米大統領選ヨモヤマ話

 与太話である。僕について半年くらい前からオバマに似てる説が流れている。その様な説が流れる自分の姿かたちは、オーセンティックな日本人として如何なものかと自分でも思っている。もう少し前には、カンボジアのフン=セン首相という説もあった。大きくまとめれば、国を率いる指導者の雰囲気が僕にはあるということなのかもしれない。よって、「大森うたえもん説」「麒麟の声のいい方説」「ゲイバーのママ説」とかの少数説については聞かなかったことになっている。
 僕の顔が誰に似ていても世界は変わらないが、世界を変えるかもしれないオバマはバイデンなるベテランを副大統領に選んだ様である。経験不足と突っ込まれ続けたので、手堅いのを選んだのであろう。ブッシュ Jr.が現職副大統領のゴアを相手にした最初の大統領選で、ベテランであるチェイニーを副大統領に選んだのと同じである。しかし、今回の相手はオッサンであるマケインだ。オッサン相手にオッサンをパートナーに持ってくるのは余りぱっとしない。攻めか守りかと言えば、これは穴熊並みの堅い守りの一手である。クリントンが、ブッシュ Sr.を相手にした時は、若めコンビでゴアと組んで、少なくとも勢いがありそうな雰囲気は醸し出していたのとは対照的である。
 一方で、オッサンのマケインはぐっと若い40代の女性を副大統領候補にもってきた。僕の知っているSarahは全員セーラと読むが、日本語表記はサラ=ペイリンである。ヒラリー=クリントン票狙いとか言われているが、さすがにそこまで短絡的な話ではあるまい。 
 無論、米国の選挙は有権者の属性ごとに相当細かくデータオリエンティッドな分析が行われている。判りやすい話としては、マケインが副大統領を選ぶにあたって、自分が一番浸透していない層や浮動票が多い層(ex.白人女性層、ヒスパニック等)に対するリーチがある候補者を選ぶ、というアプローチがあると思う。ただ、考えてみると、これは有権者にとって既知の候補者でないとなかなか正しく分析できないアプローチである。もちろん、民主党支持者に、共和党が女性副知事を選定したら、民主党でなくて共和党に投票するか、と一般論として聞くことは出来るだろうが、その結果と、悪名高き全米ライフル協会に所属し、妊娠中絶に反対するサラ=ペイリンに民主党支持者が実際に投票するであろう結果は大分違ったものになるだろう。
 あと、サブプライムを期にとんでもないことになりつつある米国経済が重要な課題という観点では、ミット=ロムニーやカーリー=フィオリーナを副大統領候補に、という話もあった。ロムニーは言わずと知れた、我らがバイアウトファンド業界の最大手の一つ、ベイン・キャピタルの創業者であるから、経済向きの話には打ってつけの人物である。しかし、この金融危機下であってもそうならなかったのは、多分過去の正副大統領候補に経済よりの人物が居なかったのと同じであろう。米国においても、政治的リーダーと儲けの匂いはオフィシャルには距離をおくべきで、経済は財務長官あたりのユダヤ人に任せれば良いものなのである。
 こうつらつら考えてみると、ペイリンを副大統領候補にしたのは、層の取り合いでも課題への適合性でも無く、マケインに欠けている「華」みたいなのを補う為にはどうしたら良いかという、選挙のモーメンタムへの対策が理由では無いかと思う。また、その狙いはそこそこ成功するのでは無いだろうか。ある国が産むエンターテイメントは、それが映画でもアニメでもゲームでも、何であってもその国が見たいストーリーが色濃く反映される。日本では、萌え系は言うまでもなく、ドラクエガンダムジブリも現実感の無い少年少女が主人公なのに対し、米国ではコナン・ザ・グレートにしろ、インディ・ジョーンズにしろ、ダイ・ハードにしろ、GTAシリーズにしろ、基本オッサンが物語の主人公であり、ヒロインには若すぎない成熟した女性を配す。米国は、ベビーブーマーのオッサンが現状を変えて活躍する話が大好きなのである。
 マケインは冴えないオッサンだったが、ペイリンがパートナーに選ばれたことで、共和党候補の絵に、海軍の老雄とヒロインみたいな、ハリウッド的な華が急に出てきた感じだ。これは米国受けするんじゃないかと思う。また、話題性のあるオバマにこれまで集中していたメディアが、一部ペイリンに向くだけでも、大分共和党の注目度は上がるだろうし、またネガティブなブッシュ色みたいなのも払拭できる筈だ。ペイリンという選択は、賭けの要素もあるが、上の分類からすると攻めの手である。オバマが相棒にヒラリーを選んでいたら、ペイリンのインパクトは弱まったと思うが、堅くバイデンを選んだことで共和党が面白くなってきた。個人的には、六本木にある某欧州系投資銀行の受付の女性が、年の頃も雰囲気もメガネツンデレ系(想像)なのもペイリンにそっくりなので、オバマ似の僕とどういう対決になるか、そちらにも注目しているが・・。
 さて、ここ数日のニュースから、両副大統領候補、バイデンはシラキュース大、ペイリンはアイダホ大の卒業という記述を見つけて、そういえば両党の正副大統領候補4人に誰もイェール大卒が居ないことに気が付いた。共和に民主と党派は分かれど、ブッシュ Sr.→クリントン→ブッシュ Jr.と続いたイェール大閥もこれで終わりである。ただ、ブッシュ jr.は院はHBSであり、オバマも院はハーバード・ロースクールだから、オバマが勝てば、イェールの時代が終わって、ハーバードの時代が始まるのかもしれない。

■出典:Associated Press