REITを買収してしまおう。

 2月12日付の日経公社債情報に米系の投資ファンドが一部のREITの株を大量保有している件が掲載されていた。この米系投資ファンド保有しているREITの中には、PBRが1倍を割っている銘柄もある。この所の不動産価格の上昇を考えれば、修正NAV(Net Asset Value)は簿価よりも高くなっている可能性は高いから、PBR的にはより魅力度が高くなっているだろう。
 ここで考えられるのは、REIT本体の買収である。REIT不動産投資信託という名前なので、株式投信と同じ様な抽象的な存在の様な感じがするが、実はREITは会社なのである。REITは、投信法に基づく投資法人なるものがその法人格で、機能としては余り株式会社と変わらない。違いは、当期利益の90%以上を分配に回すことで、この分配が損金として扱われ、REIT段階での法人税課税がほぼ無くなる事である。三菱地所REITも同様に不動産賃貸業であるが、三菱地所の投資家は、一旦三菱地所段階で法人税課税された上で配当を受け、投資家段階で再度課税されるが、REITの投資家はREIT段階では課税されず、投資家段階での課税のみとなり、純粋にインカムゲインを目的とした不動産投資と考えれば税効率が良い。一方議決権については、上場されている投資口は株式と同様に議決権を有する。従って、投資口の過半数を買えば、買収と同じ効果があるのだ。PBR1倍割れのREITであれば、この方法で買収してしまえば、アービトラージの効果が有り得る。
 ただ、REITには例外規定があり、決算期末で3人以下の株主が全体の50%超を握っている場合は、法人税課税免除の特典が得られない。従って、50%を超えて買い進むと普通の株式会社と同じ税効果になる。ゆえ、買収した後に物件を売り払って現金を配当するにしても、売却価格−簿価の差については税務上の益金となって、課税はされてしまうのだが、それでも簿価以上で物件が売却できれば買収者に確実にリターンは返ってくることになる。
 以上を前提にすると、こんな戦略が成り立つ。

  1. 修正PBRが1倍を割れているような割安REIT過半数を取得する
  2. 税効果が普通の企業になってしまうので、分配金が激減。株価が大暴落し、さらに割安に
  3. その割安価格で更に買い進んで平均取得コストを下げる
  4. 時価で不動産を売り払って、その一株あたり売却価格と取得コストの差額で大儲け

 こんな事が成り立つ前提は、REITは益利回り重視の商品ということである。純資産に比べて賃料を原資とする配当が少ないと、配当還元で計算される適正株価が一株あたり純資産を下回る可能性があり、この非効率が投資機会になるということだ。
 バイアウトファンドは不動産等のアセットアービトラージがコアバリューでは無いし、敵対的な買収は行わないのが旨のファンドも多いので、バイアウトファンドがREITを買うなんてことは起こりそうに無いが、ヘッジファンド等で有れば十分有り得そうな話である。なにせREITには、安定株主とか買収防衛策とか、そういう市場の効率性を歪めるややこしい代物は無いのである。