初日の出を寿ぐ

 仕事の都合でニューヨークでのNew Year's Eveがコケ、代わりに5-6日ほどスノボ合宿でそろそろ中級者脱出と意気込むも、一緒に行く相手が「ぎっくり腰」とかでコケ、とにかく流れの悪かった2006年後半を象徴する様な年末年始だった。とはいえ、何もしない訳にもいかず、買ったばかりのいすゞミューの限界を知るべく、北国に3泊ほどドライブ旅行に出た。通ったことはあるが、行ったことはない白川郷でまともに観光したり、福井は九頭竜湖ほとりにあり、かつて訪れて大変気に入った民宿「ふる里」を訪れて再び鴨鍋を食べたり、冬にしては珍しく晴れて、クリアに黒部連峰が見える富山で冬の魚に舌鼓を打ったり、割と盛り沢山では有ったのだが、目的は、最終日と定めた元日朝の初日の出である。
 かつて、もうあれは7,8年前になるだろうか、埼玉からダート道を、とんでも無くアグレッシブな運転をする後輩女性のドリフトで抜けて長野に出たことがある。そのドライブは、最後八ヶ岳山麓からの冬の日の出を息を呑んで見つめて終わったのだが、これを再び無性に見たくなったのだ。いつかblogに、夕焼けは日が沈んだ方が赤くなる事に気付いたのは随分年を取ってからだったと書いた覚えがあるが、朝日について言えば、山岳地帯での朝は山頂から明るくなる事に気付いたのも社会人になってからだ。地球は丸いから、山頂にまず朝日の一閃が届いて、そこから徐々に地上が明るくなるのである。

Red Kaikoma
[NIKON D80/AF-S NIKKOR 18-200mm F3.5-5.6]

  • 甲斐駒ケ岳。山頂より紅に染まる。

 深夜に八ヶ岳山麓の牧場の中の見晴らしの良い場所に着いて、そこで零下10℃近い厳寒の中、シュラフ車中泊した。ミューの車内は予想より狭く、快適では無かったが、目覚ましが鳴るまで起きる事は無い程度には深い睡眠が取れた。起きだして、息を潜めて日の出を小一時間ほど待った。闇の世界が徐々に群青になり、そして紅に染まっていく様は美しい。冬の朝日はいつだって人を厳粛な気持ちにさせる。

sunrise 2007
[NIKON D80/AF-S NIKKOR 18-200mm F3.5-5.6]

  • 闇の2007年に最初の一閃が届く。

 この場所が取っておきなのは、朝日は遥か甲武信の国境の山地から登り、その光を背後の八ヶ岳が受け止めて真紅に染まり、そして眼下を見下ろせば、甲府盆地、そしてその向こうにはくっきりと富士の山容が見えるという贅沢さゆえである。7,8年前の記憶を辿って、果たしてどこで見たのかと八ヶ岳山麓を彷徨ったが、程なくして、正しい場所を見つけ出した。調べずとも辿りつける自信が何故か有った所に、自分の「地理力」の向上を実感する。

Fuji at the first day of 2007
[NIKON D80/AF-S NIKKOR 18-200mm F3.5-5.6]

  • 誰が見ても美しい山である。そういえば実家に東山魁夷だか西山懐疑だかのこんな構図の日本画が有った気がする。

遅ればせながら、明けましておめでとうございます。本年もよろしく。