誕生日。

誕生日である。
すっかり忘れていた。大阪への出張帰りに実家に寄ったら、「土曜から家族で東京に行くよ」とかで、そのまま金曜夜に一泊だけして朝そのまま東京に強制送還とあいなり、土曜は東京でフラフラして、夜だけ家族と恵比寿でゴハンを食べた。
家族とのゴハンなので、割と早くに終わり、夜はリベルタドーレス杯の決勝でも見ようかなと思っていたので、それまでの時間つぶしにふと目に止まった漫画喫茶に数年ぶりに入ってみた。
0時をかなり過ぎ、そろそろ帰ろうかと思っていた頃に電話である。

「誕生日おめでとう。」
「えっ。」
31歳の始まりは、漫画喫茶で「働きマン」を読みながら始まった。
ちょwww、こんなうら悲しい誕生日の迎え方は生まれて初めてだったかもしれない。
よりによって働きマンである。安野モヨコが漫画に込めたメッセージを僕は正しく受け取った様だ。働いてばかり居ると結婚できねーぞって。
こんな悲惨な状況下でも、誕生日のディナーは一応予定らしきものが有って、駒場のCOSTA LATINAというアルゼンチン料理の店に行った。南米は極めて食にリッチな地域で、アルゼンチンってのは世界でもベストの牛肉を食べさせる国である。このレストランは初めて行ったが、割と手抜きなく南米の味を食べる事が出来る。名前は忘れたがブラジルのフェイジョアーダに似た黒豆の煮込みであるとか、アルゼンチンのカツレツであるミラネサとか、南米好きにはたまらない懐かしい味である。一口食べただけで、舌が南米を覚えていて、目の前に南米の風景が広がってくる。味もちょいと濃いがクオリティは高い。イタリアンとかフレンチに飽きて、スペイン料理もありふれてるしな、と思うけれども普通のエスニックだと内装がモダンじゃないから・・という我侭な人にはいい店だ。
BGMがデスチャだったのが、相当イマイチだったが、南米ってのは、ごちゃまぜの地域だから、サンパウロで入ったボサノバ・クラブが開店前にデスチャかけてても、あんまり不思議には思わないだろう。
店員の一人がコロンビア人だったので、コロンビア人相手だとお決まりのトーク、「メデジン?カリ?」と聞いたら、カリだよとのこと。コロンビアの首都はボゴタだが、不思議と日本に居るコロンビア人はボゴタ出身が少ない。なぜかと言うと、コロンビア人の日本への入国ルートは、麻薬カルテルがおさえているのだが、メデジン・カルテルとカリ・カルテルというのが二大勢力であり、結果としてカルテルの地元であるメデジン出身とカリ出身の人が増えるということらしい。
僕のポルトガル語まじりのブロークン・スペイン語で打ち解けた後、バルデラマとレネ=イギータの思い出話と、ルイス=ペレアは大成するかというサッカートークをしようと思ったのだが、残念ながら彼は上がってしまったのか、途中でどこかに消えてしまった。
考えてみると、南米の人とはサッカー以外の話を余りしたこと無いような気がする。バンクーバーの英語学校で出会ったブラジル人達とも、よくひたすら数時間サッカーの話をした。彼らがえらくジュビロだとかアントラーズだとかに詳しいのに驚いたものである。サッカーのスタイルも違うが、サッカーから見る世界観も南米と日本では随分違う。日本のサッカー世界観は、欧州を頂点とした雁行型のヒエラルキカルなものだが、ブラジル人は、欧州だろうが日本だろうがカタールリーグだろうが、極めてフラットに世界を捉えているのだろう。どこに行ってもサッカーはサッカーという事だ。