ダーウィンの悪夢
ここんとこドキュメンタリー映画づいていて、エンロンに続いてダーウィンの悪夢を見た。この映画はエンロンよりは幅広く上映されたので、知っている人も多いと思うが、タンザニアにおけるグローバリゼーションの代償を描いたものである。具体的には、ビクトリア湖のナイルパーチという魚が、日本で無名の「白身魚」として流通したり、マクドのフィレオフィッシュとして流通したりしだした事で、タンザニアの人の生活がどう変わったかを負の部分を中心にこってりと述べられている。ワニに食べられたりする危険な漁の仕事、その漁師にむらがる娼婦、蔓延するエイズ、地元の魚なのに残飯しか食べられない地元住民、魚を欧州に運び武器をアフリカに持って帰ってくる輸送機。目を覆うような貧困と悲惨の映像が続く。
こんな映像ばかり見ると反グローバリズムの人になってしまいそうだが、僕はこれは少々アンフェアだと思った。映画の中で本当に重要なポイントは、この漁師達は内陸部の極めて貧しい草でも食べる様な村から仕事を求めてやってきた人達であるということだ。グローバリゼーションによって色んな不幸が生まれたのは事実なのだろうが、グローバリゼーションが無ければ、少しの日照りで飢餓が起きる様な貧困の中で人は暮らしていた。少なくともヨーロッパ人はタンザニアに日照りが起きてもナイルパーチを食べるのを止めたりはしないから、漁師は日照りで飢えたりしない。
監督は、グローバリゼーションが無ければ原始共産主義の様なハッピーな世界がタンザニアにあったと主張したいのかも知れないが、それは違う。現実に目の前にあるのは、グローバリゼーションのある貧困と、グローバリゼーションの無い貧困の二者択一だ。この視点がより掘り下げられれば、よりフェアで深いメッセージになったと思う。
最後に一つ余談だが、数字上のタンザニアは近年GDPを平均年率7%で成長させている高成長国家である。