Sex And The Cityと女性誌

 金曜日は久しぶりに夜遊びをした。と言っても、赤坂の地中海料理屋で食べて、同じく赤坂の沖縄料理屋で少し飲んで、その後夜の2時から六本木ヒルズでSATC ( Sex And The City )の映画版を見ただけだが。
 映画版SATCについては、ここ1ヶ月位、色んな活字媒体に出ていた。そのどれもがしょうも無い評論であったので、どんなつまらん映画なのかと見る前は思っていた。「最後は女友達の絆ということを表現した」「40代でも恋できることを発見した」云々。多分、そういうストーリーやメッセージに意味のある映画では無い。ストーリーを簡潔にまとめれば、15分おきにサマンサがLAから来て、キーっと騒ぐ、というのを7,8回繰り返し、最後にセレブがジミ婚するだけである。映画がストーリーだとすると、中身はゼロである。
 これは、要は会話付き女性誌である。三浦りさ子がダイアン・フォン・ファステンバーグのサマードレスに、ルブタンのサンダル、マルベリーかKOOBAあたりのバックでザ・カハラ・ホテルを闊歩している図を見て、「いいなー」と思える多数派の女性にとっては、この映画は楽しいだろう。また、その三浦りさ子の隣に、素足でローファーのラテン男を挿入すれば、ちょい悪系男性誌の絵になるから、それ見て妄想ふくらますかなり悪い系男でも、楽しめる筈だ。よく見てみると、殆ど商品カタログと変わらない構成の雑誌が、世にこれだけ氾濫しているのだから、もともと商品という記号に彩られたセレブだとかリュクスだとかを人は好きなのである。ただ、それを雑誌ではなくて、TVドラマや映画という動画フォーマットでやったのがSATCの新しい所だ。ダイナスティ、という先例もあるが、あれは到底真似できないファッションだった。SATCでは、現代人が頑張れば買える高級品でセンス良く身を飾っている。「バブルへGO!!」と同じで、ストーリーよりも、キャラと風俗を楽しむ映画である。
 この映画の構成要素に、男性のファッションは全く入っていないのだが、見終わると、なぜか男性である僕もウキウキとして、とっても買い物したくなった。ここんとこ、オンもオフも地味めが好みになりつつあって、最近買ったブランド品と言えば、2個のプラダのバックと、2着のドルチェ&ガッバーナのトップスだが、どれも地味な代物だ。それが、映画が終わると、ケバいスタイル上等!モード万歳!という気分になってしまい、そのままストラスブルゴに突撃せん勢いだったが、終わったのが深夜4時ということで、僕の財布は九死に一生を得た。知り合いの女性が、「知ってる30代中盤の独身女性は、魅力にイマイチ欠けるか、Sex And The Cityになっているか」と辛口なコメントを出していたが、こう楽しく恋愛と消費生活を描かれると、確かに独身にとって結婚する意味薄れる映画ランキングでいいとこ入るであろう。
 あと一点興味深いのは、主人公のキャリーが、最後は不器用で割と伝統的な男であるBIGとジミ婚するとこである。LAでの純愛を捨てて、奔放な恋愛をしにNYに戻るサマンサは主人公ではなく、主人公は、Last sigle girlと呼ばれつつも、なんだかんだと男に合わせてパリに行ってみたり、お堅い男とジミ婚してみたりと保守的なキャリーなのである。お陰で映画は、終わり際トーンダウンした感じが否めなかったが、多くの評論がリアルだと指摘する、登場人物が美人過ぎずスッピンで出たりするとこよりも、この女性の描き方の方がよっぽどリアルかもしれない。

  • なお、このブログエントリは、なるべくストーリーに意味を持たせず、レーベルとバズワードで一杯にする「SATC話法」で書いてみました。


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