経費精算

 日本企業では有り得ない事だし、多分外資系企業でも有り得ないと思うのだが、どうにもお金にルーズというか頓着しない方で、いつも経費精算を半年近く溜めてしまう。今回も5ヶ月溜めてしまって、バックオフィスから「そろそろ本気でライトオフするよ」と毎日脅迫状が届くようになったので、致し方なくほぼ半日掛けてエクスペンスクレームを書いた。261件ある。金額は・・フタ桁万円のかなり上の方である。入社史上3番目に多額なエクスペンスクレームだ。うーむ。過去は九州往復を繰り返していた時期に、最高で三桁の結構いい数字になった事が有ったが、それには流石に及ばなかった。それでも、金額的には経費精算というよりも、ほとんどボーナスの領域である。独身で吸わない飲まない生活だから手元キャッシュが何とか持つのだろう。経費を溜めるのは僕にとっては財形みたいなもんです、といつしかバックオフィスに言ったら、あほかと怒られた。
 銀行に居たときは、総合職1名につき、ほぼ1名のアシスタントが付いて、至れり尽くせりの状況であり、複雑な融資契約書のドラフトから新商品のバックオフィスオペレーションの立案実行といった仕事から、日々のエクスペンスクレームまでアシスタントの方にお願いしていた。そういえば、タイムシートも月末になると自然と残業が最大時間付いた形で、あとはハンコ付くだけの紙を作成してくれていた様な気もする。まぁそんな高コスト体質だったから邦銀は傾いた・・というのは、コストの大半が信用リスクと支払金利で、人件費なんぞ半分にしても収益は10%動くかどうかという銀行のコスト構造を知らない議論であるが、恵まれていたのは間違いない。
 ところが、今の会社はスパルタンな社風も有って、アシスタントが少ない。こうなると自然とアシスタントの業務に加えて、本来ミドルバックの仕事までフロントオフィスのプロフェッショナルが行うことになる。別にエクスペンスクレームをアシスタントの方に出したいと思っている訳ではないが、事業分析をするに当たっての基礎情報収集や、アウトプットのドラフト作成など、効率的に知的生産をするのに必要な「力仕事」は、業務からアンバンドルした方が効率が良いのは間違いない。個人的には、若い内は力仕事も含めて自分でコンプリートワークした方が、仕事の実力の伸びも速いと思っているが、チームプレイというのは、横にも縦にも仕事を出して、全体の効率を上げる事に最大の意義があるからチームを組むのである。
 また、ミドルバックの仕事の一部でもフロントがするってのは、たぶん金融機関の端くれであるバイアウトファンドにとって、相互牽制・内部統制の観点で、やや不健康な事かもしれない。バイアウトファンドは一般的にびっくりする程人数が少なく、基本的にスタートアップのベンチャーに近い超中小企業なので、話を聞いている限り、フロントとミドルバックが明瞭に分かれているという会社は極めて少ない(無い訳ではない)。今後、バイアウトファンドが機関投資家の資金の受け皿として成長するにつれ、運用機関として当然の管理体制の整備ってのは喫緊の課題として挙がってくるだろう。
 まぁアシスタントが増えても、ミドルバックが確立しても、そのコストの分だけフロントオフィスへの収益期待が高まるのだから、ラクになる訳でも無いし、エクスペンスクレームは多分自分でやんないといけないのだが。一つのアイディアとして、もし専業主婦をしたい奥さんを貰うことになったら、マイ・バックオフィスとして奥さんにやって貰うのもいいかもしれない。自営業とはいえ、働く母を子供の頃から見てきたので、専業主婦というのが想像が付かず、その可能性はとっても低いと思うけれど。専業主婦になりたいとか将来の奥さんが言い出したら、家に居たいという気持ちは尊重するけど、デイトレでもして稼げとか僕は言ってしまう気がする。
 さて、経費精算を終えたことで、数週間以内に結構な金額が口座に入る見込みとなり、少しリッチな気分である。おごって欲しい人は、列を作ってください。(うそ)