが、飯は正直普通である。この辺は美食の文化に乏しい中東のエアラインらしい。東南アジア系やヨーロッパ系の方がエコノミーでもまずまず食えるものを出している。エミレーツの素晴らしい機内エンターテイメントを触れもせず、書かなければいけないコラムの原稿を50字以上書きもせず、ぐったりと寝る内に初日は過ぎ去っていった。

  • 写真は後ほどアップロード。