もてバッグ

何を隠そう、通勤もてバッグを探して数年が経つのだ。
会社には20年使おうと思って、清水の舞台からエアリアルする気持ちで買った、ロエベのライトブラウンのレザーブリーフケースが有るが、通勤カバンはイマイチ決まらない。

会社入った直後は、訳も分からなかったので、就活で使っていたサムソナイトのおっさん臭いブリーフケースで出社して、それをそのまま営業にも使っていたが、これは直ぐに自分がとてもおっさん臭い人になっている事に気が付いてショックを受けただけに終わった。ただ新人銀行員というのは、初任給がシャレじゃなくて17万4000円なので、本当にお金が無い生き物なのである。しかも否応無く寮に詰め込まれる為、学生時代は半同棲していたのに全然会えないわ、だのとブーたれる当時の彼女の為に、寮とは別に安アパートを借りてみたり涙ぐましい努力をして、しかもあっさりフラれたりとか、とてもカバンなんぞに振り向けるお金は無かったのである。

その後、単身大阪に行くと、銀行の昇給カーブが急な事と、大阪の物価が安い事と、アパートとか固定費ががくっと一時的に下がった事の三点で、お金がじゃぶじゃぶと見違えるように溜まりだし、ポール・スミスのショルダーバックとか、バーバリー・ブラックレーベルのリュックとか、いかにも小生意気な若造が持ちそうなバックで人並みに通勤を始めた。これらのカバンはまだもってるけど、さすがにショルダーだのリュックだのは今の僕には品が無さすぎるので、通勤にはもはや使えない。

東京に戻る頃に買ったのは、プラダのインディゴのトートバックである。こいつは相当気に入っていて、そこから3-4年、ボロボロになるまで使った。控えめでソリッドなラインが好きだった。あと、個人的にモノトーンは嫌いなので、インディゴみたいな渋くて落ち着いているけど黒じゃないというのが買った理由である。


・こいつのインディゴである。丁度良い大きさだった。

ただ、毎日使っていると流石のプラダも傷みが早く、1年前のクリスマスあたりに今のダークブラウンのプラダの大きめのハンドルバック(ショルダーストラップも付いている)に買い換えた。こいつはB4も入る大きさでPCを持って帰る時に便利ではあるのだが、どうにも可愛さが足りない。

僕が欲しいのはもてバックである。Cancam的造語ではあるが、合コンに行ったら、カバンだけで「この男やるな」と草原をなで斬りにする草薙の剣の如く女性陣に響く一品である。なんか男らしくセクシーなものは世に無いのであろうか。

形的にはずっと両手が空くバックが良くて、トートやショルダーを愛用していたのだが、今のプラダを修理に出している時に、新宿ルミネで買ったノーブランドの布地のブリーフケースを使って、空いてる電車に乗る分にはあんまり両手空きに拘んなくてもいいなと宗旨替えをした。

となると、ゼロハリとかフェリージとかもスコープには入ってくるのだが、僕は、どうにもこういう如何にもセンスがいいんだぜ俺的ブランドは好きじゃない天邪鬼だったりする。TUMIも右に同じ。

もちろん、辺境を旅する身として、いかにゼロハリのスーツケースが堅牢か知っているし、その堅牢さゆえにパレスチナや大阪の南部の様に街中でうっかり銃撃戦に巻き込まれても、これさえ有れば楯代わりにその場を切り抜ける事も十二分に可能だと思う。だが、ここは天下泰平の港区だ。楯なんぞ両生類の糞を集めた位の価値しか無いであろう。

今ちょいとだけ気になっているのを挙げるとすれば、クロエのエディス・ライトグレイ。


・しぶい。めっちゃいい。

この色と形にはクラクラきているのだが、元来レディースでちょっとフェミニン過ぎるのが気になっている。もう30歳だし、こういうのも引退かなと。お値段もちょっと勇気を要する金額でもある。

という訳で迷い続けてはや数年、結論の出ない日が続く。もちろん、カバンでもてようなんて認識が甘い!という無粋な突っ込みは無しなのである。