クロスの回転軸 日本 2-1 フランス

ボールの回転

 見てるのが苦しい試合だった。ちょっと興奮していて寝付けないので、少し寝る前のクールダウンとして備忘録的に感想をば。勝負を分けたのは概ね相手のミスの多さだったが、もう一つ結果論としてだけど、最終ラインの位置取りは影響したと思う。日本に入った二点は共にフリーキックから生まれたが、両方とも相手ゴールから見て右側から、宮間の右足で蹴られたボールだった。右足で蹴ってるから、当然ボールには左に曲がってゴールから逃げる方向へ回転が掛かる。後半、フランスは187cmのルナールを上げ、左右からクロスを配給してパワープレイに出て、体力的にチェックに行けず、ほぼフリーキック状態でクロスを浴びていたが、記憶の限りでは、全てタッチライン側の足から蹴られ、宮間のボールと同じくゴールから逃げる方向への回転となっていた。それで、なぜ日本に2点が入り、フランスにはクロスからは点が入らなかったのか。
 第一には、もちろんボールの速さの差はあって、日本の方が配球ポイントが遠かった分だけ、強く速いボールを宮間が蹴ってたから、それが相手GKのミスを生んだり、いい具合に強いヘッドに繋がったりしたのはある。あともう一つのポイントとしては、フランスの最終ラインは一点取られてからは浅めだったので、阪口は前に走りながらのヘッドになり、かつフランスのGKも前にスペースが有ったから、やや前に出てきていて、上が空いていた。このGKの上を、そこそこ速いヘディングシュートが通過してゴールになったのだ。一方、日本が守勢になった後のラインは深く、フランスはそのラインに張り付いていた前線が、ゴールから逃げるクロスに対して、一旦ゴールから背走してからのヘッドとなっていた。そんなに速くないクロスに対して、女子が背走しながらヘッドしても、大して強いヘディングシュートは打てない。だから、殆どこのルナールを目がけたクロスは脅威にならず、福元は余裕を持ってキャッチ出来ていた。日本の深いラインは、セカンドボールを拾ってポゼッションする役に立たなかったが、ヘディングの威力を減殺するには十分だった。ある意味、フランスはルナールの活用が十分に出来なかったと言える。もっと速いクロスをゴール近くに打っていたら、全く違った結果になっていたかもしれない。

意図的なグダグダ

 しかし、振り返ってみると、終わりから30分と始まりから30分は全く別物なゲームであった。日本の幸運なゴールが生まれてから、両チームとも全開になったが、それまでは深い最終ラインでボールを回し、DFと守備的MFとの距離が離れてサポートが無いから、たまに縦ポン打って通らない、というのをお互い繰り返すグダグダな展開。少し経つと日本はそこを修正してラインを上げてきたので、プレイヤー間の距離が縮まり、ボールは回る様になったが、なかなかFWにはボールが行かず、シュートは流れの中から殆ど打てなかった。どうやら男子サッカーの英韓戦もそうだった様だが、セーフティに行くと、実力と関係なしに、そういうグダグダに陥るのがサッカーというスポーツである。ただ、ノックアウトラウンドの試合の序盤からリスク取って全開で行く必要はあんまり無いので、見てる方はつまらないけど、プレーとしては、そんなもんでも大きな問題は無い。ボールを失わなかったら、快速ウィングにぶっち切られる事は無いし、相手をファウルで止めざるを得ない程スペースに加速したランをさせなければ、187cmの怪物が前線に出てきたりする事も無いからである。今回はたまたま相手のミスで幸運な得点が入った結果、フランスのスイッチが入って、ラインを上げて前線からプレスが掛かり、そのままスタンディングでの殴り合いに一気に変化したが、それが無かったら、0-0のままPK戦てのも十分有り得た展開であった。中二日の決勝も、両チーム疲れの局地だろうから、なかなか序盤から全開の展開にはならなそうだが、今回の失点後のフランスの様に、どこでギアを入れ、コンパクトにしてボールと人を動かしだすか、或いはそれをせずに、PK戦突入覚悟でセーフティに行くか、そこは監督の采配に要注目である。
 最後に与太話になるが、フランスの14番は前評判通りのイイ女っぷりで、かつ抜群に上手かった。後半23分、マルセイユルーレットみたいに一回転して澤・宮間・近賀の三人をかわし、アウトサイドでGKから逃げるシュートを打ったのはなかなか痺れる光景だった。どうやらフランスでは女性版ジダンと呼ばれている様だ。実に惜しい。これでジダンの様に少し髪が薄かったら、きっと日本で女性用かつらのフォンテーヌあたりからCMのオファー殺到とあいなるであろう。