雲上の存在感

 時事ドットコムを見ていて、両陛下が中国・九州北部豪雨に対して見舞いの言葉を伝えられたことを知った。昨年6月の宮城の地震以来の見舞いの言葉だという。

○両陛下が山口、福岡知事にお見舞い /時事ドットコム

 僕がスポーツのライブ中継以外には殆どテレビを見ない人だからかもしれないが、ここんとこ皇室のニュースや絵を見た記憶が殆ど無い。なので、久々に動静を知った気がする。友人は比較的忙しい人が多いせいか、子供の頃からテレビっ子で未だ「ザ・テレビジョン」買ってます、という人以外は、余りテレビをだらだら見ている人は居ない。よって、多分僕と同じ様なメディア接触傾向なので、同じ様な感想を持つんだと思う。こういうタイプの人は、僕を含めて通勤時間に日経新聞と、あと仕事の合間にYahoo!ニュースとか主要ニュースサイトは見てたりする訳で、こういったメディアに余り皇室の動静が絵を伴って出てこないのだろう。
 主なネタが経済(と食べ物と写真と旅とゴルフ・・・)ということもあり、あんまりBlogでは政治的な話はこれまでしなかったが、僕は皇室の存在については肯定している。せっかくこれまで残ってきたのだし、日本の伝統文化の担い手であり守り手でもあるし、また功利的な観点では、外国に挨拶したり、今回の様に被災地を見舞ったり、豊穣を祈ったりするには、政治家は余りに現世の垢にまみれているので、一つレイヤの違う俗世的では無い存在が有った方が良いと思っている。今このタイミングで麻生首相が心から見舞いを行っても、誰もが票の為だと勘繰るだろう。票の為=国民の為であって、僕はそれでもいいじゃんと思うが、政治家が、一般的にはその行動を素直に受け止められない存在にならざるを得ない以上、余りそういう裏が無さそうな皇室の方が対象者の心に響くのでは無いだろうか。
 さて、こんなプロ・天皇制の人に対しても、今の皇室の活動内容はメディアを通してリーチしていないのである。世知辛く、色んなリスクを意識せざるを得ない世の中になってきたから、宮内庁は余り皇室を露出させない方向なのかもしれない。それはそれで一理ある。何となく貴重で神聖な感じを守るには、隠すことも有用な戦略だ。何年かに一度発生するご懐妊騒動に、病気に、バッシングにと英王室の習わしに脱亜入欧した訳ではあるまいが、余りポジティブなメディア露出が無かったから、隠したくなる気持ちも判る。
 ただ、日本国民の税金を使っている以上、隠されて皇室の活動はよく判らないけど、それなりに費用使ってます、だと通りにくい時代になりつつあるし、王制とか皇室制度というのは、世界一般には普及する方向に行ってないから、存在意義は常に国民に対して証明し続けないと、将来の制度存続は担保されないだろう。その意味で、上に書いた様な功利的な見地からは、きっちりバリューを出して貰わないと困るし、出したバリューはうまくPRしないと勿体無い。皇室の存在の重要性は、このPRあって初めて理解されるものだ。こんなことは僕が改めて言うまでも無いことだから、宮内庁もずっとうまくメディアを使っていて、僕が、テレビを見ていた時代に、ボランティアと神道と学術の親玉みたいな皇室の今の活動を理解できていたのは、宮内庁がそこんとこをよく判っていたからと思われる。
 それが、ネットの時代になって、いまいちネットメディアで姿を見なくなったのは、もしかしたら、宮内庁はこれまで同様のPRを既存メディアには行っているものの、コントロールが効かないとか何らかの理由で、ネットメディアには余り皇室の写真を出していないのかもしれない。また、ネットにも情報出しているけど、各ニュースサイトでトップニュースを選ぶセレクターの人が、余り皇室のニュースを選ばないという可能性もある。それは単なるセレクターの人の興味の有無なのか、或いはページビューとか瞬間視聴率とかで、ニュースによる人気度が判ってしまう現代において、実際に皇室関連ニュースのページビューは少なくて、トップニュースに物理的に入れないのかは判らないが、ふと思い返せば、皇室関連のニュースが見慣れたYahoo!トップページの真ん中に並んだ記憶は余りない。
 これは、どちらも有り得る話だが、僕は写真を出していないというより、ネットメディアでの皇室の扱いが小さいという後者の可能性が高いと思う。また、よりコントローラビリティが小さく、本質的な課題は、もちろん後者の方だ。
 新聞やテレビは一定の枠があるから、意外にロングテールで、ちっこくても皇室動静みたいなのが掲載されていた。また、読者は一応隅から隅まで読むのが新聞というメディアである。しかし、ネットメディアはブログとかまで含めれば超ロングテールだけれども、新聞の1面と2面の読まれ方の違い以上に、ネットニュースの世界では、Yahoo!や各ニュースサイトのトップニュースに載る一日10-15本位のニュースに入るか入らないかのページビュー上の違いが大きいと思われる。言うなれば、ニュース間の読まれ方格差が拡大しているのである。僕は前述の記事を時事ドットコムで見たが、新聞を読むように時事ドットコムの最新ニュースの全てを読んだりはしない。皇室ニュースが、僕の目に余り触れないということは、その10-15本の中に普段の皇室動静は入って来れていないし、それは本質的に今の皇室記事ではページビューが取れていないことに起因しているのだと思う。
 これを言い換えるならば、トップニュースに入って来れないということは、それだけネットメディアに接している国民は、皇室に興味が低いということである。また、トップニュースに入れないので、ネットメディアにおける読まれ方格差の問題で、ますます国民の目に触れにくくなってしまっている。皇室は意図的に隠れたのでなく、国民の視野から外れつつあるのである。これは皇室の未来にとっては、余りよろしくない話だと思う。
 いずれにしても、宮内庁はもう少しネットメディアへの対応を考えないと、日経とネットメディア主体のメディア接触しかない「テレビを見ない割と忙しい勤労男女」にはリーチ出来ない状況が続くだろう。宮内庁的には、もう少し時間があってテレビを見れ、かつ皇室のより積極的な支持層の様にも思われるシニア層にリーチ出来ていれば良い、ということなのかもしれないが、いずれ我々の世代も年を食う訳で、将来を考えれば各世代に満遍なくリーチできるに越したことは無いだろう。
 ・・・とは言ってもどうせ本音が書けない正月コメントみたいな雅子ブログ、みたいなのはちょっと違うと思うけれども。あ、でも高円宮承子ブログは、Daigoのブログと同程度には読んでみたい。彼女は、ひげの殿下こと三笠宮殿下に替わる、皇室内トリックスターの座を現代風にアレンジして継承しつつあると僕は解釈しているし、色んなこと言う人は居るだろうが、そういうタイプは古今を問わず王家には常に必要だと思う。僕が宮内庁の立場で無責任にもプロデュースを考えるなら、小悪魔agehaあたりに、ロンドンのファッション事情と、血筋ゆえの葛藤、みたいな判りやすい心の闇の双方を、セルフポートレートを交えて書くコラムでも作れば、相当若い女性から支持されるのでは無いだろうか。