大分再訪 其の二

○前編はこちら→2008-10-29 大分再訪其の一
 さて、朝湯に浸かり、長湯温泉を立ち去った後、目指すは九重の大吊橋である。長さも水面からの高さも日本一、という歩行者用吊り橋だ。群馬もいい温泉にいい橋あるが、大分の方が双方上手かもしれない。四万十川沈下橋とか、日常使われる橋そのものが人をエキサイトさせる逸品と違って、最近出来た観光橋ではあるが、人間は悲しいかな、高いところが好きである。
Yume bridge
[NIKON D700 /AF-S VR Nikkor 70-300mm F4.5-5.6G /220mm F7.1 /Landscape]
 紅葉の谷底を人は見つつ、橋を渡ることになる。そこそこ混んでいたので、渡るのは15分位かかる。結構揺れるので、気持ち悪くなる人もいるだろう。あと、渡ってて気付いたのは、この橋の上の人の平均年齢の高いこと。50歳は超えているのではあるまいか。十分若者でも楽しめる所だと思うのだが。平均すると、若い層がひきこもって旅にも出ない、という事なのかもしれない。
Rainbow pot
[NIKON D700 /AF-S VR Nikkor 70-300mm F4.5-5.6G /95mm F7.1 /D2XMode1]
 その高い年齢層に合わせたのかどうかは知らないが、ラムネが売っていた。ラムネは好きだが、そろそろ肌寒くなる季節、なかなか手は伸びない。色ごとに味が違うのだろうか。暖色系のラムネは、やや認知不協和を起こす。
No wig on the head
[NIKON D700 /AiAF Nikkor 24-85mm F2.8-4D /66mm F4 /Landscape]
 あんまり木ってのは上から見ることは無いものだと思うが、あえて見てみたのがこの図。下からは判然としないものだが、上から見ると、枝というのはどんな木であってもフラクタルに空間を埋め尽くしていくものだとよく判る。


 日曜の締めは別府であった。別府は竹瓦温泉という、別府の代表的な立ち寄り湯には行った事が有ったが、有名な地獄巡りというのには惹かれなかったので、結構時間は有ったのに、前回は温泉のあと、街歩きをして終わってしまった。ぶらついて判ったことは、別府は九州有数の歓楽街だということだけだが。湯布院が箱根だとしたら、別府は下世話な熱海なのである。今回も、時間が有るので、とりあえず地獄をひやかして見ることにしたのだが、これが予想外に面白くて、有名観光地もあながち馬鹿にしたものでは無い、と再認識してしまった。別府は、湯量・源泉数日本一なだけあって、流石にお湯の吹き出方もバラエティに富む。草津と恐山を足して、さらに倍率2倍を掛けた感じだろうか。海地獄と鬼石坊主地獄というのを見てみたが、まさに「大地が生きている」。海地獄は外国人観光客も多かった。黒人観光客に混ざって写真を撮られ、足湯に浸かって温泉卵を食べた。まぁ観光である。
Lotus 1-10
[NIKON D700 /AF-S VR Nikkor 70-300mm F4.5-5.6G /200mm F6.3 /Landscape]
 海地獄は、硫酸鉄を含んだ98度の青白いお湯が噴出するという尋常ならざるスポットであるが、それ以外にも大小池があり、そこには熱帯に本来住まうべきオオオニバスが、地獄の熱を利用してプカプカ浮いている。これは子供も乗れるそうだ。丁度蓮の季節なのか、花があちこちで咲いていた。蓮は長玉系のアマチュアフォトグラファーには格好の被写体で、ネット上に幾らでも作例が転がっている。だけど、僕は長玉を持っていないし、蓮はお昼くらいには花が閉じ、3日間しか咲かないという気難しい代物で、それに合わせて撮りに行くほど蓮好きでも無いので、まだ撮ったことは無い。そういう意味では、カメラオタとしてはラッキーで、労せず沢山の蓮写真をものすることが出来た。花マクロは専門外だが、たまには良い。
Men and his past
[NIKON D700 /AiAF Nikkor 24-85mm F2.8-4D /85mm F5.6 /Landscape]
 また、地熱を利用した植物園もあり、そこにも蓮があふれていた。ついでに、蓮で休むトンボと、たぶん彼の過去入っていた抜け殻付きである。遺伝子がプログラムした、こういう所で脱皮しろ、という命令にトンボは忠実な様に見える。蓮は、花を囲む蕾みたいなものが4方向に開いているが、決まった1つしか使われていない。不思議なものである。
Defensive
[NIKON D700 /AiAF Nikkor 24-85mm F2.8-4D /85mm F4 /Landscape]
 同じく植物園にあった定番のサボテン。置物の様だったが、緑の本体に白の刺の見事なコントラスト。最近、自生のを見たのは、ボリビアはウユニ塩湖の真ん中、昔の隆起珊瑚礁の跡だったか、とふと思い返す。

 さて、1泊2日のそう長くも無い旅であったが、大分はやっぱり魅力的だと再確認した30時間であった。せっかくアジアに近いという地の利が有るのだし、この魅力はもっと世の人々に訴えかけるべきであろう。別府は、多少古さや昭和的猥雑さが目立つので、もう少し投資をし、地獄関連から哀愁が出てしまう昭和の匂いを廃して洗練させるのと同時に、歓楽街と温泉街を分けた方がいいだろう。国東半島は、今のままでもいいのだが、もう少し国東全体で熊野古道の様な一まとまりのパッケージとしてストーリーを練った方が良いと思われる。また、山岳地方は、素晴らしい自然と温泉があるのだから、ここも個々のスポットがそれぞれ頑張るだけで無くて、名湯・秘境地域というイメージを作りたいものだ。関西人や東京人に湯布院と長湯、熊本ではあるが近隣の黒川温泉の性格の違いが判る人は少ないだろうから、その特異な個性を対比させてアピールするのも良いだろう。海岸沿いのコンビナートは、普段一般人は近付けないだけに、産業観光の一つのネタにもなる。ざざっと並べるだけで、ハウステンボスとかシーガイアとか、箱もの作らなくても良いだけのコンテンツが有るのだから、後は改良とマーケティングの問題である様に思うのである。ホテルマニア的には、九重連山で本格的な山岳リゾートをやってみたい。雪が降らないのが唯一の難点だが。

Uniqueness
[NIKON D700 /AF-S VR Nikkor 70-300mm F4.5-5.6G /270mm F5.6 /Landscape]

  • 山岳リゾートの周りには落葉樹が必須である。九重の吊橋の辺りはそれ程標高高くないが、一部の枝は既に紅葉を迎えていた。むらがあるのは、この枝だけ日当たりが悪いからなのだろうか。黄色と緑は人の目に何故かやさしい。この写真は、NIKONのピクチャーコントロールの「風景」を用いたが、ハイコントラストだが、コンパクトデジカメの様に色が濁らず、透明感を残していて、なかなか良いと思う。

 ホテルマニアを離れて、カメラマニア的には、歩く旅に初めてD700のフルセット持ち出してみたものの、これは重すぎると感じてしまった。カメラは合わせるレンズと三脚でだいぶ変わる。今回は三脚は持って行かなかったが、レンズは4本持って行った。

  • 望遠:Nikkor VR70-300・・・745g (離れた被写体を切り取って撮る時)
  • 標準:Nikkor 24-85/F2.8-4・・・545g (普通のスナップ、風景)
  • 超広角:TOKINA AT-X17/F3.5・・・435g (空とか海とか広く撮る時)
  • マクロ:SIGMA 50/F2.8 Macro・・・320g (寄って背景ぼかしたい時)

D700が990gで、更に4本のレンズ合計が2,045gである。ポートレート撮る訳でも無いのに、持っているスピードライトで一番重いSB-900持って行ってしまったので、加えて415gの上に電池も要る。要は4kg位の機材を持って歩いているのである。今まで、バックパッカーしてた時は、585gの中級機D80に560gのVR18-200、320gのSIGMA 50/F2.8 Macroという組み合わせだったので、スピードライトのSB-600入れても全部で2kgという所である。
 それでも、銀塩時代は超軽い335gなのに1/4000秒・7点測距と切れ味良かったα sweetⅡに、420gのTAMRON 28-300一本だったから、デジタルになって重くなっているのである。高価でセンサーサイズの大きい、折角のFXでは有るが、D700D80より更にずっしり重いから、歩き回る旅にはちょいときついかもしれない。どうしても重いFX機持っていくなら、1:2の簡易マクロが付いているSIGMA APO70-300/4-5.6あたりに、PENTAXの様に17-45/4が有れば良いが、NIKONには無いので18-35/3.5-4.5と50/1.4を組みあわせる位だろうか。これならレンズ合計が1kgちょい超え位である。ただ、100mm以上は手振れ補正が有って当然の世の中になりつつあるので、次のリニューアルでSIGMAがOS(手振れ補正)を付けてくれないと、なかなか選択肢として現実味を増さない。このレンジは、カメラメーカー純正の手振れ補正付きになると結構高いので、サードバーティで70-300mmにテレマクロも手振れ補正も付いている、という事になれば、純正はピンチになること請け合いである。
 また、写真のバックグラウンドストーリーが判り難い寄ったマクロを旅先で撮ることは少ないな、というのも判ってきた。旅派には、寄って切り取るマクロより、空や山を広く写せる超広角の方が有用だろう。次のバックパッカー的旅行は、D80とレンジの広い11倍ズームのVR18-200の組み合わせは鉄板として、これにこの前出たTAMRONの超広角、10-24mm/3.5-4.5あたりを加えるのが吉だろう。ただ、11倍みたいな高倍率ズームってのはどうしても画質が落ちるし、使ってて「魂を売った」「堕落した」感があるものである。重さ的には、10-24/3.5-4.5、35/2、VR55-200という3本の組み合わせも有り得て、こっちの方が、15-300mmというカバーレンジ全域での画質は高いだろう。しかし、僕は35mm換算50-85mmと220-300mmのレンジを多用するから、この2つのレンジを一本でカバーできる高倍率ズームの方が使い勝手がいいのは否定できない。
 こうやって、愚にも付かないオタク的なことを、あれやこれやと悩みだすのは、長い休みが取りやすい年末が見えてきたからである。

[SONY Cybershot W300 /35mm F2.8]

  • 機材どっちゃり。入れるのはTENBA GEN-3のスリングバック。