遂にクルマ買うの巻。

bohemian_style2006-11-23


 長い間、カーシェアを友人と行ってきた。クルマは12年落ちのオペルヴィータスポーツ。友人の友人から5万円で買った代物である。左ハンドルのマニュアル車というスパルタンなクルマだが、ハンドル放すと真っ直ぐ進まないので、ペットボトルのジュースを飲む時は足でハンドル操作をするという曲芸を要求される事以外は、特段の不満も無かった。学生時代僕はトラックドライバーのアルバイトをしていた事があったが、日本のトラックはハンドルが軽いので、でれんとシートにもたれかかったまま足でハンドル操作しつつ東北道を爆走する、なんて芸当も容易に出来た。しかし、このオペル君は腐ってもドイツ車で、ハンドルが重く、足ハンドルはなかなか難しく、まともに出来る様になるまで半年近くかかった気がする。こんなスキルを磨いても世の役には一ミリも立たないのだが。
 ちなみに、カーシェアという知恵は極めてうまくワークしていて、クルマなんぞ1ヶ月に1度か2度位しか乗らないので、2人で1台で十分だったし、実際使いたい時に使えなかったのは1年に1,2度くらいだった。しかし、物事には必ず終わりというものがあり、友人が結婚して大分ライフスタイルが変わったことを機に、これは解消することになった。僕の方も、三十路を迎えて落ち着くどころか、ますます旅路にはハードボイルドさを求める様になっている。暇な三連休とかは青森の一つや二つ、ダートの林道の三つや四つはカルく行ってしまえという気分であり、それには車中泊が難しく、かつノーマルのヴィータよりインチアップしているせいでチェーンが装着出来ず、かつロードクリアランスもイマイチなヴィータスポーツは役不足になりつつあった。従って、良いタイミングでの解消だったのかも知れない。
 それで、しばらく何を買おうか悩んでいたのである。ヴィータはby chance手に入れたので、実際にクルマを選んで買うのは初めてだったりする。青森の一つや二つ、ダート林道の三つや四つという事ならやはりSUVという事で、心の中の「スパーンとしたのを買っとけ」という囁きにのって、ポルシェ・カイエンもいいなーと思ったり、キャディラックSRXもワル顔で渋いとか感じたり、或いは実用性とは懸け離れた憧れから、マセラティ3200GTも考えてみたりした。しかし、まさに今日衝動的に買ってしまったのは、これらの検討対象と比較するとお値段は10分の1位であろういすゞのミューだったのである。いすゞは乗用車事業から2002年に撤退しているから、勿論中古である。理由を問われても正直困る。オープントップのSUVという極めて中途半端な個性が昔から好きだった事と、タイミング良く程度が良いワインレッドの中古が出ていた事位だろうか。オープントップのSUVと言っても、流石にジープはやり過ぎ感が有り、もう一つランドローバー・フリーランダーの3ドアというのも有るのだが、こいつは車内がフラットにならない。僕はテントも持っているから、寝るときは設営すればいいのかも知れないが、そんなややこしい事はヴィータ時代でも一度もしなかったから、これは解決策にはならないだろう。ちなみに、ミューのオープントップは全てガソリンエンジンなのだが、wikipediaによれば、最終モデルの中で、ガソリンエンジンを積むミューは全国で229台しか売れなかったという極めつけの不人気車である。道理で、goo-netで検索しても、関東に5台しか中古の売り物が無いわけだ。選択肢が無いので、オールインで85万円、即決である。
 ちなみに、好きなクルマを3台挙げろと言われると、もちろんこのミューも入るのだが、他2台はスバル・アルシオーネSVXとルノーアヴァンタイムである。どちらも絶版で、SVXは229台よりは売れたが、まぁ不人気車の部類に入るだろう。アヴァンタイムなぞは、発売開始後2年で絶版という数奇な運命を辿ったクルマである。しかし、なぜにことごとく僕が好きなクルマは不人気なのだろうか。3台はどれをとっても、コンセプト・デザインともに素晴らしいと思うのだが。同じくいすゞのビークロスも好きだが、これも絶版である。日本車に余り個性が無いといわれるのは、自国市場で個性に溢れるクルマが売れなかったから、というのもきっとあるだろう。特に300万円前後と、そこそこのお値段がするカテゴリーは最近特に没個性だ。これは日本のミドル・アッパーミドル層が保守的だという事を示しているのだろう。今売ってるクルマだと、ムラーノはなかなかいいなと思うのだが、これも米国における実販の5分の1と控えめな月販1000台の目標を達成できてないそうな。
 てな訳で、クルマをゲットした。なんだかんだで納車までには2週間くらい掛かるが、楽しみである。冷静になってみなくても、僕が属するバイアウトファンド、及び隣接業界として投資銀行IBDを見渡しても、こんなクルマに乗ってる野郎は見たことが無い。また物議を醸しそうだ(?)。基本的にゴルフとかで業界の人々が集まると、

となるのが普通である。また、IBDにしろ、そこから人材供給を受けるバイアウトファンドにしろ、基本的なカルチャーは東海岸のクラシックな銀行の雰囲気が残っているので、外車は外車でもセントリックなドイツ車ばっかりなのである。ドイツ車の品質は疑いないが、皆が皆それを選ぶ所に、行き過ぎた保守性を感じてしまう。皆ドイツ車に乗り、ロレックスをする。それは西海岸的な人とか、見る人が見たら、プアな選択だと思うかもしれない。ただ、物事には例外もあるのは勿論だ。知る中で最もBanker's choiceから離れているのは、黄色いセリカに乗っていて、流石に古くなったのでプリウスに買い換えた、というケースである。そういえば、この方になぜプリウスにしたのか聞いてみた事が有ったが、「だって地球に優しそうジャン」とカルい一言をケラケラ笑いながら言っていた。かつて初代プリウスが出た時に、僕の出身大学の中で最もコンテンポラリーな雰囲気の教授グループがこぞってBMWを売ってプリウスに買い換えて居たが、インテリジェンスが高い母集団であれば、こういうクルマを持つのがクールだと思う人が一定数居るのだろう。
 僕のミューは3.2リットルのガソリンエンジンで、決して地球に優しいクルマでは無いが、オープントップで悪路走破性も良く、少なくとも地球と親しめるクルマなのは間違いない。この冬は、早速南紀でも行って、最近全通したホイホイ坂林道の五つや六つ位走ってこようと思っている。