若者のなんちゃら離れ

 いささか旧聞に属するが、「家政婦のミタ」が近年稀に見る好成績を収めた。僕はこのドラマを一分たりとも見ていないし、地上波のドラマなんて、ここ10年位ミタ記憶も無い。スカパーのスーパー!ドラマTVのCHUCKは、イヴォンヌ・ストラホフスキーが可愛すぎるので見ているが・・。このエントリは、そういうあんまりテレビ見ていない人が言う戯言である。
 このミタの高視聴率については、「若者のテレビ離れ」「ネットの違法動画コンテンツによる被害」を代表例として、過去テレビ業界がブーたれて来た構造変化は間違いであり、単にテレビ業界が魅力的なコンテンツを作れなかったのを人のせいにしてただけでは無いか、という突っ込みなのか、テレビ叩きなのかがソーシャルネットワーク界隈では盛り上がっていた。そりゃそうだ。魅力的なコンテンツを作れれば、人はyoutubeじゃなくて、テレビを見るのである。
 テレビ叩きと言えば、何故かテレビ業界は、最近政治家と並ぶ2大叩かれ業界と化している。これは面白い。何かにつけ叩かれる業界としては、政治家の長年の安定度はピカイチとはいえ、過去は政治家に並ぶツートップの地位は銀行が長く占めていた。だが、嫌韓ブームゆえか、銀行員の給料が下がり、かつ銀行社畜の辛さが認知された結果か、昨今はテレビ業界がダントツの成長率で銀行を抜き去った感が有る。ちと斜陽に見える業界に、人は容赦が無いという事かもしれない。銀行は、なんだかんだと不良債権の繰越欠損を埋めて法人納税も復活させ、リーマンショックも欧州危機もうまく躱し、ひっそりと儲けだしている一方で、テレビ業界は今まさに生死を賭けた戦いの真っ最中だ。
 さて、実際過去どんなドラマが高視聴率を取り、視聴者にとっての魅力的なコンテンツだったのだろうか。今と同じ統計方式になった1977年以降のドラマの歴代10位は下記の通りである。



順位

名前

日時

放送局

視聴率(%)

1

積木くずし・最終回

1983年3月29日(火)

TBS

45.3

2

ビューティフルライフ・最終回

2000年3月26日(日)

TBS

41.3

3

熱中時代・最終回

1979年3月30日(金)

日テレ

40.0

3

家政婦のミタ・最終回

2011年12月21日(水)

日テレ

40.0

5

3年B組金八先生・最終回

1980年3月28日(金)

TBS

39.9

6

ひとつ屋根の下

1993年6月21日(月)

フジ

37.8

7

GOOD LUCK!!・最終回

2003年3月23日(日)

TBS

37.6

8

赤い激流・最終回

1977年11月25日(金)

TBS

37.2

8

家なき子・最終回

1994年7月2日(土)

日テレ

37.2

10

HERO・最終回

2001年2月26日(月)

フジ

36.8

気付くのはキムタク強し、という事とラブストーリーの少なさである。恋愛ものはビューティフルライフとGOOD LUCK位か。僕らの世代位だと、ドラマを見出す時期に流行っていたのがトレンディドラマだったから、その印象が強すぎてドラマと言えば恋愛ものな感じがするが、実際の爆発的ヒット作にはラブストーリーよりホームドラマが多い。あと、刑事/犯罪ドラマは一つの安定したジャンルだが、この上位には該当がHERO位で少ない。この辺り、家政婦のミタと同じクールのドラマを見ると、ラブストーリーや刑事/犯罪ドラマが多いのとは対照的だ。見ていないドラマをジャンル分けするのは至難を究めたが、wikipediaの記述を基にして、2011年秋ドラマから「刑事/犯罪ドラマ」「ホームドラマ」「ラブストーリー」を抽出するとこんな感じである。



ドラマ名

放映時間

放送局

視聴率(%)

ジャンル

家政婦のミタ

水曜22:00〜

日テレ

24.8%

ホームドラマ

南極大陸

日曜21:00〜

TBS

17.3%



相棒ten(10)

水曜21:00〜

テレ朝

16.2%

刑事/犯罪ドラマ

謎解きはディナーのあとで

火曜21:00〜

フジ

15.9%

刑事/犯罪ドラマ

私が恋愛できない理由

月曜21:00〜

フジ

15.8%

ラブストーリー

妖怪人間ベム

土曜21:00〜

日テレ

15.6%



DOCTORS 最強の名医

木曜21:00〜

テレ朝

14.7%



科捜研の女(11)

木曜20:00〜

テレ朝

13.0%

刑事/犯罪ドラマ

HUNTER

火曜22:00〜

フジ

11.0%

刑事/犯罪ドラマ

専業主婦探偵

金曜22:00〜

TBS

10.0%

刑事/犯罪ドラマ

ランナウェイ

木曜21:00〜

TBS

10.0%



蜜の味

木曜22:00〜

フジ

9.9%

ラブストーリー

僕とスターの99日

日曜21:00〜

フジ

9.3%

ラブストーリー

11人もいる!

金曜23:15〜

テレ朝

8.8%

ホームドラマ

俺の空 刑事編

日曜23:00〜

テレ朝

6.7%

刑事/犯罪ドラマ

秘密諜報員 エリカ

木曜23:58〜

日テレ

4.8%


16本中6本が刑事/犯罪もの、3本がラブストーリー、2本がホームドラマである。これらはもうメジャー3ジャンルと呼んでもいいだろうが、それにしても刑事/犯罪ものは数が多い。4割が刑事ものって普通に考えたら異常だろ。勿論、ジャンルでは視聴率は決まらないが、こんなに我々は犯罪の話を見たかったのだろうか。日常生活にはそう事件はなくても、刑事というのは事件が相手から飛び込んでくる職場だから、作り手としては話を作りやすいのは想像に難くないし、このクールでも平均点以上はジャンルとして取れているので単打の打率は高いのだと思う。ただ、受け手からすれば余りに同じジャンルの話が多いと、この娯楽が多様化する現代において、ドラマという分野で視聴者にテレビのスイッチを付けさせるのは厳しい感じがするのは否めない。全体の中の平均以上は取れても、全体を押し上げる様な力は無いし、そうしてる内に全体は沈んでいって、その中の平均以上って意味無くなるかもって事である。
 この作り手側の事情で何かクリエートしても、物事余りヒットせんよね、というのは、2011年年間ドラマランキング上位10本のキャスティングを見ても判る。



順位

ドラマ名

主要キャスト

1位

家政婦のミタ日本テレビ系)

松嶋菜々子 / 長谷川博己 / 相武紗季 / 忽那汐里

2位

JIN-仁-(TBS系)

大沢たかお / 綾瀬はるか / 中谷美紀 / 内野聖陽

3位

マルモのおきて(フジテレビ系)

阿部サダヲ / 芦田愛菜 / 鈴木福 / 世良公則

4位

相棒 Season 9(テレビ朝日系)

水谷豊 / 及川光博

5位

連続テレビ小説・てっぱん(NHK総合

瀧本美織 / 安田成美 / 遠藤憲一

6位

江〜姫たちの戦国〜NHK総合

上野樹里 / 宮沢りえ / 水川あさみ

6位

連続テレビ小説・おひさま(NHK総合

井上真央 / 高良健吾 / 満島ひかり

8位

生きてるだけでなんくるないさ日本テレビ系)

村上信五 / 田中麗奈 / 渋谷すばる

8位

渡る世間は鬼ばかり・最終回(TBS系)

泉ピン子

8位

南極大陸(TBS系)

木村拓哉 / 柴田恭兵 / 香川照之 / 堺雅人

○年間ドラマ視聴率TOP10 /ORICON Style

8位に滑り込んだ南極大陸のキムタク以外は、見事に主演級にジャニタレ・AKB48・韓流が居ない。大人の事情とやらがドラマのキャスティングに有るのかは知らないが、売れてるイケメンやらロリ風やらを揃えて売れる程ドラマは甘く無い事が良く判る。また、ラブストーリーが全くランクインしておらず、刑事ものも相棒の1本だけ、というのも特筆すべき点である。売れてるタレント揃えて、当たり障りの無いラブストーリー演じさせれば売れる、という安直な整理からほど遠い所に実はドラマはある様だ。正直、テレビ見ないので、キー局は売れた漫画を原作にして、事務所推しのタレントを接待受けてキャスティング決める、みたいなチャラチャラした要素が否めないだろうと当初思っていたが、ちょろっと調べてみると、どこの世界も余り甘く無い、という当たり前の現実がそこにあった。
 まぁちょろっと調べないと、チャラチャラしてるだろ、と思われてしまうのが、テレビ叩きの淵源の様な気がして、「外見で損する残念な人」みたいな妙な同情を今テレビ業界に抱いている。しかし、このテレビ業界への偏見(?)を克服した上で、敢えて戦線を拡大するなら、AKB48、嵐、EXILE、韓流による当たり障り無いラブソングしか上位に来ない音楽業界は何なのだろうか。2011年のCDセールスが、AKB48と嵐とEXILEと韓流で占拠されてるのは、2011年の音楽ランキング@ニコニコ大百科でも見て欲しい。まさしく「これはひどい」。
 こちら様でも「若者の音楽離れ」とか「海賊版被害」とかテレビと全く同じ事を業界の人が言ってるけど、音楽業界における「家政婦のミタ」はきっとあって、それが既存の打率重視の売り方に適合してない、というだけだと言う疑いが拭えない。だって、僕も音楽聞きたいけど、当たり障り無いラブソングなんて共感できないし、社会全体も、平均年齢が上がる中で人生の喜びとか悲しみの中における、これまでの様なプレーンな恋愛の重みって下がらざるを得ないと思うんだよね。それがゆえに、10代の歌手ならともかく、それなりの年齢の歌手がラブソングしか出してないと、これが最近キモく感じられて困っている。リア充爆発しろとは少し違うのだが、何なのだろう、この違和感。そんな事しか考えないなんて頭悪いんじゃないか、と思えてしまうのだろうか。かと言って、演歌みたいなドロドロをドロドロのフォーマットに載せるのも少し違うと感じられる。
 さて、珍しく表まで作って定量的に攻めるかと思いきや、まとまりの無いエンドのエントリになってしまった。こんな事に欧米ガー!と叫んでもしゃーないが、ガガ様みたいに、ポップスの商業性と当たり障り「ある」メッセージ性に富んだ歌詞を両立させる事だって出来る筈なのである。

はてなダイアリーは異常に表を作るのが面倒なのだが、今日のエントリは、エクセルシートをHTMLテーブルに変換しちゃう君 (ββ)を使った。HTMLはそのまま通してくれるっぽい。