ギュウの大阪でトリ。
大阪で肉と言えば、牛である。大阪では豚肉というのは極めて低く見られていて、東京の方が豚を使う頻度が高い事を知る大阪人は、ひそかにほんまもんの肉食ってるのはこっちや、と優越感に浸っていたりする。東京が豚肉文化になったのは、関東大震災以降、関東圏で養豚ブームが起きたせいと言われているが、「ビーフカレー」等と断り書きを入れないと普通は豚肉だったりするのが東京で、大阪はすきやきでも何でもとにかく牛である。牛を愛する余り、すじまで煮込んで食べてしまうのだ。
そんな大阪において、鶏なんてのは牛・豚二強対決に埋もれて更にレアだったりして、大阪在住期間に置いて、余り旨い鶏を食べた記憶が無い。個人的には、鶏はやはり名古屋に限ると思っている。
はてさて、この週末は関西にいる。桜を見に来た積もりが、ここ数年東京より関西の方が咲くのが遅く、名所名所が殆どつぼみでうなだれている。うなだれに来た様なものである。そんなこんなで悶々としていたら、夜になって急に焼き鳥が食べたくなってきた。
宿泊は中津のラマダホテルだったので、食べようと思うと梅田になるが、梅田で焼き鳥と言うと、とり平と闘鶏本店なので、久方ぶりに闘鶏本店に行ってみた。正確に言うと、闘鶏本店から数メートルの位置にある闘鶏次郎は言った事が有るが、本店は初めてである。
うむ。結論から行くとすこぶる旨い。新橋の益子も旨いが、あそこは一本勝負のコースという「型」を楽しむ所なので、こういうア・ラ・カルトの楽しさはまた違う種である。お膝元、麻布十番のあべちゃんも良いが、メニューが少ない。闘鶏本店は、串から揚げまでかなりのバラエティが有って、好きなものを少量ずつ頂ける。特に良かったのは心臓とつくねかな。串に残った肉を歯でこそげ落としたくなる衝動にかられる。一昔前の中国人ならきっとやってただろうし、それこそが、この味に対するマナーだと思ってしまう位の味である。
締めの玉子かけ飯も美味しかった。明太子と生卵をかけただけのご飯だが、玉子の味が深いのでがつがつ食べられる。
あと、一つ触れておきたいのは鶏スープ。
かつて奄美大島で食べた鶏飯(けいはん)を思い出した。日本は大豆や昆布、じゃこで味のベースを作る食文化を持つが、奄美大島では鶏も使うのである。ふと、東南アジアを思い出す味だ。僕は、インドからアラカン山脈を東に越えると突如始まる東南アジアの鶏ベース食文化の北端が、奄美大島なんじゃないかと思っている。その南の味が大阪にも有る。
見た目は濃いが、豚骨なぞと違って、実にもたれない、あっさりとしたスープである。
また旅に出たくなってきた。