プロモーション

 どうやらプロモーションした模様である。いよいよ管理職・経営者めいた立場の一つ手前まで来てしまった。この会社に来て3年と少しだが、銀行では一応主任が付いていたのに、実質ベース年収を下げ、最下層であるアナリストのタイトルから入っての一歩一歩である。素直に嬉しい。
 このblogも基本秘密にしていたのに、「シニアデット」とかでググると最近は一番上に出る時も有ったりする始末で、同僚数人にばれつつある。同僚の人は、これを読んでも正式アナウンスが有るまで黙っている様に!ってここに僕がこのネタを書かなければいいだけの話なのだが、今日はウカれてイカれているので、気にせず書いてしまう事にする。大手のバイアウトファンドのタイトル・ヒエラルキーは大体、投資銀行コンサルティングファーム等のプロフェッショナルファームと同様である。

  • アナリスト
    • 単純長時間頭脳労働をする最下層の知的奴隷。このタイトルから始まるのは、基本は新卒かキャリア3-5年以下の人である。20代中盤位に卒業。
  • アソシエイト/シニア・アソシエイト
    • 一応仲間という意味なので、奴隷は脱出して平民になったという事か。MBA卒は大体このクラスから入社する。投資銀行だと、アナリストとの違いは客先に出て良い身分かどうかと定義付けられるケースもあり。30歳前半位まで。
  • ヴァイス・プレジデント(VP)/マネジャー/アソシエイト・ディレクター
    • この辺から徐々にマネージングロールを求められる。プロジェクトリーダー的立場になり、パートナーの下、アソアナ数名をアサインして実際プロジェクトを動かす事になるが、自分も手を動かす事は当然である。
  • ディレクター/プリンシパル
    • マネージングロールである。営業して案件を取る事も求められる様になる。事業会社や邦銀と違って、プロフェッショナルファームは、明確に上が営業して下が作業するのだ。35-40歳位。
  • パートナー/マネージング・ディレクター(MD)
    • 経営者であり、会社の所有者である。キャリアの終着点。

 こんな感じか。当社は微妙に違うが、大枠こんなもんである。もちろん下に行けば行くほど偉くなる。ちなみに同様にプロフェッショナルファームである弁護士が、たまにトンでもない年収で話題になるのは、その人が大抵事務所のパートナーで、親の総取りで事務所の収益を受け取るからである。パートナーシップ制(合資会社)だったり、その名残を色濃く残す組織では、一般の会社の株主にあたる会社の所有者がパートナーであり、給与の他に会社の儲けを山分けする権利が有るのである。外資でガンガン働いて40代で早期リタイアなんていうのが可能なのは、パートナーに30代でなったりすると、10年とかの単位でドカンドカンと収益配分を受けられ、それで一生分稼げるからで、給与所得をその年のパフォーマンスで貰っている限りは、早期リタイアなんて夢物語。社員の給与と法人である会社の収益では桁が一つも二つも違うのは感覚的に理解できると思うが、この法人としての利益の取り分が有るというのは、給与所得とは違うステージに行くという事を意味している。この様に社員が会社を保有しているというのがパートナーシップの本質なので、その会社の社員に取ってみれば、最終的にパートナーになるのが目標になる。
 パートナーシップ制は、社員利益と株主利益が完全に一致するので、広く資金を調達する必要の無い、知識集約度が高いビジネスではかなり普及している。弁護士事務所・監査法人・ファンド・M&Aブティック等が代表例である。ちなみに、今お付き合いしている弁護士の方の一人が、日本で有数の高額所得弁護士の一人で有ったりするが、その年収実にウン億円の真ん中位である。この事務所は荒事が得意という稀有なスペシャリティが有り、そのバリューの果実をパートナーとして独占したという事であろう。また、ゴールドマン=サックスはほんの数年前までパートナーシップ制を維持していた事で知られている。往時のゴールドマン=サックスでパートナーになれば、巨万の富(数十億円レベル)が約束されており、それゆえ若手は猛烈に働き、熾烈な競争を勝ち抜く意欲を燃やしていたのである。但し、さしものゴールドマンも、マーケットキャピタリズムの時代に入って、引受やトレーディングといったマーケットサイドの仕事をするには巨額の自己資本が無いと話にならなくなり、株式会社に転換してIPOし、自己資本を拡充する事になった。
バイアウトファンドの世界に話を戻すと、パートナーだけが収益分配の権利が有る場合と、その1レイヤ下まで権利が有る場合が有る。このポリシーはファンド次第である。聞くところによれば、米国の老舗バイアウトファンドKKRは、アソシエイトで有っても、会社への貢献度が高ければ、個別に収益配分の権利を与えられる場合も有るとのこと。これは、米国の様にバイアウトファンドも産業として成熟して、シニアメンバーが増えてきた場合には、優秀な若手を引き止めておく良いアイディアかもしれない。
 僕はよりエキサイティングな仕事を求めて会社を移ったので、別にタイトルや収入が目的では無いのだが、こういう形態の会社に入ったなら、目線を上げた仕事を経験する為にも、もう一段ステップアップしたみたいものである。精進せねばならぬ。アフリカの果てしない高原の小さいホテルを経営する位のお金も稼がないといけないし。
 ともかく目出度いので、夕ご飯の時に余裕かまして整体マッサージに寄ってみた。その前が睡眠時間3時間だった事もあり、昨晩会社で椅子に座ったまま朝まで落ちてしまって、腰が激痛だったからである。プロモーションだの何だのと言っても、職場の実態は漫画家とかデスマーチSEとかと同様の現代男工哀史である。うーん。