酒に対しては当に歌うべし
この題名に対して、人生は幾ばくぞ、とすっと出てくる人は、相当の三国志マニアであろう。魏武曹操の「短歌行」という詩篇の冒頭で、中学生当時三国志人名辞典を諳んじる勢いだった僕は、当然この歌も諳んじており、曹操が言う位だから、酒ってのは本当に旨いのだろうな、と信じていた。が、どうでもいい話ではあるが、高校になって文化祭の打ち上げか何かで初めて飲んだ「白角水割」は15歳には理解不能の味で、何となく曹操に裏切られた思いを持ったものである。
ちなみに僕は、まったくアルコール分解酵素を持っていない体質で、ビールをコップ半分でいい気分、それを超えると寝てしまう、というプリウスもびっくりの燃費の良さである。この体質なのに、なぜかお酒をちょこっと飲むとか、口をつけるとかは大好きで、旅行になるとふらっと酒蔵に寄ってしまうことも多い。ここ数年南西諸島に行くことが多く、北は喜界島の黒糖焼酎から、南は宮古の泡盛まで、楽しく頂いた。黒糖焼酎は、ここんとこずっと続く焼酎ブームでもまだマイナーな部類に入ると思うが、喜界島と奄美大島だけで作られているサトウキビ原料のお酒である。要は、日本のラムみたいなもんである。西麻布の「タフィア」に行くと、これでもかと個性豊かなラムが出てくるが、喜界島の黒糖焼酎も蔵ごとに味が全然違って面白い。僕は、タフィアのスタッフが良く行かれているフレンチ・マルティニークには行ったことが無いが、周りのバルバドスやトリニダード=トバゴには行った事がある。バルバドスでは、Malibuの牧歌的な本社を訪れたが、黒糖焼酎と作り方は途中まで殆ど同じで、違いは麹を使うかどうか位では無かろうか。
宮古の泡盛も、なかなか危険な存在である。宮古の泡盛は本島のと比べると、スッキリして口当たりが良いが、古酒なると人を引きずりこむまろやかさを出す。蔵で少しだけ舌を湿らせた古い古い泡盛は、正直このまま運転代行を呼んでしまおうか、と思える様な味であった。そこで買った古酒は、今も僕の家の台所の下で眠りにつきつつ、味を磨いている。
[NIKON D80/ AF-S VR NIKKOR 18-200mm F3.5-5.6]
- 宮古の古い酒蔵。ルパン募集。