オールロードクワトロがやって来た

 アヴァンギャルドルノーアヴァンタイムをスルーして、結局手に入れたのは、割とコンサバな先代アウディオールロードクワトロである。このクルマ探しの過程で気付いたのだが、まともな大きさの4駆という条件だと、作り手はほぼ日独枢軸万歳という感じになってしまう。後はレンジローバーか双龍ムッソー位だろうか。アメ車は雰囲気は有るけど、軒並みデカすぎるのと、性能面で同クラスの日本車と比べて全般に見劣りした。あと、新車と比べると故障リスクが高い中古車なのに、ゴーイングコンサーンに疑義のある会社の製品はちょっと買いにくいってのはある。Chapter 11ならともかく、DIPが付かない今の世の中だと、Chapter 7の可能性もゼロでは無いだろうし、Chapter 7のファイリングして破産したらパーツ保存義務もへったくれも無くなってしまう。
Front
[NIKON D90/ SIGMA 17-70mm F2.8-4.5 DC MACRO]
 それで、真面目に候補として考えたのは、

といった面々だった。大雑把に言えば、1-2年落ちで新しめの日本車か、5年位走った外車か、という選択である。日本は新車プレミアムが大きい市場で、いずれにせよ買った瞬間に時価評価損となるから、もともと新車には興味が無い。あと、外車は壊れるイメージがあるのか、5年5万キロあたりに大きな境目が有って、これを超えるとがくっと値段が下がる。また、1年前は買えなかったクルマが、この所の中古輸入車価格の暴落で同程度のタマが30-50%近く値を下げており、結構良いものが安く買えるタイミングでもある。
 個別に話すと、トゥアレグは、デザインはよくまとまっていると思ったが、如何せん鈍重で、余り今のMUとの違いを動力性能的には見出せず、購買意欲が盛り上がらなかった。X5は、当初候補では無かったが、試乗してみたら剛性感があって加速も良く、色んな人がこのクルマを買って、街でよく見かける理由を理解出来た感じだった。しかし、特に初期型の4WDシステムはオンロード向きの設定で今ひとつ信頼できず、雪道や泥道をすいすいと行けるイメージが沸かなかったので落選となった。フォレスタームラーノは、両方ともオレンジで探したが、なかなかタマが無い。フォレスターは、230馬力のターボモデルなら相当走りそうで、かつ燃費も13km/l台と素晴らしいのだが、現行モデルのオレンジは、赤も含めてそもそも全く市場に出回っていない模様である。こういう地味なルックスのクルマで白とか銀とかの薄いモノトーンを選んだら、それこそ営業車だから、この色問題は致命傷だった。最後にジャガーだが、これも2.0のFFはそこそこあるが、2.5エステートはタマ数極小。しかも、こういうおっさん顔のクルマに若造が乗る時は、また色の話になるが、濃いボディカラーじゃないと本当にジジ臭くなってしまうのである。なのに、数少ない出物は軒並み水色とか薄緑とかの微妙な色であった。濃紺とかが有れば、もう少し悩んだかもしれない。
4.2
[NIKON D90/ SIGMA 17-70mm F2.8-4.5 DC MACRO]
 そんな経緯を経てのオールロードクワトロだが、世代的に僕はアウディと言えば、ラリーのWRCで無敵だったアウディ・クワトロを思い出す。ラリーに4WDを最初に持ち込んだのは80年代前半に活躍したアウディ・クワトロだった。オールロードクワトロは、そのクワトロの伝統の名前とシステムを搭載するモデルだから、日本で素人がオフロード行くのには十分すぎる性能に思えた。あと、このモデルは、エアサスで車高が調整できるのがメカ的な特徴だが、低くすれば立体駐車場に入る高さにも出来るのも良かった。前の引越で、代官山・麻布十番・赤坂エリアの物件は隈無く見たが、その時、このエリアでハイルーフ車の入る平置の駐車場を持つマンションとなると、コンシェルジュが付いちゃう様な立派な大型マンションばっかりな事を知った。ハイルーフ必須なんすけど、と不動産屋に言うと、「この界隈でハイルーフ車乗ってるのは、一軒家持てる人だと思ってくれ」とか、人の人相骨品懐事情をあげつらう余計な一言を頂戴したりして、要らぬ血を見る始末である。その時の苦労からすると、いざっちゅう時に普通のマンションの立体駐車場に入る155cm以下の車高は有り難い。
 最後に、このクルマは決して格好良いルックスとは言えず、むしろ相当地味である、というのが正直な所だから、他のクルマの検討と同様「色」の問題は存在した。シルバーやライトグリーンは、ちょっと営業車感が拭えなかったし、こういう傷が目立たない薄い色を選ぶ時点で、前オーナーはガンガンオフロードを攻める積もりがあった可能性がある。オフロード攻めたクルマは、見えない所が傷んでいるリスクが高いからなるべく避けたいところだ。幸いなことに、オールロードクワトロは、営業車感の小さい黒や濃紺もそれなりのタマ数が有ったので、何とか希望のクルマを手に入れる事が出来た。04年式アウディオールロードクワトロ4.2で色は黒である。2.7Tという2.7リッター・ツインターボのモデルも有ったが、先代ソアラと同様、ツインターボよりやっぱりNA4リッターかと思って、これにした。出力は300馬力である。地味な外見なのに新車価格は800万円の余と驚くばかりだが、5年の歳月とここんとこの輸入車価格の下落で、車両本体は新車時の4分の1前後、車検とか色々入れて3分の1弱、という感じに収まった。Car Sensor Lab.を見る限り1年前だと車両本体で300万円を大きく超えていたので、今はものを買うには良い時期である。
 その昔、レンタカーでホンダのフィットに乗った時、その出来の良さに驚いた。フィットは100万円ちょっと位のクルマだが、個人的な暴論としては、女性にとっての1,000円以上の化粧水と同様に、男性にとって100万円以上の自動車はどこまで見栄と自己満足にお金を払いたいか、という話である様にその時感じた。だから、これまで安いクルマを乗り継いで来たのだが、今回はその個人的基準からすると、うっかり結構払っちゃった、というのが率直な所である。
Strawberry shop at Atsugi
[NIKON D90/ SIGMA 17-70mm F2.8-4.5 DC MACRO]

  • 夜の無人苺ショップ。大変甘くて美味しゅうございました。

 納車後、週末さっくり高速で厚木の農家に旬の苺を買いに行った。第1印象として、MUとは段違いの速さと安定性には驚く。いすゞ・MUはパワフルなイメージに乏しいが、1.7tの車重に3.2リッター、215馬力のエンジンを積んでいるから、例えば2.3t、220馬力のVWトゥアレグより実はパワー/重量比は段違いに良い。ほぼ同じパワーのエンジンなのに、VWトゥアレグには小錦が3人追加で乗っている(20世紀的表現だが)のだから差が出るに決まっている。デカいビッグホーンのエンジンをそのままショートホイールベースの軽い車体に積んだのがMUである。トゥアレグの試乗時、新車価格はMUの2.5倍なのに、いまいちキビキビ感に差を感じなかったのは、この辺を考えれば当然かもしれない。一方のオールロードクワトロは、300馬力でパワー/重量比的にも有利だし、そもそも車高が低いから重心も低く、245/45R18なんていう、フェアレディZと同じサイズの、スポーツカーみたいな太いタイヤを履いている。加速や高速安定性が違って当然である。
A star and green house
[NIKON D90/ SIGMA 17-70mm F2.8-4.5 DC MACRO]

  • 苺温室の向こうの一番星。正確には、これは金星だから、一番惑星?

 最後に余談だが、アウディ・オールロード・クワトロ、という三単語は、前からラテン語・英語・イタリア語の順番である。日本のクルマのネーミングも大分無茶無茶だが、海の向こうも似たようなもんだ。そういえば、何年か前に多分ガーナを旅行している時に、南アフリカ自動車雑誌を読む機会があって、そのスポーツカー特集の中に、日本のクルマを紹介するセクションもあった。そのセクションは確かこんな文章で始まっていた。
「日本車と言えば実用車というイメージだが、小さなセダンに超高出力なエンジンを詰め込んでしまう様な、エクストリームなスポーツ精神も持ち合わせている。そんな隠されたハイパフォーマンスカー達にちっとも速そうに見えない名前が付けられているのも、日本車の面白い所である。特に、私は取材中、スポーツカーでは無いが、Bon-go Flen-Dhee と発音するクルマを見つけて、その不可解さに度肝を抜かれた・・・」
Over fender
[NIKON D90/ SIGMA 17-70mm F2.8-4.5 DC MACRO]

  • A6アヴァントと違うのは、この張り出したオーバーフェンダーと極太扁平タイヤ。より大出力でオフロード向きのセッティングである。