携帯の秋冬モデルに思う

 まだDocomoの秋冬モデルは発表になっていないが、AUSoftbankは発表になった。AUVGA以上の高精細な有機ELディスプレイ搭載モデルがついに出た様で、これは実機を見てみたいものだ。こういったディスプレイの綺麗さを表す指標として、コントラスト比がよく使われる。コントラスト比とは、ディスプレイの最も明るい白と、最も暗い黒の輝度の比であり、要は画像の明暗比のことで、大きければ大きいほどくっきりとした絵になる。液晶というのは、画面自体は光らず、後ろからバックライトで照らして光らせているので、どうしても黒が「明るい黒」になってしまう。よって、携帯の液晶だと、大体3000:1というコントラスト比がせいぜい、という感じである。一方、有機ELは自発光型というバックライト不要のデバイスだから、公称30000:1、実際には計測機器の限界を超えていて測定不能であり、多分100000:1は有る、と言われている。僕は、かつて、携帯に初のVGAを積んだ904SHを速攻買って、その綺麗さに驚いたものだが、携帯を電話以外に使う時は大抵ディスプレイを見ているものだから、それが綺麗に超したことはない。
 という訳で、今回のAUの売りである有機ELディスプレイは僕には十分ささったのだが、残念ながらPR的に見ると、こういう「見てみないと違いがわからないもの」を、判りやすく伝えるのはなかなか難しいものだと思う。その意味で、今回タッチUIの携帯を揃えたSoftbankは、iPhoneでその可能性を十分示した後で、メディアもユーザーも理解の下地が出来ていたタイミングだったから、判りやすい特徴を示したと言えるかもしれない。
 何機種も出た中で、SamsungOMNIAは海外でも人気のタッチUIの携帯で、これが出ると聞いて非常に期待したのだが、日本向けにローカライズをしまくって、舶来品そのものではイマイチ無さそうである。OS自体もWindows Mobileから独自OSに変わってしまっている。しかも、ワンセグに対応した割に、お財布ケータイが入っていない。ワンセグも急なサッカーの試合とか見るのに便利だが、もはやお財布ケータイは社会インフラの一つだから、これはローカライズの順番が逆であろう。
 もう一つ、931SHなんてのも出て、これはスライド式で、タッチUIを基本としつつ、スライドさせると普通の携帯のボタンが現れるという両UI対応である。iPhoneは機能は豊富ながら、UIはソフトウェアや機能をまたいでも、極めて統一感がある仕様としているのに対し、931SHは機能も全部入りだが、UIも全部入りで、この辺のあらゆる客層への公倍数的なアプローチは大変面白い。
 能にしても、浮世絵にしても、日本庭園にしても、現実から要素を引き算して抽象化するのが日本文化の特質かと思いきや、それはどちらかというとiPhoneが具現化した世界に近い。一方で、神仏習合にしても、安土から江戸の流れ、或いは文明開化にしても、日本はいにしえより様々な文物を海外から受け入れて、それを日本化するプロセスを踏んだが、それは日本古来の携帯機能・UIに、タッチUIという舶来品を追加した931SHは、むしろそちらの伝統を受け継いでいるのかもしれない。
 文化や芸術になると引き算をして、ミニマリズムアメリカで生まれたが、それに通ずる禅的な単純化を行うのが、日本の型みたいなもんだが、思想や技術になると、逆に八方美人的に足し算になってしまうのも日本の型である。
 さて、話が途中とんでも無い所に脱線するが、最後はやっぱりカメラの話に戻るのが当ブログの型みたいなもんだが、AUSoftbank、双方から800万画素のモデルが今回出た。AUはCasio、SoftbankSHARPである。AUCMOSの様だが、Softbankの方の930SHは、CCD+メカニカルシャッターらしいので画質は期待できる。携帯のカメラの画質は、レンズの質、センサーの種類(CCDかCMOSか)、あと動きものや輝度差が激しい時はシャッター(機械式か電子式か)で大体決まり、CCD+メカニカルシャッターというのは、画質が良い同士の組み合わせである。要は、ノイズは少なく、動きものに強く、スミアが出にくくなる。ただ、最も大きな変数は、前のエントリで書いたSH905iの色ズレを見ても、レンズの質であると僕はにらんでおり、こればっかりは撮ってみないと判らない。僕が欲しいコンデジの一つに、Olympusのμ1030SWという、10m防水というエクストリームなスペックの、シーカヤッカー・シュノーケラー御用達のモデルがあるが、こいつは、汎用品の1010万画素・1/2.33型CCDを使っているのに、えらい画質がまずいのである。他メーカーと同じセンサー、自社他モデルと同じシャッターや画像エンジンを使って画質がまずいのは、防水性を気にしたこのモデルのレンズが原因としか思えない。レンズはなかなかスペック化しにくく、有機EL以上にPR的にアピールしにくいネタであるが、今回の携帯2機種には、折角の800万画素センサーを生かせるレンズを頑張って積んでいることを期待したい。