ベルルティ

 夏になると薄手の、明るいスーツを着ることが増え、それにあわせて淡い色の靴の出番が増えてくる。暑くなって暫く経ち、少々お疲れ気味の淡い色の靴軍団を、梅雨の終わりを控えてまとめて磨いてみた。使うワックスは、サフィールのコニャック、ル・コルドヌリ・アングレーズのライトブラウン、そしてハンズセレクトのキャメルブラウンである。このキャメルブラウンの様な微妙な色は、普通無色のアニリンカーフのものを使うのか、あまりチョイスが無い。これは、偶々ハンズで見つけて買い求め、目立たない所で試しても問題なかったので、その後愛用している。
 馬毛のブラシでブラッシングした後は、ほんの2,3滴靴に水滴を垂らしたあと、モウブレイのポリッシングコットンでワックスを軽く伸ばしていく。革靴に水なんて、と言われるが、僅かに水を付けた方が確実に輝きは増す。その後は、同じくモウブレイのグローブクロスで乾拭き、というのが通例のコースである。一日の終わりに、無心になってこれをやると、激しい仕事に毛羽立っていた心が落ち着いてくる。一日の始まりは無心にその日着るシャツにアイロンを当て、一日の終わりは無心にその日履いた靴を磨く。忙しくても、英国人の様にこの習慣を墨守している。


[NIKON D80/SIGMA 50mm F2.8 Macro]

  • 磨き上げれば良い革は鏡の様に輝く。手前からクロケット・ジョーンズ、ブルーノ・マリ、リドフォート。

 季節の変わり目は、物欲の時間である。そういえばバーゲンが始まったが、今年は余り大きな買い物をしていない。ステファノ・ブランキーニの代理店である代官山の42nd Royal Streetから招待状も来ていたが、割と靴マニアなのに全く靴に手を出していないのは珍しい。
 実は、単純に、バーゲンの前にでかい買い物をしてしまったからである。ベルルティのOlga III。パティーヌが実現する複雑な色合いに一発ノックアウトだった。ベルルティの当主、レディ・オルガの名前を冠したモデルである。レディ・オルガと、その若き日の顧客、アンディ・ウォーホルとの出会いの話は余りにも有名だ。ビスポークじゃなくて、既製なのにPCとかバイク並みのお値段だが、足に吸い付くような素晴らしい履き心地である。高くない買い物だ。靴にしろ、ソファにしろ、ベッドにしろ、体重のかかるものは物の良し悪しがストレートに出る。
 
ベルルティ



[NIKON D80/SIGMA 50mm F2.8 Macro]

  • 色は微妙な、深い緑。ベルルティらしい色。

 ちなみに、怖くて買って1ヶ月、まだ1回しか履いてない。