リーダーシップ論

結局、最後までファイトしていたのは中田と川口だった。
中田はパスミスが目立ったが、これは他の選手が消耗しきって、ボールに触っていないだけだ。
中村は最後ずっと歩いていた。高原も消えていた。
中田と川口だけが、体を動かして、声を出していた。精神力が一つ違うレベルに有ったのだろう。
90年イタリアW杯予選の北朝鮮戦、敗勢でも諦めていなかったのは若き日の柱谷だった。ドーハで最後まで走っていたのはカズだった。ジョホールバルでは中田しか最後動いていなかった。フランスW杯のジャマイカ戦、最後まで走って日本史上初のW杯ゴールを決めたのは中山だった。チームには必ず衆に勝る強い気持ちを持った選手がいるものだ。
日韓W杯では、宮本が印象に残っている。フェイスガードを付けて奮戦し、その後の宮本のキャプテンシーの原点になった様に思う。
宮本という選手は特異な選手である。足が遅くて体は強くないDF。所属のガンバでは4バックの時はレギュラーを失うことも多い。但し、代表ではクレバーなプレイでレギュラーに定着している。
また、ピッチを離れると、同志社大経済学部卒のインテリで、インタビューでの受け応えはソツがない。野球業界で言えば古田の様なポジションをサッカー業界で占めている。
一言で言えば、カラダよりもアタマの選手なのだが、ガチ体育会系のイレブンの中で彼がキャプテンを務めるのは、アタマがいいからでは無く、フランスW杯でのファイトを皆アプリシエイトしているからなのだろう。
ただし、クロアチア戦での宮本は、限界の様に見えた。オーストラリア戦のショックが抜けていない様に感じ、開始からプレイ自体も硬く、PKを献上した後は、ぶつかり合いにも躊躇が出て、川口に叱責されていた。試合が終わった後の表情は廃人の様だった。
今は、宮本の様なクレバーな選手でも限界状態に達する様なギリギリの精神状態にチームはなっているのだろう。その中で、直接3点を失った川口が変わらないパフォーマンスを出し、声を張り上げ、中田も集中力を最後まで切らさずにプレイを続けていたのは賞賛に値する。
リーダーシップとは、小手先の技術が有ったり、弁舌が立ったりする事から生まれるのでは無く、最後までファイトする気迫と、チームに対する献身的な貢献から生まれてくるものだ。その点で、2試合を経て、誰がこのチームの真のリーダーなのかが自然と明らかになったと思う。ブラジル戦での日本代表は、ようやくチームとして成熟して戦える様になると想像する。

  • 最後までファイトしろよ。

言われたことも有れば言ったことも有る言葉だが、サッカーを見ていて、真のリーダーシップとは何かという事に再度気付かされた次第だ。

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