ダラダラとした沖縄の夜。

沖縄の雰囲気は、とてつもなくダラダラしたもので、僕はそれに目一杯影響されてしまった。基本的にダラダラした空間は大好きなので、沖縄の人と空気のダラダラさ加減が徐々に感染してきたのである。沖縄の人は、問い合わせをして判らなかった時とか、注文したものが品切れだった時に、実にいい「困ったような」笑顔を浮かべる。これを見ると、「まいっか」とつい思ってしまう。

wind electricity
[NIKON D50/SIGMA DC 18-200mm F3.5-6.3]

  • やんばるの東海岸で見た巨大なウィンドミル。抜けるような青空に聳え立つ。巨大建築好きにはたまらない。人家なき荒涼とした大地に立地していたが、近づくと袂に米兵と日本人女性のカップルが居た。

まいっかと思い続けて2,3日経った時には、すっかり僕の時間の過ごし方がゆっくりになっていた。予定も決めず。宿も気が向かないと取らず。貴重な休日なのに、何するでも無く寝ていたり。

Fern
[NIKON D50/SIGMA MACRO 50mm F2.8 EX DG]

  • マクロ嫌いな僕だが、念の為こういう写真も撮れるぞという事で、トライしてみた。旅行前に南国の花とかシーサーとか、そういう静物を撮ろうと思って、一番軽いマクロレンズを買った。SIGMAの50mm、320gである。これを見る限り、なかなかボケも綺麗で良さそうだ。

海外旅行に出て、日常から旅に自分の中のギアが切り替わるのは大体5-7日目位からである。旅というギアは、日常が旅である事を認識した時から始まる。旅が非日常の時は、この貴重な機会・時間を無駄にすまいと、とにかく短い時間で多くのものを見ようと仕事の様に根を詰めて、計画を立て、正確に実行しようとする。南のリゾートに行っても、とにかく休まなきゃと思って、デッキチェアで本を読むとか、慣れない事を始めたりするのだが、どうにも逆に気が休まらない。一方、旅が日常になると、旅自体がありふれて来る為、過ごし方が自然体になる。進みたい時にはどんどん進み、気が乗らない時はダラダラとする。僕は、ギアが旅に入った時からが本物のリラクゼーションだと思っている。沖縄では、このギアに入るのがとても早くて、2日目の夜位からすっかり旅が日常になっていた。

The man in a market
[NIKON D50/SIGMA DC 18-200mm F3.5-6.3]

  • 牧志公設市場の商人。手馴れた様子で商品を包む。前にも沖縄に来ている筈なのだが、「島らっきょう」を初めて食べた。これはどこで食っても旨い。これに限らず沖縄料理は旨いものが多い。そーめんちゃんぷるーも同じく発見だった。

沖縄で旅を日常にするということは、即ちゆっくりダラダラすることである。初日はセミナープログラムが有り、2日目に会社の人達とゴルフに行き、3日目が土曜日で、ここから会社のプログラムを離れて、本番のお休みになるのだが、ダイビングを予約していたのをちょいと後悔したのもこの時分だ。ダイビングってのはその時の気分的にはどうにも大仰だったからである。ただ、キャンセルするのもまた大仰ということで、結局は参加したのだが。

Road to the bright
[NIKON D50/SIGMA MACRO 50mm F2.8 EX DG]

  • 比地大滝へトレッキングして、その途中にあった橋。遠景なのにマクロレンズで撮っているのは、トレッキング時にこれしか持って行かなかったからである。温帯の森と違い、熱帯の森は暗い。

ダイビングを終えると、僕はそそくさとマリオットを離れて、那覇牧志公設市場近くのドミ1,500円の宿に移った。エアコンも無ければ、個室ですら無い宿だが、ゆっくりと過ごすにはこういう所がいい。収容人数は10人弱という感じだ。この位の規模だとそこに泊まる人はお互いにコミュニケーションを取らざるを得ない。バンコクにある様な数十人規模のゲストハウスでは、日本人宿であっても結局そこに泊まる人はバラバラなのだが、10人を切ってくると、殆ど家族である。もう少し長逗留したら、もっと面白かったかも知れない。ただ、一泊では雰囲気のさわりが判っただけだが、宿泊客は僕よりだいぶ若い人が多かった。若いバックパッカーというのは、それぞれが割と難しく時間を過ごしているものだ。彼らとその難しい時間を共有するには、僕は少し年を取って、シンプルになり過ぎているかも知れない。

Hedo Cape
[NIKON D50/SIGMA DC 18-200mm F3.5-6.3]

  • 一つ位は海の写真を。これは辺戸岬。やんばるの北端、東シナ海と太平洋がぶつかり合う所だ。潮汐の関係か、海は穏やかだったが、潮目がはっきりと見えた。

こんなオープンな宿に泊まって、気分も開けっぴろげになっていたのか、バーに入れば右のグループ、左のお客さんと自然に話が盛り上がり、民謡を聞きに行けば、隣合った老婦人に一緒に行った会社の同僚が「私がもう少し若かったらねぇ」とナンパされる。なかなか面白い夜になった。僕はこれまで、一つ国を旅する毎に、挨拶と交渉が出来る言語が一つ増える様な旅行を繰り返してきたが、言葉が判る旅先というのも悪くない。

Classic shopping street
[NIKON D50/SIGMA DC 18-200mm F3.5-6.3]

  • 国際通りから南側の商店街。大型店も増えたが、ここはまだまだ現役だ。途中に、三線の製造販売の店が有り、その場で皮を張っていて驚いた。

Hitofudegaki
[NIKON D50/SIGMA DC 18-200mm F3.5-6.3]

  • 最後に海と空を。言うことの無い休日でした。