ヴーヴ=クリコ ロゼ レゼルブ 1998年

 金曜は親しい友人と家飲みだった。飲めない僕に対して、うわばみが二名来ていたので、飲みたいけれど、一人では空けられないお酒を開けた。二本ある。一つは昨年行ったチリで、ワイナリーに行って買ったコンチャイ・トロで、もう一つは、ピンドンならこっちの方が100倍いいと言われたヴーヴ=クリコ ロゼ 98年である。後者は、ホストクラブで実際ピンク・ドンペリニオンをじゃんじゃん入れてそうな方からのお勧めで買ったので、特に期待していた。
 コンチャイ・トロのテルーニョ2003年。日本でも手に入るワインだし、さして高価なワインでも無いが、ワイナリーで試飲したワインの「もぎたて感」たっぷりの味を思い出すには、フルボディのこってりとしたワインより、こういう若々しく、まだ果実の趣を残すフレッシュなワインがいい。まだ旅の追憶を追う年齢でも無いが、一口口に含んだ瞬間、明るい早春のチリのワイナリーの風景がビビッドに思い浮かんだ。ヨーロッパからの訪問客が多く、オリエンタルは僕一人だった。アンデス越えのハードな旅行に疲れ果ててサンディエゴに転がり込んだ僕には、そんな「OLの自分へのご褒美旅行」みたいなノリでワイナリー巡りをするのが丁度良い塩梅で、妙にリラックスできたのを覚えている。

[NIKON D80/SIGMA 50mm F2.8 DG Macro]
 続いて開けたのがヴーヴ=クリコだ。何時間か経って、大分ダレてきた頃に開けたのだが、目の覚める様にシャープで、かつコクのある味わいに驚いた。細い甘さの奥の味わいがとても深い。98年と言えば、僕が社会人になった年である。あれから8年。僕の熟成はむしろ苦いか。98年という数字はやはり特別だ。それを見ると、ついそんな事を考えてしまう。
 僕は余りお酒が飲めないので、いつもはワイングラス一杯開けるのに割りと必死なのだが、これはくいくいっと体が飲み干すのを欲するのを止められず、あっと言う間に飲めてしまった。かなり前、20代の前半に、大阪屈指のグラン・メゾンであるラ・ベカスで80年代のクリュッグを飲んだ時にも同じ様な衝動を感じたものである。その時が、イマイチ判らなかったワインやシャンパンの美味しさを理解できた瞬間でもあったのだが、久しぶりに同じレベルに入ってくるシャンパンを飲んだと思った。
 僕は、お酒が弱いので、レストランに行っても、相手が相当強くないとボトルで頼めないし、相手にとっても特に女性であれば余程気を許してないと男性の何倍もガバガバ飲むのは躊躇するだろうから、勢いグラスになってしまう。最近は、グラスワインやシャンパンでもいいのを出すお店が増えてきたが、それでも限界はある。そんな事情でここんとこ余り良いお酒を頂けてなくて、今日はとてもいい気分になった。
 さて、家にワインはまだ山ほど有るのだが、数が少なかったシャンパンのいい方が消費されてしまったので、何か買わないといけない。飲んだこと無いのでサロンの96年とかを考えている。人が来ないと開けないから、いつ飲めるのか知れたものではないが、開ける時のシチュエーションをあれやこれやと想像しつつ、家においておくのも一つのワインの愉しみ方である。