あるある事件は日本を写す鏡。
最初に関テレの「発掘!あるある大事典」事件を企業サイドから考えてみたい。事件の内容は知れ渡っているので解説は省くが、この番組は、消費財やってる企業にとっては都合の良いマーケティングツールだった。マーケターの間では、例の製作会社に2千万円つかませれば(金額は諸説あり)、内容が嘘でない限りある程度の確率で取り上げられる、という話が、実際やったやらないは別として、割と知られていた。内容が嘘でない限りというのは、例えばココアが体にいい、という話を取り上げて貰いたい時に、ココアには体にいい成分も悪い成分も両方含まれていて、トータルでは体に悪いであっても、或いは体にいい成分は含まれているが、微量過ぎて意味は無いであっても、「ココアには体にいい成分が含まれている」という部分において真実であればOKという事である。事実、過去にあるあるで取り上げられたダイエット方法は、「それって単に下痢起こすだけじゃん。そりゃ下痢起こせば便秘の人は痩せるよね」という様な話まであった。企業にとってみると、うまく使えば絶大な効果のあるマーケティングツールだった訳で、それがこの世から消えてしまうのは結構痛い話なのかもしれない。
ここからちょいと話は変わるが、今回の騒動において、納豆一人前約100kcalを体に加えて、それ以上に痩せようなんていう非科学的な態度が、結構な日本人に浸透しているのが改めて驚きである。きっとこういう人は、お肌に浸透してプルプル肌に!とかいうコラーゲン入り乳液を毎日塗り塗りしているのであろう。いつから人間は肌から本質はたんぱく質であるコラーゲンの様な高分子を吸収できる様になったのか、中学生の理科に立ち戻って考えて欲しいものである。こういうのは表皮に止まって、表面的に保湿できた様に感じるに過ぎない。これは、そもそも外来物をシャットアウトする役割の皮膚に対して、外来物を塗るという手段で美しく保つのは難しいと普通に考えればいいのだが。
こういうちょっと考えたり調べたりすればやばいと判るものや、嘘だと判るものは結構有って、陰イオンならみな知っているが、マイナスイオンなんて物質が存在しないのは有名な話である。未だに大手メーカーがイオン系の家電を出しているのは、あれは法的に大丈夫なのだろうか。また、シャンプーで、すごく指通りが良くなる事で評判の商品が幾つかあるが、あれは成分みればシリコンが入っていて、髪質が良くなった訳でも何でもなく、単に髪に付着したシリコンが表面抵抗を減衰させているだけというのがすぐ判る。
何でも疑えってことでは無くて、おおまかに言って正しい商品の方が圧倒的に多いと思うのだが、美と健康分野については、あやしげな商品とまともな商品との境目が判然としないだけに、「基本的にうまい話はあやしい」という立場の方がセーフかもしれない。僕は98年にものの本を読んで、BSEとプリオン病について理解した結果、いつか日本でも起きると確信し、それ以来なるべく牛肉は避けて来た。その時、同時にプラセンタという牛の胎盤に含まれる物質の美容タブレットとかその物質を注入するピーリングとかは絶対にやばいと思ったのだが、案の定BSEが騒ぎになった瞬間に店頭から撤去されていた。何年かして、日本人に変異型クロイツフェルト・ヤコブ・ディジーズ(牛由来のヒト狂牛病)が発生したら、日本人に牛の脳とか骨髄とかのハイリスク部位を食べる習慣が一般的では無いだけに、それはきっと美容タブレット由来になるのでは無いかと睨んでいる。ただ、念の為、単なる神経質な人ではない事を示す為に言っておくと、全頭検査以降は安全と判断して、牛肉ガツガツと美味しく頂いている。いまちょっと心配なのは、大型魚への水銀蓄積かなー。水銀は体内から徐々に自然排出されるのだが、自然排出のペースを上回る勢いで大トロを食べるべく、水銀排出に効果のあるというデトックス商品を試してみようと思っている。水銀蓄積は、どちらかというと女性の方が心配なイシューでは有るが。
(下記のページを見ると、とても食欲が減退します)。
○東北大医学部大学院 環境保健医学分野
○環境汚染問題について
さて、最後の脱線はともかく、こういう事件は死傷者が出ない程度に起きてもらって、是非我々の科学リテラシーというか、情報処理リテラシーを上げるのに逆説的に貢献して欲しいものだと思う。我々は、玉石混交のニュースの中から正しいものを選り分けて、自分で判断するのが本当に苦手である。それで、結局垂れ流すマスコミが悪い!とか営利主義の企業が悪い!とか資本主義という社会全体の前提条件に文句垂れて思考停止に陥ってしまうケースが非常に多い。これは戦前からこの傾向が有る様に思われる。思考停止と根拠の無い楽観主義は我々の悪いクセであって、あるある事件はそんな国民の現状を極めて良く浮き彫りにしたと思うし、そもそも我々は思考停止や楽観的な展望を持ち易い人々である事を自己認識する良いきっかけになったのでは無いだろうか。ここ24-48時間のニュースを見ていると、関テレ側はかなり追い詰められている様だが、
○「予断よくない」とねつ造動機明かさず=「あるある」問題で関テレ会見
○内容チェック7回見逃す…「あるある」納豆中間報告
是非、何をするにも魔法の杖は無くて、地道に努力することこそ王道ということが全国民に判る様なオチとして欲しいものである。そしたら年金問題とか少子化とか政府負債とか、典型的に思考停止と根拠の無い楽観主義に彩られて手遅れになりつつある問題が真剣に議論され始めて、解決するかもしれない。